2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

10歳の桃太郎がいる一方で、遊女と遊ぶ桃太郎がいる。

北尾政美・画『桃太郎一代記』天明元年板 鬼を征伐して、ついでに遊女屋に立ち寄ると、角をはやした女ばかりだった。 この桃太郎は、婆が川で拾った桃をたべると二十歳ぐらい若返って妊(みごも)る、ということになっていて、全体に大人っぽい話になってい…

幼くなっていく桃太郎に気を取られ過ぎたが、今回のテーマは、桃太郎は何歳の時に鬼退治をしたのかだった。

楠山正雄『桃太郎(『日本童話宝玉集』下、冨山房、大正11年)には、 「桃太郎は十五になりました。もうそのじぶんには、日本の国ぢゅうで、桃太郎ほどつよいものはないやうになりました。桃太郎はどこかひろい外国へ出かけて、腕いつぱい、力だめしをして見…

桃太郎が、明治以来100年かけて徐々に若返っているのは、回春型の桃太郎に出てくる桃を桃太郎自身が食べてしまったのではないかと思われるほどの若返りぶりだ。

大野豊:絵、卯月泰子・文「ももたろう」(『名作アニメ絵本シリーズ20』長岡書店、1992年) この本の最終ページには「『ももたろう』は日本昔話の一つです。ももたろうのもとの話は、どろぼうのうわまえをはねる内容で、戦争中、日本は、植民地を持つ西欧列…

戦後の桃太郎本を見ると、読者ターゲットの低年齢化に伴い、前回アップした明治大正期の桃太郎に比べて、かなり幼い感じになっているのが分る。

本来、全国共通の基本形がないはずの民話なのだが、服装や髪形がどれも良く似ているのが気になる。明治〜昭和戦前まで、教科書に掲載されていた頃の官製キャラクターの影響を受けているのだろうか。 文部省編『ヨミカタ』(国民学校)一(東京書籍、昭和16年…

桃太郎は一体何歳の時に鬼退治に行ったのだろうか。挿絵からは年齢を判断するのは難しい。さりとて、文章中に年齢が書いてなければ分らないが、絵を並べてみると、画家がどんな年齢の桃太郎を想定していたかをおぼろげながら推察することが出来る。

『伽噺桃太郎』(絵:菱川師宣、明治期) "MOMOTARO of Little Peaching"(ダヴィッド・タムソン訳:ちりめん本、明治18年) 「桃太郎」(巖谷小波『日本昔話』、明治27年) 『昔話桃太郎『(東京女子師範学校編、明治29年) 『モモタロー』(金港堂、明治36…

桃太郎は本当に桃から生まれたのか? 桃太郎の誕生シーンを並べてみよう。

『桃太郎一代記』(絵:北尾政美、天明元年)では、右のページが桃を食べているおじいさんとおばあさんが描かれている。左のページでは若返った自分を手鏡で見て喜んでいるところが描かれている。これが回春型と云われている桃太郎だ。若返った老夫婦が、桃…

『本の手帳』6号「本好きが語る本の蘊蓄詰め合わせ」が3月3日に発売されます。竹中英太郎(8ページ分)、佐野繁次郎(14ページ分)、小津安二郎(10ページ分)の話などこだわりの話が満載。A5版64ページ、定価1050円(税込み)、本日やっと印刷所に入稿しました。12月1日発行予定でしたので、じつに3ヶ月遅れての発行です。申し訳ありません。

巻頭は拙文「佐野繁次郎の装丁本と、横光利一『機械』『時計』の装丁」14ページです。 『本の手帳』6号表紙 『本の手帳』6号目次 他紙では見られない、全員10ページ前後書いているので、どの原稿も読み切り特集のようなものです。 私のページを6Pほどアップ…

川へ洗濯に行ったおばあさんが「どんぶり かっしり つっこんご」(松谷みよ子)と流れてきた桃を拾う。「たべてみたら、とてもうまかったもので、こりゃあ、おじいさんにもあげようおもうて、もう一つながれてこう じいさんにあげよ ……というたところが、おおきなももがまた、どんぶり かっしり つっこんご……とながれてきたそうな。」(松谷みよ子『日本昔話 1』(講談社、昭和42年)とある。つまり、都合2個拾ったことになる。

これは、以外でした。おばあさんは拾ったその場で一つ食べてしまったんですね。右下のほうで、確かに食べている。おいしそうな桃を拾ったら普通ならその場で食べてしまいますよね。「○○昔話」「○○民話」などでは、ももが2つ流れてくるほうがポピュラーなよう…

もう1冊、箕田源二郎/絵、代田昇/文『ももたろう』(講談社、1998年32刷)も、ぐうたらな桃太郎だった。

ちょっと、この桃太郎像はぐうたら風ではなく、今後の展開が読めてしまいそうな、どこか知的で、おまけに気が優しくて力持ちな感じがうかがわれてしまうのが、惜しい気がする。 箕田源二郎/絵、代田昇/文『ももたろう』(講談社、1998年32刷) 民話として…

桃太郎といえば、頭が良くて力持ちで、優しい青年(少年)の立身出世の話がよく知られているが、絵/福田庄助、文/水谷章三「ももたろう」(『日本の民話12中国地方2』、世界文化社)は、そんな期待を裏切った? 怠け者の桃太郎が描かれている。ナマケモノの感じがよくでているいい絵ですね。いや、むしろこちらのほうが正統派の伝承なのではないかと思われる。私が知っている、親たちがあるいは国家が理想するような青年の桃太郎は、教科書などからの知識で、それぞれの時代によってゆがめられてしまった桃太郎話なのかもしれない。

絵/福田庄助、文/水谷章三「ももたろう」(『日本の民話12中国地方2』、世界文化社) 「○○太郎」と名がつく話は、私が知っているだけでも両手にあまるほどある。「浦島太郎」「金太郎」「三年寝太郎」「力太郎」「八幡太郎」「物草太郎」「竜の子太郎」「…

『月刊絵本 特集・桃太郎絵本』(すばる書房盛光社、昭和49年)は、まさに私が追い求めようとしているテーマの特集を組んでくれていた。

『月刊絵本 特集・桃太郎絵本』(すばる書房盛光社、昭和49年)。 表紙絵は「英文日本昔話・桃太郎」(弘文社、明治18年)表紙より 目次を見ると 小池藤五郎「桃太郎の変化」 アン・へリング「どんぶらこ挿絵史」 鳥越信/小松崎進「対談・桃太郎絵本の移り…

朝、出社途中に、図書館によって滑川道夫『桃太郎像の変容』(東京書籍、昭和56年)を借りてきた。購入しようと思ったが、結構高価なので、とりあえず図書館の本を読んでみて、どうしても欲しいと思ったら改めて購入しようかと、ちょっと節約をしてみた。

通勤電車の中で30頁ほど読んでみたが、これがかなり面白く、所謂研究書によくありがちな、専門用語の羅列で文章がこなれていなく読みにくい本と違って、滑川道夫氏はさすが教育者だけあって文章も達者だ。巻頭には沢山のカラー写真が掲載されており、巻末に…

関野準一郎装丁、井上靖『腠の木』(集英社、昭和46年)が本棚から出て来た。幾何学的な面白い構成で、配色も美しく気に入ったので、購入しておいたものだ。これがケヤキの木に見えるかどうかは別として、抽象的な形態で自然のイメージを作るのはかなり大変な創作だと思う。

関野の装丁本がまとまってどこかにあるわけではないので、見つけたらそのつど掲載して、いつか、関野準一郎の装丁の話をまとめてみようと思う。 関野準一郎装丁、井上靖『腠の木』(集英社、昭和46年)、右が函の表面

私のオブジェも掲載しようっと。タイトルは「蛙の行列」。

蛙が後脚で立ち上がると、目が後ろ向きになってしまい、前方が見えなくなるところから、向こう見ずの人々の集まり、と云う意味があるらしい。擬人化された蛙のイラストは古く、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて、鳥羽僧正覚猷〔とばそうじょうかくゆう…

関野準一郎:画、瀬田貞二:再話『うしかたとやまうば』(福音館書店、1972年)が届いた。

関野準一郎:画、瀬田貞二:再話『うしかたとやまうば』(福音館書店、1972年)表紙 関野準一郎:画、瀬田貞二:再話『うしかたとやまうば』(福音館書店、1972年) 原画を見ないと断言は出来ないが、木版画に手彩色を施したように見える。 話は、牛方の少年…