2008-01-01から1年間の記事一覧

「図書設計」74号が発刊になりました。表紙写真はアラーキーこと荒木経惟先生。「図書設計」は25年間続いているが、表紙をカラーにするのは初めてだ。

「図書設計」74号表紙。写真:荒木経惟 巻頭特集7頁は甲南大学教授で、今年岩波書店から『画文共鳴』を上梓した木股知史さんの「『明星』における文学と美術の交流」。 「図書設計」74号巻頭特集「『明星』における文学と美術の交流」 私も「装画美術館 炸裂…

先日の早稲田大学での講演には間に合わなかったが、横光利一は創元社版「機械』の表紙で、こんな文字を書いてもらいたかったのではないだろうか、という題字を作ってみた。

横光は、機械の部品を組み立てるように、文字のエレメントを機械の部品のようにして組立て完成させる文字を作りたかったのではないだろうか? そんな文字を作ろうとしたが、装丁担当の画家・佐野にはそれだけの創作技術がなかったので、再版で文字を書き換え…

ジュラルミン装にふさわしいのは『時計』ではなく「鳥」だったのではないだろうか

講演の圧巻は、単行本にはならなかったが、横光の提唱する「人間的機械」論の実践を喚起しようとした横光利一「鳥」こそが、ジュラルミン装にふさわしい本だったのではないだろうか、として、この講演の為に、装丁を手作りで作ってしまったこと……ではないか…

今から、早稲田大学での講演に行ってきます。テーマは「◆装丁美術考◆ 佐野繁次郎の装丁と、横光利一『機械』『時計』の装丁 ──『機械』『時計』の装丁は人間的機械論を提唱する横光の文章表現の延長か」

ちょっと小難しいようなテーマですが、ようは『機械』の装丁者は佐野繁次郎となっているが、本当にそうなのだろうか、という疑問を解いていく、ミステリーのような話です。かっこよく言うと、論証するんですね。この話は1月末に刊行予定の「本の手帳」6号に…

私が日本史に強いわけではないが、なぜか献本された本が2冊とも日本史関連の本だった。そのうちの1冊は「歴史の必然性に迫る最高峰の講義で“日本史に野島あり”と評され、駿台予備学校において“日本史に野島あり”といわれたる超実力講師!」がキャッチフレーズの野島博之氏から『日本史テキスト』を贈られた。日本史の出版物でご一緒することになり、少し勉強しなさいと言うことなのかな?

野島博之『日本史テキスト』(山川出版、2008年) 野島氏については、『謎とき日本近現代史』(現代新書、1998年、定価(税込):735円)で知っていたので、お会いできるのが嬉しかった。3時間近い打ち合わせも楽しい一時だった。おおらかで明るい感じの野島…

先日購入した、日本刀の鍔を象嵌したコーネル(角革)付の本に6時起きして初挑戦し、午後1時まで食事もしないで制作し、やっと完成させた。

改装する前の山岡荘八『織田信長』(講談社、1991年)カバー、装画:村上豊 初挑戦の刀の鍔を象嵌したコーネル付『織田信長』改装本 表紙の平に使用したのは、経師屋さんが使い古しの和装本をばらして、その和紙を張り合わせる練習でもしたのか、数枚貼合せ…

昨日アップした合本の表紙に貼ってあった中沢弘光の装画は大正3年5月1日に発行された『新小説』第19年5巻の「竹生島」であることがわかった。

装画:中沢弘光『新小説』(大正3年5月1日) 本文は、製本をばらして小説だけをまとめ、表紙には『新小説』の装画を切り取って合本の表紙に貼付けたようだ。しかし、ここに閉じられている本文は「白虹」のもののようだ。 この訳のわからない合本を購入しよう…

来週、桑沢デザイン研究所でゲスト講演を4コマ(6時間)やることになり、文庫本を布装上製本にメタモルフォーゼさせてみようと思っている。折角だから、ただ布装にするのではなく、ちょっと豪華に、表紙に日本刀の鍔(つば)を象嵌させてみたくなり、写真の鍔を購入してきた。

40人ほどのワークショップなので全員がこんなに豪華な表紙つくりに挑戦するとはとは思えないが、タイルやペンダントや壊れた時計など、あるいは木の枝を輪切りにして題簽にするなど、何か別のものを貼り込んでもらえるのではないかとの期待を込めての鍔の象…

明日11月26日は東京造形大学でのゲスト講演を2コマ(3時間)やってきます。内容は、「装丁は総合芸術」というテーマで、斎藤昌三の下手本の話や芥川龍之介の限定本『地獄変』など10冊ほどの特異な装丁本に関する蘊蓄を講義、そして、2コマ目では、文庫本の表紙をはぎ取り、布装上製本へとリニューアルさせ、この世に1点だけしかないオブジェとしての装丁へとメタモルフォーゼするのを実演する。

この準備に1ヶ月もかかってしまった。製本実演のリハーサルを繰り返し、資材や道具を揃え、更に料理の番組のように、時間を省略するためにノリが乾く時間を待っていられないので、途中途中の完成品を見せ、 その続きを作業するようにすると、いくつもの途中…

装丁:恩地孝四郎、小松耕輔『西洋音楽の知識』(アルス、昭和4年)は、一氏義明『西洋美術の知識』とシリーズなので同じ装丁だろうと思い込んでいたが、2冊並べてみたら、ぜんぜん違う装丁だった。函つきで500円と安かったので、裸本と買い換えるつもりで購入してきたのだが、思いがけず見事な装丁を手に入れる事がfできてこんな嬉しい事はない。『西洋音楽の知識』『西洋美術の知識』は恩地の装丁の中でも大好きな5冊の装丁にはいり、添い寝したくなるほど大好きな「添い寝本」だ。

装丁:恩地孝四郎、小松耕輔『西洋音楽の知識』(アルス、昭和4年) 装丁:恩地孝四郎、一氏義明『西洋美術の知識』(アルス、昭和4年) 前衛美術の影響を取り入れた見事な装丁で、まさに「装丁は時代を映す鏡だ」の言葉通りの、美術史とも連動する貴重な装…

吉川英治『神州天馬侠』は大正14年から昭和3年に「少年倶楽部」に掲載され、山口将吉郎の正確で精密な挿絵と共に人気を博した。お家再興を願って山に立てこもる信玄の孫伊都丸と、大鷲の背に乗って自由に空を飛ぶことが出来る竹童の話だが、戦後に刊行された栗林正幸が挿絵を描いているポプラ社刊『神州天馬侠』を見つけた。

この2冊の中から全く同じシーンを描いた絵を見つけて並べてみたら面白いのではないか、とおもい、チョット意地が悪いかも知れませんが、探してみた。 挿絵:山口将吉郎、吉川英治『神州天馬侠 多宝塔』(「少年倶楽部」大正14〜昭和3年) 挿絵:栗林正幸、吉…

『天平童子』といえば伊藤彦造が描いた挿絵が印象に残っている。だが、先日、吉祥寺に行った時に『天平童子』上、下(ホプラ社、昭和30年)を購入。あの伊藤彦造が戦前『少年倶楽部』(昭和12〜14年)に描いた厳しい顔の天平童子に比べると、どことなく優しくなっているが、なぜ?

挿絵:伊藤彦造、吉川英治「天平童子」(『少年倶楽部』昭和12〜14年) 挿絵:伊藤彦造、吉川英治「天平童子」(『少年倶楽部』昭和12〜14年) 挿絵:土村正寿、吉川英治『天平童子』前編表紙(ポプラ社、昭和30年) 挿絵:土村正寿、吉川英治『天平童子』後…

「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしてゐる。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。」で始まる夏目漱石『坊ちゃん』のキャラクターを最初に決めたのはだれだろうか?

挿絵:細木原青起、(『名作挿絵全集』第二巻「夏目漱石作 坊ちゃん」、平凡社、昭和10年) 栗を盗みに来た勘太郎を捕まえた。 挿絵:細木原青起、(『名作挿絵全集』第二巻「夏目漱石作 坊ちゃん」、平凡社、昭和10年) 四国の中学校に赴任し、先生たちのあ…

かつて、小磯良平が描いた図鑑を持っているといって写真を送ってきた某大学のO教授からまたも「自慢……」として、6点の写真が送られてきた。『日本草本植物根系図説』(平凡社、1996年)と『日本の野鳥羽根図鑑』(世界文化社、1995年)がその図鑑だ。

絵:小磯良平 清水武美、梅林正芳『日本草本植物根系図説』(平凡社、1996年) 清水武美、梅林正芳『日本草本植物根系図説』(平凡社、1996年) 清水武美、梅林正芳『日本草本植物根系図説』(平凡社、1996年) かなりマニアックな図鑑なので、いずれの図鑑…

村越三千男(1872-1948)の没後に刊行され事実上最後の出版物となった『原色植物大図鑑』全5巻(誠文堂新光社、昭和30年10月)には、あのいがみ合う敵対関係にあった牧野富太郎が、補筆改訂を買って出ている。牧野が見せた村越への感謝の気持ちだったのだろうか、牧野の人間性の一端がうかがわれるようないい話ではないですか。素直に口には出せない男の友情ですね。

『原色植物大図鑑』第1巻(誠文堂新光社、昭和30年10月) 巻頭には牧野富太郎が「補筆改訂に際して」という一文を寄せているので、転載して見よう。 「植物に関する図鑑書は現在迄に多数刊行されているが、本書は世界各国に産する植物を網羅した点において、…

関越自動車道の水上ICから藤原湖、奈良俣湖へ

東京はまだ紅葉にはなっていないが、水上紅葉峡、照葉峡、藤原湖、奈良俣湖、奥利根水源の森、坤六峠、片品吹割り、老神温泉、昭和ICと、ドライブでひと足お先に紅葉狩りにいってきました。奥利根水源の森では既に落葉していて冬景色になっていました。奥利…

もう1冊、動物の細密画集。岡崎立『岡崎立作品集 鳥百態』(山と渓谷社、1988年)もすごい描写力だ。これは図鑑ではなく生態画と呼ぶ画集であり、表現でもある、という。

岡崎立『岡崎立作品集 鳥百態』(山と渓谷社、1988年) 岡崎立『岡崎立作品集 鳥百態』(山と渓谷社、1988年) このヤマセミ1枚を見ただけで、度肝を抜かれた人も多いのではないでしょうか。まるで生きているかのようで、そのうちに飛び立つのではないかとさ…

絵/松岡達英、文/塩野米松『野外探検大図鑑』(小学館、1999年)は最も気に入っている図鑑の1冊です。まず、どの頁を開いても絵が素晴らしくいい。そして、見せ方や展開のし方が親切で見事なので、部屋の中で読んでいるうちに、この本を持って野外に飛びだしたくなること請け合いです。

絵/松岡達英、文/塩野米松『野外探検大図鑑』(小学館、1999年) 絵/松岡達英、文/塩野米松『野外探検大図鑑』(小学館、1999年) 絵/松岡達英、文/塩野米松『野外探検大図鑑』(小学館、1999年) BBE-PAL誌上でウェークエンド・ナチュラリストを連載してい…

アンドリュー・シェヴァリエ『世界薬用植物百科事典』(誠文堂新光社、2000年)

この本もレイアウトのすごさに魅せられて、つい購入してしまったもの。どうです、この大胆なレイアウトは。お好みの水彩画ではなく、写真を使っている図鑑ではあるが、美しさは一押しです。 アンドリュー・シェヴァリエ『世界薬用植物百科事典』(誠文堂新光…

"TREES AND SHRUBS OF BRITAIN"(リーダーズダイジェスト、1981)この本は、25年ほど前に購入したものだが、挿絵のレベルといい、レイアウトといい、ゾッコンほれ込んで購入した。

"TREES AND SHRUBS OF BRITAIN"(リーダーズダイジェスト、1981)coverpainted by Shirley Felts 函 この本を購入した頃には、この本をまねして水彩画を自己流で描いていた。当時小学生だった息子の友だちが遊びに来たときに、キンニクマンやドラゴンボールを…

植物画集や動物画集が好きで、昔から集めていた生物図鑑のようなものがたくさんある。全12巻等の場所取り図鑑もあり、実際には毎日のように取り出すわけでもなく、普段は何の役にも立たない本が書棚を陣取っている。

そんな本の虫干しのためにも、取り出して、お気に入り図鑑を何冊か紹介しよう。 牧野四子吉『牧野四子吉生物画集』(講談社、昭和61年)函 牧野四子吉『牧野四子吉生物画集』(講談社、昭和61年)本文より 牧野四子吉『牧野四子吉生物画集』(講談社、昭和61…

今週は毎朝8時頃から撮影をやって、そのデータを持って午後からの出勤です。

写真は雑誌の表紙12月分です。 「音のでる楽譜 ジングルベル」壁にかけて、神社の鈴のようにヒモを引っ張ると、リン、リン、ジャンと鳴る仕掛けになっています。 写真は卓上カレンダー12月分です。 5人ものサンタクロースがソリに乗っています。船頭多くして…

講演依頼が続々舞い込む

「図書設計」「本の手帳」などに、マジな原稿をコツコツ地味に書いていることが少しは認められたのだろうか、 11月26日は東京造形大学で「モノ作り」について講演180分 12月9日は桑沢デザイン研究所で「製本史講演と製本実演」180分 12月18日は早稲田大学文…

三好十郎没後50年記念誌編集委員会編『劇作家 三好十郎』(書肆草茫々、2008年10月、B5判、332頁、定価1,500円)が届いた。私も400字詰め原稿用紙30枚分も書いた。テーマは「桜井書店と三好十郎の本」。

三好十郎没後50年記念誌編集委員会編『劇作家 三好十郎』(書肆草茫々、2008年10月)装丁:高栖謙、装画:三好十郎 装丁家である私に、装丁ではなく執筆だけの依頼が来るとは? 「本の手帳」の寄稿者でもある創言社・坂口博さんの紹介によるものだが、坂口さ…

来年のカレンダーの準備を今ごろ進めています。

写真は、リビングを陣取り、撮影の出番を待つ「小枝の妖精たち」。オブジェ台の左右寸法が50cmあるので、大きさがどんなものかわかるでしょう。人形の背の高さは15〜20cmです。 今年は、卓上用の他に壁掛け用のカレンダーも作るので、合計18のオブジェを用意…

白黒の線画を、カラーの絵に仕上げてしまうのは、それはそれで才能かも知れませんね。

間違いなく、他人の図鑑をもとにしていたのだろう。それはそれとして、白黒の線画で描かれた絵をカラーで再現していたとしたら、それはそれで一つの才能ではないだろうか。そう思ってさっそく村越三千男『内外植物原色大図鑑』(植物原色大図鑑刊行会、昭和8…

他人が調べた話の紹介だけでは、面子がなくなるので、独自のデータを探してみた。斎田・佐藤『最新図説内外植物誌』からそれらしい植物を探し、同じ名前のものを村越三千男『図説植物事典』からも探してみた。すると左右入れ替えたり、実を外して仕舞ったりしているが『最新図説内外植物誌』シマタコノキと、村越三千男『図説植物事典』のタコノキがよく似た絵であることがわかる。

斎田・佐藤『最新図説内外植物誌』(大日本図書、大正6年) 村越三千男『図説植物事典』(中文館書店、昭和13年) カニサボテンを調べてみると、やはりよく似ている。素人の私が、次々に見つけることが出来るのだから、かなりの確立で、他の図鑑を参照にして…

村上三千男の絵のオリジナリティを検証する

その辺に興味を持った俵浩三『牧野植物図鑑の謎』(平凡社新書、1999年)では、興味深く追及しているので、一読をお勧めします。 俵浩三『牧野植物図鑑の謎』(平凡社新書、1999年) キャプションには「図27.ユリノキ中央の村越「続野外植物の研究」(1907)…

「余が植物分類に関する図書の編著に着手してより本年に至り満三十年を費やし、既に人生の四分の三に達する歳月を終始一貫、家名を忘れ、家政を顧みず全く自己の趣味から前心身を植物の採集に、写生に費消し、同時に他方に於て其の浅学をも顧みず、それが記録編集に従事しつつ、今日にいたったのである。」と村上三千男『図説植物辞典』(中文館書店、昭和13年)の自序にあるように、博物学研究会の名前で刊行した『普通植物図譜』全五巻(参文舎他 、明治40年)を皮切りに、多くの植物図鑑等の制作に携わってきた。その間、牧野富太郎との間に

村上三千男『図説植物辞典』(中文館書店、昭和13年) この『図説植物辞典』には6000点に及ぶ内外の植物が図版とともに掲載されている。単純には6000種もの植物を観たということに驚くが、それをみな精密な絵にしているということに更に驚かされる。現実には…

図鑑ではないが、ジャネット・マーシュ著、大庭みな子訳『水辺の絵日記』(TBSブリタニカ、1986年)は、水彩画のみごとさに魅せられて20年ほど前に購入した本だが、今でもお気に入りの1冊だ。

開高健の刊行の言葉には「人と木はたがいに生かしあわねばならない。すでにきられて紙になってしまった木は、それに見あうだけの事物につくりかえられねばなるまい。……これらは、鳥獣虫魚についての、心の純正食品となるはずの、記録であり、讃歌である。昨…