2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

鴨下晁湖:装丁・挿絵、渋沢青花『浅草っ子』(造形社、昭和55年増補改訂版)は、昭和41年に毎日新聞社から刊行されたものの増補版。大正中頃に「日本少年」の主筆であった青花が、十代の頃に体験した浅草を中心とした回想録だ。晁湖が描いた挿絵が15点が挿入されているが、浅草を愛しむ優しさに溢れていて和まされる。晁湖の代表作となる66歳の時に描いた血しぶき飛び散る柴田錬三郎「眠狂四郎無頼控」(「週刊新潮」、昭和31年5月8日号〜)の挿絵とはまた違った、晁湖の心温かなタッチで明治期の浅草の風俗を今に伝えるいい挿絵だ。

鴨下晁湖:装丁・挿絵、渋沢青花『浅草っ子』(造形社、昭和55年増補改訂版) 鴨下晁湖:画、渋沢青花『浅草っ子』(造形社、昭和55年増補改訂版) 鴨下晁湖:画、柴田錬三郎「眠狂四郎無頼控」(「週刊新潮」、昭和31年5月8日号〜)

ネットで購入した名取春仙:装丁、石川啄木『一握の砂』と、鴨下晁湖:装丁・挿絵、渋沢青花『浅草っ子』が届いた。

名取春仙:装丁、石川啄木『一握の砂』(東雲堂、明治43年、復刻版) 今でこそ評価されているが、まだ浮世絵や日本画系の画家が主流だった明治期に、この表紙の絵はモダンすぎて何が描かれているのかさえ理解してもらえなかったのではないだろうか。まして一…

ksさんからのコメントで、池田蕉園の落款(サイン)が なぜ「百合」なのかを解明することが出来ました。「いつも楽しく拝見しております。ところで、蕉園=百合ですが、池田輝方と入籍前の蕉園の本名は榊原百合でありました。ご参考まで。」

ありがとうございます。 主人公「間貫一」を描いたのは中沢弘光。登場人物の紹介をこんなに豪華な版画家たちの絵で華やかに紹介する本はめったにない。書物を一部の教養人だけのものにしないためにも、電子ブックに負けないためにも、やはりこの本のようにエ…

ネットで注文した名取春仙『デモ画集』(如山堂、明治43年10月10日再発行版)と尾崎紅葉『縮刷金色夜叉』(春葉堂、大正9年5月15日45版印刷)が届いた。『デモ画集』には夏目漱石「三四郎」、森田草平「煤煙」、島崎藤村「春」等の挿絵が掲載されている。『縮刷金色夜叉』には名取春仙を始め8人の画家が描いた8葉の木版画が挿入されている。

名取春仙『デモ画集』(如山堂、明治43年10月10日再発行版) 名取春仙:画、島崎藤村「春」(『デモ画集』、如山堂、明治43年10月10日再発行版) 巻末に、入社早々の春仙に画家としての心得を説いた薮野椋十の注文「跋」が掲載されており、春仙の挿絵に少な…

池部三山と鳥居素川の骨折りで明治40年4月、夏目漱石が朝日新聞入社した。以後、漱石は「虞美人草」「坑夫」「三四郎」「門」「永日小品」「行人」「こころ」「みちくさ」など次々に連載を発表し50歳のときに「明暗」を絶筆として亡くなった。

名取春仙:画、夏目漱石「明暗」(東京朝日新聞、大正5年)、「明暗」の挿絵には落款がなく誰が描いたものであるのかが分からなかったが、第38回の挿絵に「NATORI」の署名があり春仙が描いたことが判明した。 漱石の入社を切掛に新聞小説の刷新が行われ、挿…

宍倉佐敏『古典籍古文書料紙事典』

火曜日に装丁の依頼があり金曜日が締切りという日程だったので、当然次週の金曜日のことだと勝手に解釈して引き受けた仕事だったが、いざ始まってみたら中二日でやる仕事だった。今さら断ることも出来ず引き受けたが、目次とタイトルの原稿が送られてきただ…

ネットで注文した名取春仙・挿画、森田草平『煤煙』が届いた。装丁は中川一政。

中川一政:画、森田草平『煤煙』(飛鳥書店、昭和22年) 名取の挿画は巻頭口絵として10頁に亘り掲載されていたが、戦後間もない印刷物なのであまり綺麗な印刷ではなく、紙も薄く裏写りしている。 名取春仙:画、森田草平『煤煙』飛鳥書店、昭和22年) 名取春…

日本出版美術家連盟のHPを利用して、挿絵画家の作品や略歴のデーターベースを作ろうと思い、身近な所からデータ集めを始めた。そんな折、挿絵画家・加藤敏郎(1927[大正2]年3月31日―1993[平成5]年6月4日)のご子息が、私の大学時代の同窓生・加藤順君であることが分かった。同窓会で配った「粋美挿画」創刊号を見た順君が、「これオレのおやじだよ」と言ったのが切っ掛けで、その後、ハガキで「敏郎氏の略歴などを送って欲しい」と連絡すると下記の機関誌の様な印刷物のデータを送ってきてくれた。

「三友月報」No,87(文芸事務所三友社、1989年11月30日) 画像では読みにくいだろうから、テキストデータに起こしてみよう。

「『風と雲の伝説』の挿画を描く 加藤敏郎画伯 清正公末裔の気品漂う

小林久三氏の新聞小説『風と雲の伝説』の挿画を描いている加藤敏郎氏を、東京杉並区も静閑な住宅に訪ね、絵画に志した動機などを訊いて見た。 加藤氏の絵心を育んだのは山形県酒田市の生家にあった絵巻物や錦絵等の古典で、それらは合戦の場面であり地獄絵で…

「拙著明治四十三年版の挿畫集の序文で、鏡花全集の一部にも編纂された同氏一流の名文は、百穂氏が私の挿画に就いて言及された序文と共に、よく當時を物語るものだが、殊に草平氏の序文は作家と挿畫家との関係に就いての一家言として味があり参考ともなろうとその一節を茲に抄録した。

名取春仙:画、島崎藤村「春」 〈予が始めて朝日新聞の紙上に小説『煤烟』を公にした当時、此畫集の著者名取春僊氏は連日此小説のために挿畫を揮毫された縁故がある。繪のことは解らぬとは云え、自分の書いた小説の挿畫だから、これは特別の興味を以て日々の…

「夢二、與平、それは甘い感傷と新しい型式とに依て、青年子女の好みに投じ人気を得てゐた。何れも獨立したコマ繪であり一種の叙情的詩畫であつて、小説の挿画、装畫漫畫(今いふそれとは少し氣持が異ふ)と稱したコマ繪は、この二人より以前に、芋銭、未醒、素明、柏亭恒友、鼎、その他多士儕々で──掲載紙の名も多數だから省略──太田三郎の畫集も稍(やや)センチな題材のものは、相當なファンを持ち、若き耕花、榮達あたりが既に新しい挿畫を試みていた。

名取春仙:画、島崎藤村「春」 明治四十四年前後の畫集全盛期には、芋銭の『學汁漫畫』未醒の『漫畫一年』『西遊記』『水滸伝』をはじめ、清方の『金色夜叉繪巻』が出れば同時に三郎、龍子、私、合作の『金色夜叉畫譜』が現れるといつた調子で、龍子の『漫画…

付録「さしゑ』3号(平凡社、昭和10年)から名取春仙「私の純文藝挿畫時代回顧」を紹介させてもらおう。文末に引用された、「デモ画集」に掲載された森田草平の序文は興味深い。浮世絵系の挿絵画家を牽制しているのも面白い。

「明治四十一年、漱石(以下諸家の敬稱を省くことを許されたい)が、『朝日』入りをした。在來堂紙面の二つの通俗小説を一つ、純文藝作と代へるに就いて、一方浮世絵系の年英を前のまゝとして、別に新人を求める必要から、『大朝』に九甫、『東朝』に私が選…

付録「さしゑ』3号(平凡社、昭和10年)から宮川曼魚「春仙禮讃記」を引用させてもらおう。春仙は夏目漱石「三四郎」や泉鏡花「白鷺」、島崎藤村「春」などの挿絵を描いたことで知られる挿絵画家だ。

「名取春仙の繪に、私が、はじめて接したのは、たしか明治四十四・五年頃であつたと憶えている。 その頃は、毎朝舊魚河岸の上総屋といふ鰻問屋へ買出しにいってゐたので、ある朝、その歸りに瀬戸物町へ出て、高津(にんべん)の前に在つた本屋へ新刊書を見に…

「今のやうに凸版は生まれず、また冩眞版を使ふ樣なこともなく、全部木版だった。讀者の側で専ら密畫(みつぐあ)を喜んだので畫家もそこに意を用いて出来るだけ細かにかいた。彫刻師も亦綾になつてもつれてゐる髪の毛などを手際よく彫るのを自慢にしたが、どうして彫ることが出来たかと不思議に思はれるやうなものが今尚たくさん残されている。

新聞の場合は木版を鉛版にとつて印刷したが、綺麗に上がることを主眼とする雑誌は木版をそのまゝ印刷にしてよい紙を選んで刷りにかけた。つぶしの版などは木目がそのまゝ残ってゐるやうな挿画がいくらもあつた。しかし、當時の巨匠が心血を注いでかいた繪も…

『名作挿画全集』第3巻付録「さしゑ」第3巻の巻頭に記載されている鏑木清方「月岡芳年先生を憶ふ」を転載させてもらおう。近代挿絵揺籃期ともいうべき明治期の挿絵の世界を垣間見ることができる貴重な資料といえる。

「大分昔のことなので、すべてが朧げになってしまったが、出来るだけ正しい記憶を辿って心覚えを綴って見よう。 月岡芳年が挿畫(さしえ)をはじめたのは明治初年のことで、たしか自由の燈(ともしび)と云ふ新聞にかいたのがそれである。明治十九年頃から廿…

ネット注文した『名作挿画全集』第3巻+付録「さしゑ」第3巻がやっと届いた。『名作挿画全集』第3巻には、志村立美:画「丹下左膳」をはじめ、担当編集者・古河三樹松に「もうあ​んな奴に頼むのよそうじゃないか」といわせた「遅筆」の富田千秋​も「良人ある人」を寄せている。ほかには、小林秀恒:画「貞操問答」、吉田貫三郎:画「花嫁学校」、田中良:画「第二の接吻」、池部均:画「地蔵経由来」、名取春仙:画「雪の渡り鳥」、鈴木朱雀:画「三万両五十三次」「日本合戦譚」が掲載されている。

付録「さしゑ」第3巻 付録「さしゑ」第3巻は、11人の挿絵画家たち​が寄稿している44頁の冊子だ。この本の購入の目的でもある「日本挿画院」の文字を​これ等の文章の中に見つけることができるのか? ・鏑木清方「月岡芳年先生を憶ふ」 ・太田三郎「挿絵襍話…

古河三樹松「『名作挿画全集』のころ」(『名作挿絵全集5』平凡社、1980年)を読んでいたら、「日本挿画院」という私設団体から挿画の全集企画が持ち込まれたという話を知った。しかし、この「日本挿画院」という団体名を見るのは初めてで、ネットで検索してもなにもヒットしない。

「名作挿画全集内容見本」 『名作挿画全集』と付録の「さしゑ」 『名作挿画全集』付録「さしゑ」 『名作挿画全集』刊行の経緯と「日本挿画院」について書かれている数少ない資料である古河三樹松「『名作挿画全集』のころ」から引用をさせてもらおう。 「…改…

今日は日本出版美術家連盟展の搬入に行ってきた。夕方までに賞が決まり、発表は明日だが、出品作「花嫁狐」がロマン館賞を受賞した。

製作中の「花嫁狐」 大貫伸樹:画、「ロマン館賞」受賞、展覧会会場にて。 細川武志:画、「大賞」受賞作。昨年度の作品も良かったが、今年は、絶対に細川さんに受賞してもらいたいと思っていた。 小宮山逢邦:画、「優秀賞」 三好はるえ、画、「優秀賞」 展…

「粋美挿画」1号、2号を三省堂書店・経堂店と成城店に置いてもらうことが出来るようになりました。星恵美子先生が作ってくれたPOPもさすがに見事で好評。これで売り上げも倍増間違いなし。このポップにもサインを入れて欲しいくらいです。

定価=1000円+税50円 山崎豊子「大地の子」や松本清張「黒革の手帳」などの挿絵でしられる、豪徳寺にお住まいで第2号の特集「挿絵画家・濱野彰親」のご本人濱野先生も、足繁くこの書店に通っているという情報が入っている。運良く出会えばサインをしてもら…

濱野彰親先生や星恵美子先生が所属する日本出版美術家連盟のホームページを起ち上げました。まだ建設途中ですが、是非ご覧ください。ちなみに私も新米の会員です。出版界で活躍する絵描きの団体ですので、我こそは!と思う方は是非ご入会下さい。私が推薦者になります。

http://www.syuppanbi.com/index.php mail: md9s-oonk@asahi-net.or.jp 日本出版美術家連盟には、田宮模型の箱絵で知られる大西將美さんや、カーペンターズ、アースウインド&ファイヤー等のアーティストのジャケットで知られる長岡秀星さん、そして「粋美挿…