宮沢賢治『銀河鉄道の夜』には烏瓜という言葉が何度も登場する

カラスウリの赤い実はよく知られているが、花は意外と知らないひとが多いのではないだろうか。暗くなってから開き朝にはしぼんでしまう一日花だから。そういう私も満開の状態は見た記憶がない。


 それでは、と、近所にカラスウリを見つけ撮影を試みた。太陽が沈んでまだ少し明るい18:30頃からつぼみがほころび始め、20:00には毛糸玉のように丸めていた細い糸を一本一本一糸乱れずに全部広げ、レースアミのような美しいくゴージャスな花が満開になる。30秒ごとに約200枚撮影した。それでも撮影中に花が開いていく動きを確認することはできなかった。



 月下美人など夜咲きの花は白色が多いらしい。白い花は月の光の下でよく目立ち、花粉を媒介してくれる夜行性の生物(カラスウリやヨルガオの場合はスズメガ)への目印となるからだ。




鈴木靖将:画、宮沢賢治銀河鉄道の夜』(ポプラ社、1995年)
 宮沢賢治銀河鉄道の夜』に「それはこんやの星祭に青いあかりをこしらえて川へ流す烏瓜を取りに行く相談らしかったのです」(二、活版所)や、「ジョバンニは、銀河のお祭り〈烏瓜のあかりを川へ流す〉を見に行く、と言って家を出る。」(三、家)とあるように、烏瓜という言葉が何度も登場する。カラスウリは夏の日の隠れたキーワードだ。