2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

図鑑でもないのにこの挿絵はすごい。広辞苑ほどの束(厚み)がある『国民百科辞典』(冨山房、明治41年)。見事な絵がたくさん入っているのに驚き、つい購入してしまった一冊。この図鑑のもう一つのすごさは、誰がどの絵を描いたのかは分らないが、織田一麿、五姓田芳柳、戸田塘仙、西野猪久馬、横山慶次郎と、5人の画家の名前が、執筆陣と並んで巻頭にまとめて記されている事だ。

『国民百科辞典』(冨山房、明治41年) 織田一麿(1882─1956)の「武蔵野の記録」は植物や昆虫など自然観察の随筆集で、石版画による「画集銀座」「画集新宿」を出版した石版画家として知られ、明治・大正・昭和と変りゆく風景を描き続けた。 1970(明治40)年…

今ではこのような科目はなくなってしまいましたが、この接ぎ木の説明は『小学農業書』(大日本図書㈱、明治40年)に記載されていたもの。

恐らく、リンゴや梨など大切な農業技術の一つなのでしょうね。此の本の最終章には「農業は国を富まし、兵を強くするには欠くべからざる。これによりて立つ所の国は安全強固なり」とある。自給率30数%では。外交にも弱腰にならざるを得ないのかも知れません…

明治9年に発行された田中義康・編集、田中芳男・閲『小学読本巻六』の巻頭に「博物学の第二課ヲ植物学トス、此学ハ草、木、苔、蘭、ノ種類、性質ヲ辨識シ、兼テ花、實、葉、根等ノ模様ヲ、考究スル物ナリ」とあり、『小学読本』ではあるが、植物学の教科書ではないか思う。

田中義康・編集、田中芳男・閲『小学読本巻六』(明治9年、田中義康蔵板) 田中義康・編集、田中芳男・閲『小学読本巻六』(明治9年、田中義康蔵板) 活字の印刷ではなく、板本のせいもあり、挿絵は小さく、現物を見てもさほどきれいに印刷されているわけで…

一説によると、この藤井健次郎「普通教育 植物学教科書」(開成館、明治39年)のように、植物学が学校教育に取り入れられたことが、明治40年代の図鑑のブームを作り出すことになったという。

藤井健次郎「普通教育 植物学教科書」(開成館、明治39年) 藤井健次郎「普通教育 植物学教科書」(開成館、明治39年) 藤井健次郎「普通教育 植物学教科書」(開成館、明治39年) この本は、絵がすごい。挿絵のリアルな描写や大胆な構図をみただけでも、執…

奥付がなく、著者名や発行出版社名が分らないが、ネットで調べてみると、斎田功太郎 佐藤礼助 、『最新図説 内外植物誌』(大日本図書、大正5年)ではないかと思われる。1928頁におよぶ大部の本で、束は8cmもある。丁度『広辞苑』と同じくらいの厚さがある。

斎田功太郎 佐藤礼助 、『最新図説 内外植物誌』(大日本図書、大正5年) 本の厚みが分るように撮影してみたが、こんな状態なので、本文中の植物画を複写するのは難しい。緻密な絵が4000位記載されているのではないかと思われるが、この図鑑にも挿絵家の名前…

私が所有する最も古い図鑑(図譜)は杉山省吾編著『薬用植物図譜』(半田屋醫籍商店、明治31年)。

杉山省吾編著『薬用植物図譜』(半田屋醫籍商店、明治31年)表紙。 杉山省吾編著『薬用植物図譜』(半田屋醫籍商店、明治31年)本文中より。 杉山省吾編著『薬用植物図譜』(半田屋醫籍商店、明治31年)本文中より。 石版画、(リトグラフ lithograph, litho…

牧野富太郎『植物一日一題』(ちくま学芸文庫、2008年)を購入。毎日描いていたんですね。

巻頭序文に「昭和二十一年八月十日より稿し初め、一日に必ず一題を草し、これを百日欠かさず連綿として続け、終に百日目に百題を了えた。」とあり、本当に百日描き続けたんだ。もうそれだけで尊敬ですね。とほど暇だったんですね、なんて言っている人は誰で…

某大学O教授(注:東大植物学研究室ではありません)から、小磯 良平・画、刈米 達夫・解説「薬用植物図譜」(日本臨床社、1985年)の図版が、これ見よがしに送られてきた。こんなメールは本当に嬉しいのだが、でもかなり悔し〜い。この本は口絵の版画がついていると120,000円もする代物で、とても赤貧のブロガーには手が出ない垂涎の書物なのだ。

教授によると「武田製薬の社内月報の表紙を飾った絵をまとめたもの」だそうだ。画面の右下に「R.Koiso」の落款を確認することが出来る。 小磯 良平・画、刈米 達夫・解説「薬用植物図譜」(日本臨床社、1985年) 小磯 良平・画、刈米 達夫・解説「薬用植物図…

私がイメージしている宮本武蔵は、萬屋錦之介、北大路欣也や高橋幸治などのTVドラマで作られたものだが、今回入手した『少年講談全集 宮本武蔵』(大日本雄弁会講談社、昭和30年)とは、なんか違う。

装画:木股清史『少年講談全集 宮本武蔵』(大日本雄弁会講談社、昭和30年) 身に付けているものがちょっと、派手できれいな感じがしませんか? 武蔵は大きな道場の若様だったんですね。 挿絵:木股清史『少年講談全集 宮本武蔵』(大日本雄弁会講談社、昭和…

あの牧野富太郎って大学教授じゃなかったんだ。牧野富太郎のすごさは、この見出しが全てを語っています。『植物学雑誌』などに次々と論文を発表するなど目立ちすぎる無冠の一書生は、主任教授・矢田部良吉から植物学教室から追放宣言された。生涯、一講師で終った牧野の生活はかなり苦しかったなんて、にわかには信じがたい。清貧という言葉がぴったりする。自慢じゃないが、おいらは赤貧だけどね。

「サライ」(小学館、1991年)

「サライ」(小学館、1991年)「特集 平成の牧野富太郎」を古書店で見つけて読み始めたら、あまりの面白さに隅から隅まで読みつくした。私が図鑑の楽しさに魅せられのめり込み始めたきっかけは、この「サライ」の特集記事なんです。

「サライ」(小学館、1991年)表紙、AD:岡本康、写真:馬場隆 想像を絶するものすごい記事が満載されていて、毎日持ち歩き、通勤電車の中で何度も何度も読み返してしまいました。小学館からクレームがでてしまいそうなので、全ページを画像で紹介することは…

図鑑ではないが、マニアックな鳥の話がこの本、国松俊英『宮沢賢治 鳥の世界』(小学館、1996年)、挿絵:薮内正幸。帯には「賢治が愛した鳥たちに会える。文学者で日本野鳥の会会員の著者・国松俊英と、日本を代表する生態画家・薮内正幸が、賢治文学に登場する鳥について初めて書いた本。誰も書かなかった賢治の豊かな鳥の世界、もうひとつの魅力がひろがる。」と、宮沢賢治の文学作品に登場する鳥を拾いまくり、説明をくわえている。

国松俊英『宮沢賢治 鳥の世界』(小学館、1996年)、装丁:tee graphics 国松俊英『宮沢賢治 鳥の世界』(小学館、1996年)、挿絵:薮内正幸

いつ購入したのかも忘れ本棚の肥やしになっていた本、国松俊英『鳥を描き続けた男 鳥類画家小林重三』(昌文社、1996年)を取り出して、読み始めたらこれが、やたら面白い。小林重三(しげかず)については「大正昭和の戦前、戦後と六十年にわたって、ひたすら鳥の絵を描き続けた男。日本の三大図鑑といわれる、黒田長禮『鳥類原色大図説』、山階芳麿『日本の鳥類と其生態』、清棲幸保『日本鳥類大図鑑』、そのどれもに鳥類画を描き、その絵は今も鳥を愛する人々を魅きつけてやまない。忘れられた鳥類画家の生涯を掘りおこし、日本の鳥学を築い

国松俊英『鳥を描き続けた男 鳥類画家小林重三』(昌文社、1996年)、装丁:昌文社編集部 国松俊英『鳥を描き続けた男 鳥類画家小林重三』(昌文社、1996年)口絵 国松俊英『鳥を描き続けた男 鳥類画家小林重三』(昌文社、1996年)口絵

最近、図鑑の絵を描いたのは誰なんだろう、それぞれのジャンルに専門の画家がいたのだろうか、などということが気になり、古い図鑑などを集め始めた。この佐藤達夫『植物誌』(雪華社、昭和44年)はそんな流れの中での購入だ。

佐藤達夫『植物誌』(雪華社、昭和44年) 佐藤達夫『花の画集』(東京新聞社、昭和46年)

毎日通る通勤路の新宿サブナードで、今日から明日まで古本浪漫洲300円均一セールをやっていた。時間は気になるがちょっと立ちよって『世界名作全集 怪盗ルパン』(講談社、昭和29年)と佐藤達夫『植物誌』(雪華社、昭和44年)を購入してきた。

左)装画:山口将吉郎『世界名作全集 八犬伝物語』(講談社、昭和28年) 右)装画:高畠華宵『世界名作全集 怪盗ルパン』(講談社、昭和29年) この全集は、有名な挿絵家たちが、本文中の挿絵までたくさん描いているのが何とも魅力的だ。おまけに古書価が安…

井川洗崖が描いた『大菩薩峠』連載第一回目の挿絵の「放れ駒」の定紋を、勘違いして「将棋の駒」を描いてしまった話でしたが、実は「将棋の駒」の家紋というのもあるんですね。私も初めて見ました。洗崖が間違ってしまったのもやむを得ないことだったのかも知れませんね。

挿絵:井川洗崖、家紋が間違っている『大菩薩峠』部分、 将棋の駒の家紋

同じように見える挿絵だが、使うサイズによって新たに描き直している

『大菩薩峠』には、井川洗崖、石井鶴三、金森観陽、中村岳陵、伊東深水、硲伊之助、矢野橋村など多くの挿絵家が関わっているが、『決定版 大菩薩峠』(角川文庫、昭和30年)には、野口昂明が描いた『大菩薩峠絵本 第一』の挿絵が流用されている……と思ったが…

井川洗崖が描いた第一回目の挿絵の定紋に誤りが……

将棋の駒が紋になっている 新聞小説の挿絵は可なり忙しく時間に追われて描くようで、この井川洗崖が描いた挿絵の定紋には間違いがあり、訂正する余裕がなかったのか、最終行に「本日挿絵『放れ駒』の定紋は走り馬なるべき誤りなり」との訂正文がある。「将棋…

山梨県立文学館で2003年に開催された〈中里介山「大菩薩峠」の世界〉展の図録を購入。大菩薩峠の関係資料を続けて何点も入手する事が出来た。此の図録はさすがに大菩薩峠のゆかりの地にある文学館の展覧会だけあって、かなり充実した展示だっただろう事が、この図録の充実度からうかがう事が出来る。企画展編集委員も紅野敏郎、健介親子と、元早稲田大学教授・竹盛天雄、櫻沢一郎と豪華メンバーだ。

「中里介山『大菩薩峠』の世界」(山梨県立文学館、2003年) 挿絵:井川洗崖、「大菩薩峠」第1回(都新聞、1913、大正2年) 嬉しい事に、新聞連載の第1回が記載されていた。この挿絵の版木も記載されているのがすごい。あるところにはあるもんですね。第1回…

こちらは丹下左膳の表紙が気に入って購入してしまった。

装画:加納和典、八剣浩太郎『偽造日本史の正体 歴史考証なるほど読本』(廣済堂文庫、平成4年) 歴史考証の本の表紙に丹下左膳が採用されているのが面白い。時代考証不適格の代表格という事なのだろう。かつて三田村鳶魚が『大衆文芸評判記』で林不忘『丹…

最近はもっぱらネットで購入していたが、昨日久しぶりに高円寺の古書市や都丸書店、荻窪の岩森書店、ささま書店、などをまわって、リュックに入らないほどの古本を購入してきた。そのうちの何冊かを紹介させていただきます。

中里介山『大菩薩峠絵本(私家版)』(春秋社、平成20年8月22日、創業八十周年記念非売品) この本は、段ボールの箱に入っており、まだ刊行されて間もない新品だ。 巻末の「復刻版刊行に当たって」によると、 春秋社刊の『大菩薩峠』普及版によって昭和11(1…

昨日の新潮社『世界文学全集』の元になった本を紹介したが、『アンデルセン童話全集』も定価=弐円八拾銭もイチヤク買っていたものと思われる。背のデザインがよく似ているように見える。これらの本の約三分の一の価格になってしまうのだから、格安と云わざるを得ない。

『アンデルセン童話全集』(新潮社、大正13年)

戦後の挿絵家のものだが、『少年講談全集 塙団右衛門』(講談社、昭和30年)を購入。私はこの矢島健三という挿絵家を知りませんでしたが、なかなかじゃないでしょうか。このシリーズでは「荒木又右衛門」なども担当している。

挿絵:矢島健三、『少年講談全集 塙団右衛門』(講談社、昭和30年) 矢島健三の落款。恐らく平仮名で「けん」と書いているのでしょう。 挿絵:矢島健三、『少年講談全集 塙団右衛門』(講談社、昭和30年)

昭和初期(大正15年12月〜)、改造社から刊行された『現代日本文学全集』(改造社、大正15年)全63巻がすさまじい売れ行きを見せ、30万部売れたとも60万売れたとも言われている。後に春陽堂から発行される『明治大正文学全集』と内容的にバッティングし、さまざまなトラブルが発生し、互いに中傷合戦を行い、後味の悪い結末となった。

装丁:杉浦非水、『現代日本文学全集 菊池寛集』(改造社、昭和2年5月)。アールデコを取り入れたみごとなデザインとしも知られている。 『現代日本文学全集』に続け、と刊行されたのが新潮社『世界文学全集』全38巻だが、こちらは、対抗する全集がなく、57…