武者小路実篤の装画がほのぼのと暖かい『馬鹿一』

かつて小川があったところにフタをした暗渠が、西東京市には自然遊歩道となって、至る所にある。これが私の散歩道になっている。そんな散歩道に桃がたくさん落ちていた。見上げると写真のような美味しそうな桃がたわわに実っていた。失敬しても誰にもとがめられることはないのだろうが、手を伸ばして失敬するほどの度胸はないので、カメラで撮ってきた。もったいないと思っても、どうしようもないのがちょっとむなしい。「ご自由にたべてください」と立て札を立てておいてくれれば、熟して食べごろになってた桃も浮かばれようといいうもの。


 写真下は、それまで装幀をしてくれていた岸田劉生がなくなったので、自分の本は自らの手で装幀をするために、絵を描くことを日課にしたという武者小路実篤の絵は、決して連達の絵とは思えないが、ほのぼのとして温かく豊かな感じがする、武者小路実篤:装画、武者小路実篤『馬鹿一』函(河出書房、昭和28年)