2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

安さだけではない美しさも備えた円本全集

の3つのテーマ。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っております。詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。77講座ある講座案内の最初の見開きページに私の講座が紹介されているのには、…

洋画家たちが美しいさし絵を運んできた

装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー

「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」講演が、JR中央線・日野駅前の実践女子学園生涯学習センターで、11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。受講料は3回分で3,150円。

講演内容は

杉浦非水の装丁は、関東大震災以後大きく変化し、昭和初期には絶頂期を迎える。『現代日本文学全集』や『愛(かな)しき歌人の群』等は非水装丁本の中でも最高の出来ではないかと思っている。前回紹介した大正11年に創作された『改造の独逸より』を加え、私の「非水装丁三大お気に入り本」としている。『現代日本文学全集』は古書価も安く、古書市では500円くらいで売られていることが多い。私は、函入布装で白い布が真っ白できれいな美本を、五反田の古書市で200円で5冊ほど手に入れた。以前購入した本よりも安く保存状態がいい本に出会う

杉浦非水:装丁、『ああ故郷』(昭和2年) 杉浦非水:装丁、杉浦翠子『愛(かな)しき歌人の群』(昭和2年) この絵は中央の黄色い部分が雉か鳳凰などの鳥の絵だとずっと思っていたが、よくみるとタンポポかあざみの花のようだ。 愛妻・翠子のために創作した…

杉浦非水:装丁、池田林儀『改造の独逸より』(東京堂書店、大正11年)

杉浦非水:装丁、『資本主義のために』(大正11年) 大正12(1923)年1月7日から同年12月2日までヨーロッパに遊学したが、1923年9月1日の関東大震災発生により、旅程は途中で切り上げられ、帰国を余儀なくされた。これ以降の装丁が、外遊の影響を受けたと思…

杉浦非水の大正期、関東大震災前の装丁

非水の装丁は、関東大震災以降に大幅に変化を見せる。が、立証は出来ないが、洋行する前から美術雑誌などからアール・デコに関する情報をつかんでいたのではないかとも、推察できる。特に気になるのは大正11年に刊行された池田林儀『改造の独逸より』(東京…

安さだけではない美しさも備えた円本全集

の3つのテーマ。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っております。詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。 77講座ある講座案内の最初の見開きページに私の講座が紹介されているのには…

洋画家たちが美しいさし絵を運んできた

装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー

非水は1923年1月7日から同年12月2日までヨーロッパに遊学した。パリを中心として約40日間ずつの4冊の旅日記が残されており、46歳にして初めて迎えた外遊体験をつぶさに知ることが出来る。

非水の創作活動で、アール・ヌーボーからアール・デコへの転換期としてしばしば取り上げられるのが、このヨーロッパ滞在だが、この旅行で持ち帰ったといわれる300種ともいわれるポスターの全貌はすでに知ることは難しくなっており、この旅行と創作活動を関連…

杉浦非水の関東大震災前までの装丁

杉浦非水:装丁、『かたおもひ』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『次の一戦』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『古今孝子録』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『最新大日本地図』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『小ゆき』(大正4年) 杉浦非水:装丁、『うき世』(大…

「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」講演が、11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は

饗庭篁村『単林子撰註(近松研究)』 (東京専門学校出版部、明治34年)に始まった杉浦非水の装丁は、大正期に大きく変化する。沢山の装丁作品を並べてみることで、特に関東大震災を境に新たなスタイルを採り入れているのを見つけることが出来る。

明治期にみられたようなアール・ヌーボーの影響はあまり強くは感じられないように思える。 杉浦非水:装丁、「少年世界」(大正元年) 杉浦非水:装丁、「少年世界」(大正元年) 杉浦非水:装丁、「演藝画報」(大正元年) 杉浦非水:装丁、「百合子」(大…

1912〈明治45〉年、日比谷図書館において杉浦非水の装幀本による「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」が開催された。この時に目録などが刊行されたのかどうかは、現時点ではわかっていない。が、明治45年以前に非水によって装丁された作品が出展されたのは確かなので、明治期の装丁作品を調べてみよう。これまでも取り上げてきた「三十六年」や「ホーム」「報知日報」「三越」「三越タイムス」「大阪之三越」などの冊子類はもちろんのこと、単行本も数こそ少ないが、手掛けている。

1912〈明治45〉年、日比谷図書館において開催された杉浦非水の装幀本による「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」 不鮮明な写真だが、よく見ると描かれているモチーフなどの特徴から「三十六年」「ホーム」「三越」等を判読できる。 杉浦非水;装丁、杉浦非水:装…

杉浦非水の絵に感化されたわけではないが、数日前から水彩画を描きはじめた。

大貫伸樹:画、「ハロウィン」 大貫伸樹:画、「おでん屋の提灯と瓢箪」 私淑しているのは、佐々木吾郎さんと永山裕子さんだ。二人の書いた水彩画の本を沢山購入して、絵を描く時はいつも傍らに置いて眺めながら描いている。こうして、佐々木吾郎さんの蔭の…

杉浦非水には、『非水百科譜』という植物画集があり、植物にはことのほか興味を持っていた。「非水は三越のポスターで、アール・ヌーボー様式のデザインを全面に駆使して新しい効果を挙げたが、その翌年の『三越』の表紙デザインには、アール・ヌーボー様式よりも、より自然なそして単純化した非水独自の日本画風のスタイルで、人物・風景・花鳥などを描いており、これが非水独自のスタイルで基本となっている。しかもそのモデルとなったものは、山名(*文夫)氏が云うとおりすべて直接自然の風物を、自ら写生により得たものであるから創作である。

杉浦非水「やへざくら」(『非水百花譜』第1輯) 杉浦非水「ぼたん」(『非水百花譜』第1輯) 非水は「植物本来の生育状態や其習性の観察が本当でなかったら、自然の命は捕まえられたものではない。一局部の写実の綜合は自然への冒瀆であるかれである。」(…

鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年)には、非水が描いた4点の多色摺木版画が挿入されている。

杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年) 杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年) 杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年) 杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年)劇場版 Fate/…

杉浦非水の大正期の装丁本

杉浦非水:装画「秋草」(「少年世界」博文館、大正元年9月) この本を購入した時は、この少年は草薮の中に隠れて何をやっているんだろう?といういかがわしい期待を込めて購入した。が、よく見ると、腕に喪章を付けている。本文中には「明治天皇御大喪儀」…

「(非水)は明治30(1897)年5月、誕生祝いを終えて上京、麹町区平河町の岩井禎三(愛媛県出身。日本赤十字副院長を務め、伏見宮家の侍医となる)に身を寄せていたころ、「三棹」と号している。川端玉章先生には、岩井さんの知人で西洋木版画の大家合田清先…

4月に実践女子学園生涯学習センターで90分3回講演をした「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」が、また11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は前回とは違う内容でお願いします、といわれ、

・装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー ・洋画家たちが美しいさし絵を運んできた ・安さだけではない美しさも備えた円本全集 の3つのテーマで講演することになった。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っておりま…

1912〈明治45〉年、日比谷図書館において杉浦非水の装幀本による「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」が開催された。個人の作家による装丁展は、おそらくわが国では最初のものとおもわれる。「当時装幀の仕事は、画家の副業というイメージでとらえられ、一段低く見られがちであった。制作への真摯な取り組みやこのような展覧会の開催によって、非水は図案の仕事をファインアートと比肩しうる新たな芸術の一ジャンルとして確立しようとしたのだ。」(「“図案”への目覚め」『杉浦非水の目と手』宇都宮美術館2009年)装幀にかける意気込みのほど

展示の下の部分には、一点ごとに額装した印刷物が見られるが、この辺にも非水の印刷複製物を油絵などの1品制作の芸術品と同じように扱うというような意図が感じられる。 写真1 写真2 「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」於:日比谷図書館階下、1912〈明治45〉年…