2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

昨日、新宿区の開架式図書館へ行って、本を読んでいたら、たまたま座った席の脇の棚に、村上護『四谷花園アパート』(講談社、昭和53年)という気になるタイトルの本があったので、パラパラとめくって見た。なぜ気になったのかというと、私の事務所の最寄りのバス停が新宿花園だから、という単純な動機でしかない。読み始めたら、何と青山二郎の「青山学院」があったのが、この「四谷花園アパート」らしいということが分り、中原中也も一時住んでいて、小林秀雄らが出入りしていたという。この「青山学院」の話のことは、うすうすは知っていたが、

それまでは青山二郎の装丁にはあまり興味がなかったが、急に身近に感じてきたので、早速、「四谷花園アパート」があったらしい、花園東公園へ足を運んで見た。どこかに「四谷花園アパート跡」等の石碑でもないかと思って探して見たが、そんな案内表示さえも…

仕事で神保町へ行ったので、ついでに「本の手帳」8号の原稿をとりに古書「玉晴」さんへ足を伸ばす。原稿と一緒に、広川松五郎:装丁、依田秋圃『山と人とを想いて』(東邦堂、大正12年)をいただいた。

広川松五郎:装丁、依田秋圃『山と人とを想いて』(東邦堂、大正12年) 久しぶりに、広川松五郎の装丁本を入手したが、芸大の染織科の教授だった広川の装丁は、どれも魅力的でムラがなく、生真面目な性格が良く出ている。平成6年に作った架蔵する松五郎装丁…

浅間六郎『霧の夜の客間』(新潮社、昭和五年)は、佐野繁次郎が装丁した本の中では、かなり初期のものだがあまり知られていないようだ。最近では佐野繁次郎装幀本コレクションのバイブルのようにいわれている「佐野繁次郎装幀図録」(「spin03」みずのわ出版、2008.3)にも記載がなく、佐野本コレクションのカリスマ的存在になった執筆者の西村義孝氏のコレクションにも入っていないのではないかと思われる。

佐野繁次郎:装丁、浅間六郎『霧の夜の客間』(新潮社、昭和五年) 表紙には、貸本屋のラベルが貼られていて、表紙絵の女性の顔が隠れてしまっているのが何とも残念でたまらない。なんとかしてこのラベルをはがしたいのだが、力任せに剥がすと、この時代の紙…

昨日の「杉浦非水の眼と手」展(於:宇都宮美術館)の興奮が覚めやらず、古書市に行ってもつい非水の装丁本に目が行ってしまった。明治45年3月30日〜4月12日に開催された日本最初の装丁展とおもわれる「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」に出品された作品を探して、展覧会以前に刊行された非水装丁本を探しているが、これがなかなか見つからない。あったとしてもかなり高価な場合が多い。与謝野晶子『夢之華』(金尾文淵堂、明治39年)が18,000〜60,000円というぐあいに。

杉浦非水:装丁、福田重政『聖賢格言集』(杉本梁江堂、中山春秋社、明治45年2月20日) この本は展覧会開催の約40日ほど前に刊行されており、展覧会には出品されたものと思われる。非水のサインが見当たらないと思ったら、サインだけが表4にありました。こ…

11月21日、「杉浦非水の眼と手」展(於:宇都宮美術館)内覧会、レセプションに行ってきた。外環・大泉から東北自動車道・宇都宮まで約3時間。インターからは、車で約10分。一般駐車場からは美術館が見えず戸惑ってしまうほどに広大な敷地の森の中にあり、紅葉がきれいな時期で景観も最高でした。

紅葉が美しい宇都宮美術館駐車場附近 「杉浦非水の眼と手」展パンフレット 宇都宮美術館外観 宇都宮美術館入り口にある「杉浦非水の眼と手」展看板 窓からの風景も採光も美しい宇都宮美術館エントランス 「杉浦非水の眼と手」展パンフレット 「杉浦非水の眼…

与謝野晶子『みだれ髪』(東京新詩社、明治34年8月)には、藤島武二が描いた7葉の挿絵が挿入されている。目次には著者である晶子の目次よりも先に、藤島の挿絵の目次の頁があるが、これは晶子が、西欧の知識も豊かな画家・藤島をいかに尊敬しているかという証とも解釈できる。つまり、『みだれ髪』は与謝野晶子の句集というよりは、晶子と藤島との共同作業による画文集ということを考えていたのではないだろうか。

これは、複製絵画としての挿絵を単に文章を解説する絵ではなく、画家の一つの表現としての絵として認めていることといえる。藤島自身も、晶子の句の説明を越えた、文学と美術の共闘という視点に立った独自の解釈と表現を意識して描いているように思える。 藤…

さて、それでは、挿絵の女性とは誰なのか? この絵に描かれている女性については、さまざまな意見が交わされているが、私は見たままの素直な感想として、まだまだ日本髪が中心だったと思われる明治の女性の髪形には見えず、西洋の絵などを参考にしたものではないかと思ったのが第一印象である。

鳳昌子『みだれ髪』には、「みだれ髪」という語が登場する句は、29、56,90,260の4首につかわれているだけ(【与謝野晶子『みだれ髪』の「みだれ髪」】岡山大学大学院文化科学研究科紀要第十六号)であり、夫でもある鉄幹の『紫』には、晶子を「乱れ髪の君…

明治20年代には四六判・並製本の『夏木立』などが格安で販売されたが、明治30年代に入ると、更にコンパクトになった三六判という小さな判型で与謝野晶子作の処女歌集である藤島武二:装丁、鳳昌子『みだれ髪』(伊藤文友館、明治34年)などが刊行される。

三六判とは、四六判全紙を40折りか44折りにした大きさを基準にしており、ほぼ縦18cm×横9cm。縦横の比率は2対1の縦長長方形。縦約18.2cm×横約12.8cm(出版社によって多少異なる)の四六判に比べ小振りで、携帯して音読する、という当時の句集を読書するスタイ…

明治10年代後半になると、それまではスミ一色の簡素な印刷であった表紙に、カラフルな極彩色の絵が付されるようになってきた。この時代における定価壱円五十銭から弐円五十銭は決して安いものではなく、にもかかわらずカラフルな表紙にして発行するというのは、それでも売れるからであり、そのことはボール表紙本の隆盛期を迎えた証しとも言えるのではないだろうか。ちなみに同時期に発売されていた並製本の『浮雲』は五十銭、『夏木立』は三十銭である。

週刊朝日編『値段の風俗史』(朝日新聞社、昭和56年)によると、明治20年のもりそばが一銭だから、もりそば150杯〜250杯分とボール表紙本が等価ということになる。明治10年の汁粉は三銭。明治14年の上等酒(1.8リットル)は十一銭だ。格安感のある並製本の『…

『NHK美の壺 文豪の装丁』(NHK出版、2008年)を購入。テレビ放送再録の本だと思うが、タイトルの『文豪の装丁』というのが気になった。普通に理解しようとすると、「著者自装の本」と解釈でき、著者が自ら装丁する本の話かと思って購入したのだが、内容は、「文章・文学にぬきんでている人の装丁(ブックデザイン)」の話ではなく、「文豪の本の装丁」という内容だった。つまり「夏目漱石本の装丁」ということで、漱石自身が装丁した本の話ではないのでご注意を。

NHK「美の壺」製作班編『文豪の装丁』(NHK出版、2008年) 本文中にも、ちょっと気になる内容がある。14ページの「『明治になって活字印刷の技術やパルプを使った用紙の製法が入ってきた。本のつくり自体も洋装のほうが馴染むということで、製本様式が一変し…

いわむらかずおさんの「絵本の丘美術館」に行ってきた。いわむらさんは、1983年『14ひきのひっこし』(累計売上91万冊)、『14ひきのあさごはん』(同101万冊)から始まる14匹のねずみのシリーズは、家族のお引越しやピクニック、芋ほりに、お月見、スキー遊びといった家族団らんの喜びを描くロングセラーを送りだす絵本作家。「絵本の丘美術館」は栃木県那須郡馬頭町の丘の上に建つ美術館。秋色に染まった木々の間を通り抜けると、林の中に突如として美術館が飛びだしてきて、まるで「紅葉のトンネルを抜けると、そこはおとぎの国」

建物外観が写っている写真はこれ1枚しかありませんでしたので、見苦しい輩が映っていて申し訳ありません。 エントランスとでもいおうか、アケビの蔓が絡まった玄関です。 スウィーツもかわいくて、美味でした。 こんな画面が14匹のねずみにもあったような………

古書市の帰り道に寄った古書店の店頭に、梅原正紀『近代奇人伝』(大陸書房、 昭和53.06)が100円で出ていたので、購入しようかどうか迷った。余りに荷物が多いので、来週来た時にでも購入しようと思って買わずに帰宅。翌日、急にどうしても欲しくなり、仕事が終ってから、高円寺に行ったが、既に売れてしまっていた。ネットで購入しようと思ったら、結構高い。こんなときは、かなり悔しい。

伊藤晴雨に関しては、福富太郎編『伊藤晴雨自画自伝』、斎藤夜居『伝記・伊藤晴雨』、 団鬼六『外道の群れ 責め絵師伊藤晴雨をめぐる官能絵巻』 (朝日ソノラマ、1996年)などを読んで興味が湧いてきたので、もう少し集めて見ようかという気になっている。絵…

最近は、ネットで購入してしまうため、めったに古書市に足を運ぶことがなくなってしまった。でも行ったら行ったで、結構たくさん購入してしまう。リュックが一杯で、持ち上げるのが大変なくらい購入してしまい、高円寺から西武新宿線の都立家政まで歩いたときの恰好は、まるで千葉から野菜や魚を売りに大きな荷物を背負ってきたおばさんのようだったに違いない。

ネットでは中々購入できない本もある。『もう一つの明治美術 明治美術会から太平洋画会』(もう一つの明治美術展実行委員会、2003年)もそんな一冊だ。静岡県立美術館、府中市美術館、長野県信濃美術館、岡山県立美術館が協力して制作した美術展の図録だが、…