繊細な花ビラの紫色が典雅な平福百穂:画『歌集 紫草』

住宅地の生け垣などでよく見かける、繊細な感じの花ビラの紫色がひときわ典雅で印象的な花、クレマチスは、中国原産の「テッセン」、日本原産の「カザグルマ」などと、西洋種が交配された園芸種の総称だ。「鉄線」は細いが針金のような強いつるから、その名がついた。日本原産の「風車」は、その名の如く花の形が風車に似ている。どちらの花もよく似ているが、よく見ると鉄線の花びらは6枚、風車は8枚。クレマチスのパッと開いて華やかに見える花びらは、実は「がく」が変化したもので花びらではないらしい。


 ヨーロッパでは、乞食がこのつるを使って体を傷つけ、憐れみをさそったことから、「たくらみ」という花言葉がつけられたといわれている。



平福百穂:画、今井邦子『歌集 紫草』(岩波書店昭和6年10月)。
平福百穂(1877〈明治10〉- 1933〈昭和8〉年)は、自然主義的写生画を目指す日本画家で、昭和初期には数少ない日本画系の装丁・挿絵画家としても活躍した。アララギ派歌人としても活動し、歌集「寒竹」(古今書院昭和2年)を残している。