2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

私の知らない超レア物、究極のゲテ本

坂本篤とは何者? という事については後で調べる事にして、続きも紹介せずにはいられない。 《この章の終りに『彼と我』として宇佐美不喚楼の名がでてくる。不喚楼も昌三とは親しい友人の一人だった。昭和の初めころには彼の『女人礼賛』の稿は完成していた…

少雨荘桃哉は斎藤昌三の号

亀山巌装丁、坂本篤補注、斎藤昌三『36人の好色家』(坂本篤、昭和48年)は、昌三没後12年目に坂本篤の補注を加えて発行されたもので、「少雨荘桃哉」の項が面白いので購入した。昌三が、ゲテ本にはまるきっかけになった本の話が書いてある。 その部分を一部…

村山知義『構成派研究』(中央美術社、大正15年)にも

「機械化」(『構成派研究』)という章に「機械的要素の芸術への導入の次には芸術の機械化がくるのは当然である。芸術品の個々の手工芸的制作は、中世紀的であり、ブルジョア的であり、不必要な贅沢であり、大衆の協同と平等の社会には全くふさわしくないも…

大貫伸樹の造本探検隊47(柳瀬正夢装丁「骸骨の舞跳」

柳瀬正夢装丁、秋田雨雀『骸骨の舞跳』(叢文閣、大正14年2月)は、柳瀬の装丁の中では最も気に入っている作品だ。前衛美術運動の影響やグロッスの影響なども感じとることもできる。何よりも外の作品には見られないユーモアがある。 『骸」の文字が隠れんぼ…

常に通過点であり完成した表現様式を持たない

黄色で印刷されているイラストがたくさんの風刺画をコラージュしてあるのに、その絵の上に更に濃いグレーでこの老いた天使のような絵やビル群を重ね刷りしているので、画面は更に複雑さを増している。この多重層の表現も柳瀬の実験的な作品で通過点であった…

「審くもの審かれるもの」函

「大貫伸樹の装丁探索」http://blog.melma.com/00140644/で、函の裏面を大きな画像で見せたので、ぜひそちらものぞいて見てください。この画像も全体に暗くしてコントラストを強くし、オーバープリントされている黄色のイラストが少しでもみえるようにと腐心…

天才といわれた画家・柳瀬の才能の片鱗を見る思いがした

グロッスの影響を強烈に受けた柳瀬は、わずかな間にほぼ完全にグロッスの思考と表現を理解し、自分の表現へと消化していった様子がうかがわれる。この時に身に付けた表現は以後の柳瀬の活動に大きな影響を与えるものとなる。

バックの絵もコンピュータでくっきりと

函と表紙を同時に撮影しようと思ったが、ウラ表紙にある正夢の「夢」の字をデフォルメした「いろはサイン」と呼ばれる署名を出したかったことと、オモテ表紙からウラ表紙にかけて、うっすらと印刷されている装画を、コンピュータ処理で、くっきりと出して見…

グロッス風の絵がオーバープリンティング

池袋サンシャインの古書市に行った帰り、光芒書店本店によった。初めてなので、品定め程度の気持ちで立ち寄ったが、柳瀬正夢装丁、中西伊之助・布施辰治「審くもの審かれるもの」(自然社、大正13年12月第5版)があったので購入した。かつて、早稲田の渥美書…

前衛美術吸収の痕跡をみることができる装丁

アンドレーフ「先駆芸術叢書 黒い仮面」(金星堂、1924年)は、未来派、構成主義の影響を受けた装丁で、円弧や直線による形態や英文字をモティーフとした構成による斬新な作品だ。 この時期の装丁としては、「表現派戯曲集」「審くもの審かれるもの」「淫売…

普及版でもこの見事なゲテぶり

昨日、東京古書会館のアンダーグランドブックカフェで、斎藤昌三の装丁本を久しぶりに購入することができた。『魯庵随筆 読書放浪』(書物展望社、昭和8年5月)がその本。いつものゲテ本の例に漏れず、今回は新聞紙を用いた装丁である。この本は、普及版第二…

大貫伸樹の造本探検隊43(柳瀬正夢装丁「地獄」

画像が汚くて申し訳ない。函もない。この本は、柳瀬正夢(1900-1945)装丁、金子洋文『地獄』(自然社、大正12年5月)で、柳瀬の初期の装丁である。 中央に何の絵が描かれているのかブログの画面では分かりにくいかもしれないが、手に取ってみても良くわから…

これも斉藤のこだわりか

四六判120頁の薄手の書物で、一見普通の詩集のように見受けられるが、前記のようなこだわりが随所に見られ、斎藤昌三の隠れたアイディアを至る所に見つけることが出来る、こだわりの造本である。表紙の芯ボールが面取されているのもそんな斉藤のこだわりであ…

これが書物展望社の本?

いつもの書物展望社の本とは一味違う瀟洒な装丁の本が、大阪の斜陽館から届いた。 写真の眞田喜七『詩集 雲の時計』(書物展望社、昭和15年)がその本。 装丁は著者ゆかりの画家らしい塚本茂。見返しにも表紙の続きのように雲の絵が印刷されている。巻頭には…

内容との距離感が差をつける

そんな気負いが、内容をより忠実に表現しようとしてしまったのだろう。内容への密着度が高いだけ、創作面での斬新さがやや弱く説明的な感じがする。その点、村山の装丁は、内容とは少し距離を置いて、自分寄りの表現にまで引きづり込み、斬新で魅力あふれる…

珍しい同じタイトルでの競作

写真右は、村山知義が装丁した同じタイトルの本、藤森成吉『何が彼女をそうさせたか?』(改造社、昭和2年初版)である。同じタイトル本を複数の装丁家が担当するのは、比較的珍しいことだ。制作期間も3年しか離れていないので、正に同時期の競作といえる。…

村山知義と柳瀬正夢が競作

最近、柳瀬正夢装丁、藤森成吉『普及版何が彼女をそうさせたか?』(改造社、昭和5年4月40版)写真左を、岩手県の沙羅書房から購入した。経年変化はあるものの、並製本にしてはかなり丁寧に保存してあったのだろう、きれいな本だ。 この本の存在は全く知らな…

お気に入り広川松五郎装丁本

最近入手した広川松五郎の装丁本で最も気に入っているのが、大久保周八編集『巨人新人 普選代議士名演説集』(大日本雄辯會講談社、昭和3年5月)。巻頭の序には「……言論の力は、つひに勝てり矣。曾つては、おぞくも、黄白の前に光をうしなってゐた辯舌が、和…