2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大木惇夫『神々のあけぼの』(時代社、昭和19年4月)

この本が出た昭和19年はどんな戦況だったのだろうか。18年、日本はマリアナ沖海戦で空母3隻と艦載機400機を喪失し、太平洋における制空権を完全に失い、昭和19年3月には、学徒勤労動員の通年実施を閣議決定。さらに19年7月には「難攻不落の要塞」と言…

こんな恩地もいい

私が抱いている恩地の作品のイメージからはやや遠い感じがする表紙だが、有機的な曲線とフリーハンドな感じがどこか癒される柔らかな印象の装画だ。

表紙の方が豪華

最近の装丁はその殆どが、カバー(ジャケット)には力を入れるが、表紙は殆どデザインされていない場合が多い。そんな最近の暗黙のルールからすると、吉田一穂『北原白秋詩集』(鎌倉書房、昭和22年3月再版)は、全く逆だ。 写真左のジャケットは赤と青の2色…

銅版画サークル(定員10名)実習会開催。入会金500円、月会費500円 

●4月16日(日)9:00〜13:00 ●4月29日(土)9:00〜13:00 ●於:西東京市住吉町住吉公民館(西武池袋線-ひばりケ丘駅下車徒歩10分) ●申込みはメールで下記へお知らせください。 md9s-oonk@asahi-net.or.jp 初心者歓迎。銅版画はプレス機さえあれば、誰でも…

蔵書票楽会を立ち上げました。新作蔵書票を連日発表。ぜひご覧下さい。

http://blogs.yahoo.co.jp/higetotyonmage/1491132.html

恩地の戦後の装丁作品

恩地の戦後の作品は、戦前に比べるとどこか気の抜けたような装丁が多いが、そんな中、この装丁はかなりの力作の方である。終戦の年、恩地の年齢は53才だから、この本を装丁したときは、60才だ。年齢のせいだけではなく、敗戦後の物理的環境の悪化や次男の戦…

振替口座のないネット古書店に意見する

架蔵書は、かなり日焼けしており、しみもついていてあまりいい保存状態とはいえないが、これでも2330円も払った。書店名は公表しないが、ネットの古本屋は普通預金口座ではなく振替口座くらい開設しろ、といいたい。宅配便を使うならメール便を契約しろ、と…

一幅の版画作品である 

バックの濃い色のところにもうっすらと模様が入っている。このうすい模様と真ん中の白、青、黄土の色が作り出すコントラストが、強烈なインパクトを生み出している。私としては、強い部分が真ん中に集中してムーブマンに欠けるように思え、ちょっと気に入ら…

さすがは版画家・恩地孝四郎

野田宇太郎『新東京文学散歩』(日本読売新聞、昭和26年)は、木版画家ならではの発想が活かされたうまい装丁だ。真ん中に三菱が丸く太ったような図案を彫り、この一つの版を黄土色で刷り、そのあとに版を180度回転させ、今度は色を変えて青で刷り重ねてある…

どう記載する?

この全70巻を神奈川近代文学館のデーターのように1冊1冊入力したら、恩地孝四郎装丁作品リストはいっきに70冊も増える事になるが、そうすべきがどうか悩んでいる。『日本児童文庫 全70巻』(ARS、昭和3年11月)と1行にしてしまってもでいいのではないかと思…

題字がきれいだ! 

この本の創作文字は、恩地の書く図案文字の中ではかなり柔らかくしかも時代感覚にあふれていていい。大正末期から昭和初期にかけては図案文字が盛んに行われた時期で、図案文字集や創作文字集の類いが短期間のうちに沢山出版され、正に恩地が一番たくさん装…

1冊1円のはずだが…… 

円本全集というのは本来は1冊1円で販売されたから円本なのだが、この本は2冊セットで1円だから厳密にいえば1冊50銭であり円本全集ではないのでは? 『日本児童文庫』(アルス)と『小学生全集』(興文社・文藝春秋社)は、猛烈な宣伝・販売合戦を繰り広げ…

あと1冊で全70巻が揃う 

『日本児童文庫』全70巻の内の68冊を持っているが、今回のこの2冊セットの中の1冊である『日本児童文庫 第29巻グリム童話集』は残りの2冊のうちの1冊だったので、速、購入した。残りは19巻1冊だけだ。

円本全集『日本児童文庫 グリム童話集』(ARS、昭和3年11月)、『日本児童文庫 文明の利器』(ARS、昭和3年11月)

こんな綺麗な本が、しかも2巻ともに函に入ったままで300円で売っていた。高円寺の中央線古書市の入り口の安売り本の中で見つけた。函に入っていない場合でも1冊500円くらいで売られている事が多く、夢二が関わっていたりすると1500円になったりすることもあ…

扉も版画家・恩地孝四郎の面目躍如

木目を刷り出すのは、創作版画といわれるこの時代の版画家が得意とした手法である。そんな木目を利用した扉も見事な木版画である。裏面にバレンの跡があるので、手摺り木版画かと思われる。題字は、『江戸城総攻め』と同じように篆書体を用いている。私にと…

星座がここにも

前回にも説明したように恩地の装丁には、星座をモチーフにしたデザインが多く見られる。写真の吉田絃二郎『旅人』(改造社、昭和2年6月初版)もそんな星座をモチーフにした木版画の装丁だ。 * 額縁様式も得意の表現 写真左は表紙。中央の焦げ茶色の部分には…

journeycakeさんからのコメントで入手したデーター

神奈川近代文学館の蔵書データーと「恩地孝四郎装幀目録」との比較は終ったが、その後一向に進んでいない。神奈川近代文学館のデーターを加えると、一気にかなり充実した装丁リストが出来そうである。

やっと手に入れた真山青果『江戸城総攻め』(春秋社、大正15年7月3版)

昨年5月に、東京古書会館で「1920-30年代の装丁」展をやったときに、この本を何とか手に入れようと探していたが、とうとう手に入れることが出来ず、展示が出来なかった本だ。恩地が盛んに木版画を表紙に使い始めたころの作品で、機会刷りだが3色刷りオリジナ…

色箔押しの3色刷りは贅沢な本だ 

背と表紙は、青の布地に赤、黄、白の三色色箔押しで、かなり豪華な作りになっている。箔押しは面積が大きいと版が大きくなるので、版代が高くなる。この本のようにほぼ全面箔押しで、おまけに3色使っているのは今ではなかなかやらせてもらえない、「豪華」な…

花森安治・ジャケットデザイン、伊藤整『十二章女性に関する』(中央公論社、昭和29年3月再版)

を確認してみたら、やはりこの時期の中央公論社の新書の表紙は全て統一デザインで、恩地孝四郎がデザインを担当していた。

恩地の装丁であって欲しい……

古書市で手に取ったときに、北垣恭次郎『大国史美談』巻七(実業之日本社、昭和18年11月初版5000部)は、恩地の装丁であって欲しい、と念じながら恩地の名前を探した。函もジャケット(カバー)もない裸本だが、確かなデザイン力を感じたからだ。

3つ目のブログ「蔵書票楽会」を立ち上げました。

まだ工事中ですが、お気に入りに加えておいてください。 http://blogs.yahoo.co.jp/higetotyonmage

今日は、そのいずれにも記録されていない本

柳原敏雄『料理歳時記』(中央公論社、昭和30年6月3版)を紹介します。恩地が逝去したのは、昭和30年6月ですので、最晩年の仕事のようです。ジャケットのイラストは著者自身が描いたようですが、表紙のデザインを恩地が担当しています。この時期の中央公論社…

さっそくプリントアウトしました

詳細については帰宅してから調べてみようと思います。資料は584件ありますが、全集を1冊ごと掲載しているので沢山あるように思えますが、例えば「日本児童文庫」全○○巻として、1点として扱うと、タイトル数は半分くらいになってしまうのではないかと思われま…

journeycakeさんコメントありがとう

架蔵書の調査もしていない状態ですので、神奈川近代文学館のopacまでは、とても手が回っておりませんでした。さっそく、神奈川近代文学館で検索してみました。記録されている書物の数は少ないが、最初の30冊(大正4年から昭和2年)を「恩地孝四郎装幀書目」…

やっと完成しました

「恩地孝四郎装幀目録」のデーター化が、やっと終った。ワープロがあまり得意でない私にとって、800冊近い書肆データーを打ち込むのは並大抵のことではなかった。これで、やっと架蔵書のデーター入力に移ることが出来るようになった。果たして、新たに何冊加…

写植機の苦難

写植機は1924年に石井茂吉と森沢信夫によって発明され、世界で初めて日本で実用化された。1929年には写植機の実用機が共同印刷、凸版印刷、日進印刷、秀英舎(現在の大日 本印刷)、精版印刷などに納入された。しかしこの画期的な写植組版も、1955年頃までは…

写植文字が使われているのは、画期的

この頃の恩地の描く明朝体は見事である。巻頭の「はしがき」などには、縦長の文字(長体)が使われていて、まだあまり普及していない写植文字を使ったものと思われる。恩地は、「書窓」でも写植文字での組版を試している。

酸性紙特有の劣化が

先週、購入したばかりの北原白秋、田中善徳『水の構図』(アルス、昭和18年)だが、最初からジャケットは破れていた。安いから仕方ないかと思って購入したのだが、帰宅してネットで検索してみたら、決して安い買い物ではなかったようだ。おまけにこのボロさ…

私が所蔵しているのは、恩地孝四郎装丁、服部龍太郎『新レコードの選び方と聴き方』(アルス、昭和8年1月初版、昭和8年3月6版)

見出しのように「新」がついた『新レコードの選び方と聴き方」で、それよりも古いのがあるとは知りませんでした。掲載写真のように函は恩地の昭和初期の頃に得意とした、●印や幾何学形態、描き文字などがふんだんに使われていて、恩地の作品であることが一目…