杏仁豆腐が杏の種子だとは知らなかった

小学生のころに、裏山に生えている杏(あんず)の木を見つけ、誰にも内緒でたわわに実った杏を独り占めして密かに食べていたことがあった。が、杏は他の果樹に比べ、日もちが悪いことや糖度が低く酸味が強いなど商品にはなりにくく、最近はは祭の時の杏飴やドライフルーツのアプリコットなどで食べる程度で、生で食べることはなくなった。写真は近所の小学校の塀の中に実っていたものだが、とうとう誰も食べることはなかった。ああ!もったいな〜い!


 あの杏仁豆腐が杏の種子だとは知らなかった。種子の液質の中身を杏仁といい、甘みのある甜杏仁と苦味のある苦杏仁があり、前者を杏仁豆腐の材料にするが、日本では実際に杏仁が使われていることは少なく、あの独特の香りはアーモンドエッセンスだということだ。知ったら知ったでショック!  



山口蓬春:画、室生犀星杏っ子』(新潮社、昭和32年10月)