2013-01-01から1年間の記事一覧

20年ぶりに忽然と月下美人が咲いた

「地上のあらゆる静物が寝静まった深夜の冷気のうちに、突如として葉の末端から花茎を延ばし、刻々に予想を破り絡みつく蛇ような蕚(がく)から抜けだし、素白の大輪の花弁を喘ぎ喘ぎ開き、深山の霧の凛冽たる香を放ち、さて一瞬の停止を絶頂として倐忽(しゅ…

「ARS GRAPH GINZA臨時増刊銀座」(アルス、昭和27年)を眺める

1952年の銀座を福田勝治の写真で特集を組んだ「ARS GRAPH GINZA臨時増刊銀座」(アルス、昭和27年)を眺めていたら、巻末の「銀座風物詩」の挿絵を宮田重雄、木村荘八、鈴木信太郎が描いていた。この挿絵がそれぞれどれもしびれるほどいい! が、キャプショ…

徳田秋聲『心の勝利』ビジュアル版を創る

桑原 甲子雄「東京下町1930」や今和次郎『新版大東京案内』、松崎天民『銀座』、「銀座」(アルス・グラフ臨時増刊)、「昭和六年を読む」(「彷書月刊/特集」、などの資料を揃え、徳田秋聲『心の勝利』(砂子屋書房、昭和15年3月5日)を読むための資料を…

新聞小説「縮図」が検閲を受け中断した真の理由

徳田秋声「縮図」が、なぜ検閲を受け新聞連載小説を中断しなければならなかったのか。なりゆきは下記の通りであろう。 白山で置屋を営む元芸者の小林政子をモデルに、芸妓の世界を描いていたため、太平洋戦争直前の時局柄に芸者の行状を臆面もなく扱うとは好…

徳田秋声『縮図』初版と第3版で挿絵を入れ替え?

内田巖:画、徳田秋声『縮図』(小山書店、昭和21年)初版本を持ってはいたが、古書市に第三版が100円で並んでいたので、安さに釣られてつい購入してしまった。 長編小説『縮図』は、秋声最晩年の1941年(昭和16年)6月28日から9月15日まで、都新聞に連載さ…

雷雨の中、紀伊半島縦断旅行に

雷が鳴る豪雨の朝8時、紀伊半島縦断旅行に出発。伊勢神宮に着いた時は朝の豪雨が嘘のような快晴。伊勢神宮外宮・内宮、と、広い神宮内の砂利道や階段を歩きまわり、おかげ横丁の赤福で一休み。 二日日は、瀞峡、熊野速玉大社、2年前の豪雨で崩れてしまった工…

鑑賞用として栽培してもよいのではないかオクラ

黄色の大きな花は、宵待ち草のように優しい感じがして鑑賞用として栽培してもよいのではないかと思うのだが、その多くは食用として畑で栽培されるオクラ。 生あるいはさっと茹でて小口切りにし、醤油、鰹節、味噌などをつけて食べたり、納豆に混ぜてダブルね…

コブシ(辛夷)の語源はこの写真!

早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせるコブシ(辛夷)。細長い花びらが10数枚あって垂れ下がるさまが、神前に供える玉串の「四手(しで)」に似ているので「四手辛夷(しでこぶし)」ともいう。この花の開花時期から農作業のタイミングを判…

『さんせう太夫(山椒大夫)』は『安寿と厨子王丸』

山椒の「椒」の字は芳しいの意があり、山の薫り高い実であることから「山椒」の名が付けられたという。木の芽は緑が鮮やかで香りが良く、焼き物、煮物など料理の彩りとして添えられる。使う直前に手のひらに載せポンと軽く叩くと香りが増す。筍との相性は最…

小杉放庵記念日光美術館で「挿絵で綴る文学 木村荘八の挿絵」を講演

24日(土曜日)に、小杉放庵記念日光美術館で「挿絵で綴る文学 木村荘八の挿絵」を講演してきた。電車から降りてもさほど気温の変化がないのではないかと思えるほどに、涼しく空気が爽やかで、目には緑が一杯の日光は最高の避暑でもあった。 「たけくらべ絵…

芽が出てしまったジャガイモの自己防衛

「芋」というどんな芋を思い浮かべる? 私は初詣の時に境内で湯気を立てているジャガ・バタや、つぼ焼き、石焼き芋のサツマイモかなと、何れもすぐに思い浮かべるほどポピュラーな食材だ。 写真のように芽が出てしまったジャガイモ(馬鈴薯、英名:potato)…

真空ホロウのメジャー・セカンド・ミニ・アルバム「少年A」

006年結成、2012年にメジャー・デビューを果たした茨城県出身の3ピース・バンド、真空ホロウのメジャー・セカンド・ミニ・アルバム「少年A」。異彩を放ちながら進化と変化に挑むヴォーカル松本明人が、圧倒的な歌唱力で這いつくばるロックの王道を行く。瞳孔…

ハート型のツゲの枝

3ヶ月ほど前、このフェンスの前を通った時に、はみ出して生えていたツゲの枝先を指でつまんでハート型にならないかな、との希望をこめておおまかな形を作っておいた。久しぶりに訪れたら、誰かが手入してくれたのかきれいに剪定されてハート型が完成してい…

「桔梗は山にいくらでも自生している。それをなぜ漢語でいうのか」

万葉集巻十に「朝顔は 朝露負(お)ひて咲くといへど 夕影にこそ 咲きまさりけれ」とあり、現在の朝顔のことではなく、夕に咲くということから、古くはキキョウを「あさがほ」と呼んでいたことがわかる。開花前には花びらが互いのふちでくっついたまま膨れて…

黒百合は恋の花〜♪の黒百合はユリではない?

ユリの花にはヤマユリ、オニユリ、ヒメユリ、テッポウユリ、と種類が多く、「黒百合は恋の花〜♪」と歌に歌われるほど身近な花だ(クロユリはユリに似た黒い花を咲かせるがユリ科の植物ではあるが属が異なる山野草らしい)。 美女の形容として「立てば芍薬、…

あの世界遺産・富士山の雅称は「芙蓉峰」

冬に地上部は枯れ、春に新たな芽を生やし、夏には背丈より大きくなり、ピンクの大きな花を枝一杯に咲かせ夏の庭のマドンナになる。そんな勢いと華のある芙蓉に幼心ながらあこがれた。 写真はアメリカフヨウ(草芙蓉(くさふよう))。米国アラバマ州の原産で…

お月見に欠かせない吾木香は秋の七草ではない?

暑い日が続いているが、散歩の途中で、桔梗、萩、オミナエシなどを見つけ、秋が近づいているのを実感している。 ところで、秋の十五夜のお月見では、薄(すすき)とともに欠かせない吾木香(ワレモコウ)だが、なぜか秋の七草ではないらしいってこと知ってた…

芭蕉は深川の自宅の庭のバショウから名前を芭蕉とした

紀行文『おくのほそ道』で知られる江戸時代前期の俳諧師・松尾芭蕉は、深川の自宅の庭にあったバショウから自分の名前を芭蕉としたらしいから、バショウは外来種といえども大分昔から、東京辺りでも栽培されていたようだ。 写真は散歩中に見つけたバショウだ…

武者小路実篤の装画がほのぼのと暖かい『馬鹿一』

かつて小川があったところにフタをした暗渠が、西東京市には自然遊歩道となって、至る所にある。これが私の散歩道になっている。そんな散歩道に桃がたくさん落ちていた。見上げると写真のような美味しそうな桃がたわわに実っていた。失敬しても誰にもとがめ…

近所の公園の柵の中に、鴨が卵を

近所の小さな公園の柵の中に、鴨が卵を温めているのを見つけた。望遠レンズで撮影したのだがこちらを警戒しているようなのでこれ以上は近づけない。誰かが保護しているようにも見えないのだが、なんとか無事にヒナがかえってほしい!

杏仁豆腐が杏の種子だとは知らなかった

小学生のころに、裏山に生えている杏(あんず)の木を見つけ、誰にも内緒でたわわに実った杏を独り占めして密かに食べていたことがあった。が、杏は他の果樹に比べ、日もちが悪いことや糖度が低く酸味が強いなど商品にはなりにくく、最近はは祭の時の杏飴や…

繊細な花ビラの紫色が典雅な平福百穂:画『歌集 紫草』

住宅地の生け垣などでよく見かける、繊細な感じの花ビラの紫色がひときわ典雅で印象的な花、クレマチスは、中国原産の「テッセン」、日本原産の「カザグルマ」などと、西洋種が交配された園芸種の総称だ。「鉄線」は細いが針金のような強いつるから、その名…

実のないはずのヤマブキの実を見つけた

「七重八重 花は咲けども山吹の 実の(蓑)一つだに無きぞ悲しき」(兼明親王)は、太田道灌が、農家で蓑を借りようとしたが、少女が出てきて、だまって山吹の花を差し出された。が、道灌には意味が分からなかった。後で家臣から有名な昔の歌を引いていること…

芥川龍之介の短編集『沙羅の花』も凋落し易いものかも?

芥川龍之介の短編集『沙羅(しゃら)の花』 (改造社、大正11年8月、装幀:小穴隆一)の「自序」に「……沙羅の花は和漢三才圖繪に拠れば、白軍辧状似山茶花而易凋といふ事である。是等の作品も沙羅の花のやうに凋落し易いものかもしれぬ。かたがたふと思ひつ…

高橋忠弥:画、「文藝首都」左の花はヤブミョウガ?

ヤブミョウガはミョウガに混じって生えていたり、葉の感じが似ているので、最近まで同一植物かと思っていたが、全く別のものだったようだ。花を見れば咲く部分や形・色が全く異なるので別種であることに異論を挟む余地はないのだが、ヤブミョウガはツユクサ…

ジュズダマとハトムギはよく似ているが別物?

ジュズダマと、ハトムギ茶やシリアル食品のハトムギは同じだと思っていたが、ジュズダマは殻が硬くて食用にはならず、よく似ているがハトムギはジュズダマの栽培種で別物なのだそうだ。 そういわれれば、近所には女の子が多かったので、夏休みの終わり頃にな…

高橋忠弥:画『加納大尉夫人』装画は夫人がおしろい花で化粧

幼いころに、種を潰して出て来た白い粉を鼻の頭に塗って遊んだオシロイバナ。皮が固くなる前のタネを採り、指でつぶすと出てくる中身(胚乳)が、真っ白な粉状でおしろいようなのでオシロイバナの名前がある。名づけ親は江戸時代の博物学者・貝原益軒。 花は夕…

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』には烏瓜という言葉が何度も登場する

カラスウリの赤い実はよく知られているが、花は意外と知らないひとが多いのではないだろうか。暗くなってから開き朝にはしぼんでしまう一日花だから。そういう私も満開の状態は見た記憶がない。 それでは、と、近所にカラスウリを見つけ撮影を試みた。太陽が…

松山文雄:画、壷井栄『暦』は内容にマッチした見ごとな挿画

公園の鉄棒脇に生えていて鉄棒が使用ができなくなるなど、最近よく見かける私の身長ほどもある背の高いアザミ。茎頂にテマリ形の紅紫色や紅色、ピンク色や白色などの愛らしい頭花を咲かせているが、鋭く長い針は攻撃的で威嚇しているエイリアンか獣のように…

グレープが歌う「ほおずき」は。ほろ苦く甘酸っぱいホオズキの味

赤い実をよく揉んで、ゆっくりと中身を引き出しくり抜き、皮だけにした小さな丸い風船のようなものを、口に含んでブイー、ブイーと鳴らして遊んだなつかしい鬼灯(ほおずき)。ほろ苦く甘酸っぱい中身は食べてしまった。この果実を鳴らして遊ぶ子どもたちの…