松山文雄:画、壷井栄『暦』は内容にマッチした見ごとな挿画

公園の鉄棒脇に生えていて鉄棒が使用ができなくなるなど、最近よく見かける私の身長ほどもある背の高いアザミ。茎頂にテマリ形の紅紫色や紅色、ピンク色や白色などの愛らしい頭花を咲かせているが、鋭く長い針は攻撃的で威嚇しているエイリアンか獣のようにも見えて、私の記憶にあるアザミとは全くの別物のようだ。


ずっと気になっていたので「要注意外来生物リスト:植物」や「日本の侵略的外来種」を調べてみたがみあたらない。更に調べるとどうも「ドイツあざみ」らしい、別名「はなあざみ(花薊)」。わが国で作出されたもので害のあるものではないようだ。葉や総苞に鋭いトゲが多いのが難点ですが、花壇などに植えると毎年花を楽しめ、切花としても利用できるという。花も人間も多少癖があったりトゲを持っているほうが興味深いのは似ている。



松山文雄:画、壷井栄『暦』(新潮社、昭和15年3月)表紙
 名作「二十四の瞳」で小豆島を有名にした壷井栄の自伝的小説。悲しく辛いシーンが多いが、どこか優しく心温まる感じが最後に残る壷井栄ワールドをアザミの絵が見事に象徴しているように思え、内容をよく理解しての見ごとな挿画だ。