『さんせう太夫(山椒大夫)』は『安寿と厨子王丸』

山椒の「椒」の字は芳しいの意があり、山の薫り高い実であることから「山椒」の名が付けられたという。木の芽は緑が鮮やかで香りが良く、焼き物、煮物など料理の彩りとして添えられる。使う直前に手のひらに載せポンと軽く叩くと香りが増す。筍との相性は最高だ。また、木の芽を味噌と和えた「木の芽味噌」は木の芽田楽などで食べると絶品。わが家ではおもに粕漬けなどの漬物に入れる。


 写真は日光の「鈴屋」というそば屋の駐車場にあった高さ3m程の大きな山椒の木。どの枝にも実がびっしりと鈴なりだった。このような状態から「ふさはじかみ(房椒)」ともよばれた。「ふさ」は房状に実がなること、「はじ」は実がはじけること、「かみ」はニラ(韮)の古名「かみら」の意で辛いことを示す。



 須藤 重『安寿と厨子王丸』(講談社、2002年)。日本の伝承、説教節『さんせう太夫(山椒太夫)』を基に森鴎外大正4年(1915年)に小説化したので次第に童話や児童文学としての読み物になり、1961年にはアニメーション映画としての『安寿と厨子王丸』が公開され、日本童話絵本などでも知られるようになった。