2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小田富彌の案だといわれる黒襟白紋付きだが、その紋付きに使われている家紋に注目してみた。家紋は髑髏(どくろ)マークだと思っていたが、意外にも初めから髑髏マークではなかったようだ。

下記の絵は、『丹下左膳』の前身『新版大岡政談』の一場面だが、家紋がはっきりと描かれている。六角形の中に「二」の字が描かれているのが判る。 挿絵:小田富彌、『新版大岡政談』(大阪毎日新聞、昭和3年) 下記の絵は、志村立美:挿絵、林不忘『丹下左膳…

なぜか左膳は隻腕なのに二刀流だ。

小田富彌挿絵、林不忘『新版大岡政談』(大阪毎日新聞、昭和2年)

一番初めの2点が小田富彌が描く道場破りのシーンだが、志村立美が描くと下記のようになる。もっと凄みを利かせるシーンのような気がするのだが。極悪非道の殺人鬼のイメージはどこかに吹き飛んでしまい、どことなく天海祐希が丹下左膳を演じているような美しく優しい印象がある。

志村立美挿絵、『丹下左膳』(『国民の文学』河出書房、昭和44年)

小田富彌、岩田専太郎、志村立美といえば、3人とも美人画を思い浮かべるが……

挿絵:小田富彌、初めて挿絵として登場した左膳。迫力ある構図、動きのあるポーズ、いかつい顔、どれをとってもスキがなく、なんともいい絵ですね。 小田富彌装画、林不忘『大岡政談』(新潮社、昭和13年) 他流試合はしないので「又の日にお越なさい」と断…

「やつし」に似た痛快さが人気の秘密

縄田和夫編『時代小説・十二人のヒーロー』(新潮文庫、平成7年)では、「身体的な障害者が土壇場に至って超人的なヒーローに転ずるのも、一種、歌舞伎の『やつし』にも似た面白さを伴っている」といっている。 多田道太郎も『林不忘』(『カラー国民の文学…

柳生十兵衛、丹下左膳のように隻眼や独眼などのように体にハンディキャップを負ったヒーローが、どうしてこんなにたくさんいるのだろうか? 

柳田國男は、『一つ目小僧』『目一つ五郎考』で、「極めて尋常なるものと差別すべく外部に現れたる何等かの象徴がなければなら」ず、その「奇異とすべき点」が片目となってあらわた、としている。さらに、「もともと神に捧げるべき生け贄の人間が逃亡しない…

昔から多くの隻眼の人物が主役・脇役として活躍していた。架空実在を問わずに、私が知っている隻眼の人物をあげてみると、意外や意外、丹下左膳の他にも実にたくさんいる。

私がまず、初めに浮かんだのが、「あんた江戸っ子だってね、食いねぇ、寿司を食いねぇ」で知られる「清水次郎長」に登場する清水五人衆・遠州森の石松だ。 次は、最近NHKの大河ドラマで「風林火山」で話題になった「山本勘助」。武田二十四将の一人で、武田…

小田富彌の描く左膳にはニヒル(非情で冷酷、虚無的)で野蛮な悪党っぽい凄みがあったが、志村立美が描いた左膳は、イケメン美男子で優しい正義の味方の顔になっている。丹下左膳が誕生し、人気を博した時代背景をこの二人が描いた挿絵からも読み取ることが出来そうだ。二人の挿絵の優劣を語るつもりはないが、ともに、それぞれの時代に受ける人物の性格までも描き出す程の力作であることは間違いないようだ。

「大岡政談」に登場した悪党脇役が……

丹下左膳は、1927年(昭和2年)10月から翌3年5月に東京日日新聞に連載された「新版大岡政談・鈴川源十郎の巻」だ。当初は関の孫六の名刀、乾雲丸・坤竜丸という大小一対の刀を巡る争奪戦に脇役的に加わった一登場人物に過ぎなかった。主人公は当然鈴川源十郎…

丹下左膳の本を集め始めました。

ネットで早速、志村立美装丁、林不忘『丹下左膳』第4巻(寶雲舎、昭和24年)を購入。主人公がいないこのふやけた印象の表紙は何なんだ。読者は丹下左膳の登場を期待していたのではないのか? 丹下左膳の挿絵といえば、小田富彌(明治28年〜平成2年岡山生)を…

「本の手帳」創刊号がほぼ完売になりました。ありがと〜う!(堀内孝雄風に)感謝!感謝!

まだ一部の店頭には残っているかもしれませんが、版元在庫はなくなりました。皆さんの応援のたまものと心から感謝申し上げます。ありがとうございました。 現在4号が発売中ですが、5号の編集も着々と進み、6月には発売できるものと思っております。今後とも…

以前このブログで、石井鶴三が描いた中里介山『大菩薩峠』の挿絵について書きましたが、これがダイジェスト化されて、日本図書設計家協会会報「図書設計」72号に掲載されることになりました。タイトルは「イラストレーションはだれのもの」です。発売は6月20日ころです。石井鶴三大好きの私から鶴三へのレクイエム(requiem)のつもりです。

石井鶴三が描いた、新聞連載『大菩薩峠』の挿絵をつかって展覧会を開催した時に、著者の中里介山から、「挿絵の著作権は著者のもの」といって展覧会中止要望が出た。これがきっかけで、挿絵の著作権を巡り、石井鶴三と中里介山の間で、何度もトラブルが発生…

B斗君とキリギリスの二重奏です。天地56cm

このオブジェをつくる前には、今ではあまり見なくなってしまった「ノミ」のように体長の300倍も飛び跳ねることが出来る架空の動物が出来ないものかと考えていました。 5cmのバッタに換算すると150メートルもひとっ飛び出来てしまうことになる。体長1mくらい…

「図書設計」72号の企画編集で、3本の編集記事、A4サイズ10ページ分を担当した。今回の「うわさの情報突撃取材」が最後の1本なので、これで無事に発刊を迎えることが出来そうです。

編集記事、最後の1本は、先月、春の台風の中、長野の善光寺近くにある「渋谷文泉閣」まで取材に行った時の話。内容は、「クータ・バインディング」という製本。 あじろ綴や断裁無線綴などのケーシングと呼ばれる簡易製本の場合は、本文紙を束ねた本体の背と…

最近描き始めましたレリーフ絵画です。

オブジェのようにボードに枝や板、シュロの皮等を貼り込んでから、彩色します。「黒猫のタンゴ」ならぬ「黒猫のサンポ」です。 昨日のオブジェでは、「B斗」が乗っていましたが、絵にする時は、「美優Z(ミューズ)」を登場させることにしました。今後この二…

いつもの本の話でなくてすみませ〜ん。

「お魚くわえた野良猫〜♪追いかける♪」なんて歌がありましたが、それを立体にしたかったのではありません。 義賊はやはり犯罪か? なんて難しい話を考えようと提案しているのでもありません。義賊って本当に正義なのかな? なんて疑問もありますが。 最近、…

下記の612人の挿絵と落款は、『日本児童文庫』から収集した。

今回は36人分の挿絵と落款を掲載

絵と落款を同時に見たいのではないか?との、福田外交予算並にやさしい思いやり掲載だ!

絵がちょっと小さいかもしれませんが、大きくするとたくさん掲載できず、小さくすると絵が見づらい、という。大きくするべきか、小さく掲載するべきか、思いは千路に乱れる。とりあえず本日は「小学生全集」全88巻(興文社、文藝春秋社、昭和2年〜)から収集…

なかなか見つからなかった桜井均が春江堂に務めていた頃に編集した本を入手した

桜井書店やそれの台所を支えた大同出版の話を「本の手帳」第2号(本の手帳社、2007年、1000円+税)、第3号(本の手帳社、2008年、1000円+税)に連載しましたが、その時には、社主・桜井均が桜井書店を設立する前に編集を学んだという春江堂での仕事ぶりにつ…

挿絵家たちの落款60点アップと予告しましたが、85点公開します。大正末期頃に活躍した挿絵家が多いので、解読するのはちょっと難しいかもね。今回の落款は絵はがきから収集したものばかりです。

アップしてみたが、画像の下にそれぞれの名前が入っているんですが、小さくて見えないようですね。 左上から一つのぞいて ・在田稠 ・浅井忠 ・浅見翠蛾 ・一条成美 二段目は ・稲野年恒 ・池田永治 ・池田薫園 ・上村松園 ・岡田三郎助 三段目 ・岡野 栄 ・…