2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

津田青楓装丁『三重吉全作集第三巻子猫』

昨年6月まで、別のブログで津田青楓装丁『三重吉全作集』全十三巻の装丁の話を書きつづけてきだが、コメント欄にスパムメールのアドレスが毎回数百も書き込まれてしまい、9巻まで書いてこのプロバイダーに引っ越してきてしまった。 今日は久しぶりに、全13…

文字が演じる書物の表情…7

●装丁作品の評価は装丁作家自らが下すというスタイルを守り通した田村義也 田村の作品にはいい意味での装丁家のわがままがある。それは、かつてロシアのレーピンが作家の自的精神と作品の価値を擁護して「芸術は公衆の奴隷となるべきではない。彼自身が自分…

文字が演じる書物の表情…その6

●田村義也の装丁、田村65歳(1987年)以降の作品。立松和平『天地の夢』(集英社、1987年) 土屋隆夫『不安な産声』(光文社、1989年) 生島治郎『浪漫疾風録』(講談社、1993年) 浜畑賢吉『ぼっけもん走る』(NHK出版、1995年) 中野孝次『清貧の思想』(…

文字が演じる書物の表情……その5

●田村義也の装丁を年代順に眺めてみよう。まずは私の手元にある田村装丁本では一番古い多田道太郎『複製芸術論」(勁草書房、1962年)、鶴見俊輔『大衆芸術論』(六興出版、1965年) 鶴見俊輔『限界芸術論』(勁草書房、1967年) この頃の作品では、私が学生…

文字が演じる書物の表情…その4

手描き文字の装丁掲載をもう辞めようとは思うのだが、ここまでやったらもう少し、あれも載せたいこれも載せたいと迷い、とうとう今日も掲載してしまいました。書き文字もやる装丁家で、大好きな司修の装丁を落とすわけにはいかない。三浦哲郎『冬の雁』(文…

文字が演じる書物の表情…その3

ここのところ毎回「バックアップデータを保存するローカル記憶領域が不足しています」との警告がでるまで写真をアップしている。今回も懲りずに掲載します。 写真は上から 宮永岳彦装丁、遠藤周作『ヘチマくん』(新潮社、昭和36年) 竹中英太郎装丁、竹中労…

文字が演じる書物の表情……その2

●あなたは葉書を書くとき、手書文字派? 書体文字派?まだ年賀状を手にして二ヶ月程しか経過していないので、制作した苦労も、受け取ったときの感激も薄れてはいないのではないかと思います。作る立った側に場合は、宛名くらいはコンピュータでプリントした…

文字が演ずる書物の表情…1

最近では手書きの書物タイトルがだいぶ少なくなってきたようにおもえる。それでも手書きの文字のほうが写植やコンピュータで使えるフォントを使うよりは、インパクトがあり内容にあった表情を出せるので、手書き文字は根強く生き残っている。 私がこの業界に…

池田満寿夫のコラージュ(collage)を使った装丁

コラージュ(collage)とか「パピエ・コレ」を言葉で説明するとほんの数行で説明できてしまうもので、説明同様、技法としても簡単単純なものだ。 コラージュ(collage)とは現代絵画の技法の一つで、フランス語の「糊付け」を意味する言葉である。主に新聞、布き…

池田満寿夫と勝井三雄

『楼閣に向かって』(角川書店、昭和53年)、『窓からローマが見える』(角川書店、昭和54年)は、『エーゲ海に捧ぐ』(角川書店、昭和52年)との池田満寿夫シリーズのようにして後を追って発行された。手元にあるのは『エーゲ海…』以外は初版であり、果たし…

コラージュを用いた池田満寿夫の装丁

先週、新宿サブナードの古書市で開催されていた「300円均一」セールで購入したのがこの池田満寿夫(1934-97年)装丁、石原慎太郎『嫌悪の狙撃者』(中央公論社、昭和53年)。池田が得意のコラージュを駆使しての装丁だ。この装丁はおそらくは今回写真で掲載…

「機械」題字は横光利一の文章表現の延長

工業生産された機械そのものと横光の小説『機械』の両方が重層的に示す意味を図象表現しようとする意識が、創作文字という表現方法を探らせたのであろう。つまり、小さなパーツが組織化され一つの総合体として構成されているというような、実在する機械が有…

横光利一全集

横光利一『機械』に関する評論などを読んでみたいと思い、文学全集の月報を集めているうちに『機械』が掲載されている全集がたくさん集まってきた。この写真の他にも数点ある。 伴悦『横光利一文学の生成−終わりなき揺動の行跡』(おうふう、平11年)や野中…

清刷りを使った佐野繁次郎の装丁

●清刷りを使った佐野繁次郎の装丁 佐野の装丁に活字が使われているもう一つの例として、清刷りを版下として使った装丁がある。 清刷りとは、白い紙に活版印刷で印刷したもので、文字を貼り直したり、拡大したりしてその文字(版下)を使ってデザインし、再度…

佐野繁次郎の装丁本と文字

今日は、出勤途中の新宿サブナードで古書市を開催していたので、ちょっと寄り道をしてしまった。佐野繁次郎の装丁本2冊と横光利一の『機械』の月報が付いている全集、さらに装丁が気に入って衝動的に購入してしまった『池谷信三郎全集』(改造社、昭和9年)…