2013-01-01から1年間の記事一覧

長塚節『土』鳳仙花は 寒村を象徴する花なのか

生命力の強い花なのか道端でもよく見かける鳳仙花(ホウセンカ)は、赤い花が印象的だが、熟して自然に弾ける寸前となった果実は指で触るだけでも容易に弾けるのが楽しくて、パチン、パチンと弾けさせた記憶のほうが強い。まるで小さな動物が逃げ出す瞬間の…

ジョバンニとともに銀河鉄道に乗り込む同級生もカムパネルラ

ホタルブクロの名前の由来は、かつて火垂(ほたる)と呼ばれていた提灯(ちょうちん)に似ているからという説がある。「あめふり」とも呼ばれ、その名の通り、この花が咲き出したら、空梅雨(からつゆ)といわれていた東京にも雨が降り出した。そんなだから…

不名誉な名前を付けられ可愛そうなヘクソカズラ

不名誉な名前を付けられ可愛そうなヘクソカズラ (屁糞葛)だが、葉を揉んで臭いをかげば納得せざるを得ない。臭そうな名とは異なり、薮の中に隠れるように咲く小さなその花はよく見ると可憐で輝くように美しい。 この気の毒な名前は、ひとえに悪臭のせいだ。…

木村荘八展で講演します

7月13日〜8月25日に開催される春陽会第90回記念「生誕120年 木村荘八展」(於:小杉放庵記念日光美術館)のフライヤー(チラシ)が届いた。 8月24日(土)14:00〜に開催される講演会の依頼を受け「絵で綴る文学 木村荘八の挿絵と装丁」というテーマで2時間…

2000羽もの蝶が描かれているという藤島武二のスケッチ「蝶供養」

ツマグロヒョウモンは、有毒の蝶・カバマダラに擬態しているとされ、優雅にひらひらと舞う姿も似ているという。ただしカバマダラは日本では非常に珍しく、擬態として機能していないのではないかといわれている。 雄の翅の表側はヒョウモンチョウ類に典型的な…

高いところに咲く朴の花をモチーフにした深澤紅子:装画『辺境の食卓

朴葉には芳香・殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われる。また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く信州名物『朴葉味噌』を焼く時使うことでも知られている朴葉だが、こんなに見事な大輪の花が咲く…

イチジクをモチーフにした杉浦非水:装幀、「日曜画報」

エデンの園で禁断の果実を食べたあのアダムとイブが、自分たちは裸であることに気づいて、裸を隠すのに使ったのがいちぢくの葉で作った腰ミノです。 いちじくは花を咲かせずに実をつけるように見えるので「無花果」と書くが、花がないわけではない。果実を半…

花と蝶をアールデコ調で表現した杉浦非水装幀『明治大正の国文学』

花と蝶というとバラの花にクロアゲハなど陰湿なイメージがあるでしょうが、今回はオカトラノオという花を接写で撮影していたらドンピシャリのシャッターチャンスに「私をみてね」とばかりにシジミチョウが飛び込んできてくれた。この2ヶ月間、リハビリ散歩を…

内藤八房トウガラシを装幀に取り入れた椿貞夫装幀『生命に役立つ為に

事務所があるマンション入り口の花壇にトウガラシが植えられ、看板にはウンチクが。 「その昔江戸時代の内藤新宿一帯は秋になると内藤藩の栽培するとうがらし(上を向いて実る八房という品種)で赤いじゅうたんが敷かれたような光景が見られたそうです。 七…

万葉集の朝顔は今日の朝顔とは違う

朝顔を題材にした歌は昔から沢山あり、お爺さんが風流な人だったのか、 朝顔に つるべ取られて もらひ水(加賀千代女) を小学生の時に母の実家に行って本当に体験し、一晩で朝顔の蔦が延びる早さと、それを見つめるお爺さんの姿に感激した思い出がある。 朝…

♪う〜のはなの♪の卯の花が、うつぎだったとは。不覚!

♪卯(う)の花の、匂う垣根に時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて〜 しのび音もらす 夏は来ぬ♪(佐々木信綱作詞・小山作之助作曲「夏は来ぬ」)の「うのはな」とは、おからを使った料理で、垣根の向こうから美味しそうな香りがして、ホトトギスが「♪東京・特許・許…

こぬか雨のなかでみる馬鈴薯の花がたまらなく好き

馬鈴薯の うす紫の花に降る 雨を思へり 都の雨に 石川啄木(1886-1912年)(『一握の砂』〔1910年〕所収) 小学生の時に、叔父にこの歌を聞かされ「馬鈴薯」という言葉を知った。それ以来、こぬか雨のなかでみる馬鈴薯の花がたまらなく好きになった。 啄木に…

華岡青州が乳がんの全身麻酔の手術に用いた曼陀羅華

華岡青州(1760〜1835)は、世界で始めて全身麻酔薬を創製して乳がん手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた江戸後期紀州の外科医として知られる。乳がんの全身麻酔の手術に用いたという曼陀羅華(まんだらげ)は、チョウセンアサガオの葉…

今が食べごろのトウモロコシをモチーフにした芹澤?介:画、吉田十四

トウモロコシといえば「それを作れば彼が来る」とささやく声が聞こえて、トウモロコシ畑を切り開き、小さな野球場を作り上げる『フィールド・オブ・ドリームス』を思い浮かべる。アメリカ映画の中では深く記憶に残る映画だ。な〜んて気取ってみたが、この季…

水玉

久しぶりの雨の中を散歩して、嬉しい水たまりを見つけた。

初夏を代表する凉げな和菓子にアジサイの葉に載せた水ようかんがある。わが家のベランダにも鉢植えのアジサイが満開で、葉っぱだけはいつでも用意してあるのだが…。このアジサイの葉、実は古くから青酸配糖体が含まれ毒性があるとされている。八丈小島に生息…

太田文平『寺田寅彦』表紙絵のモチーフはなぜビワなのか?

数年前に食べた枇杷(ビワ)の種を鉢に蒔いたのが40〜50cmに育ってきた。枇杷は成長が遅く、「桃栗三年 柿八年 枇杷は早くて十三年」といわれる。が、私は「柚子の大馬鹿18年」と教わった。購入すると高価な枇杷の実だが、最近は公園の片隅などにたわわに実…

挿絵雑誌「えくらん」創刊号〜5号が届く

挿絵雑誌「えくらん」創刊号〜5号(えくらん社、昭和34年〜35年)が届いた。 創刊号は当時の人気挿絵を並べて掲載しているだけだったが、号を追うごとに企画も充実し、管見する限り5号以降をみたことがないので、5号で休刊になってしまったのではないかと思…

竹の根になって屋敷に入り込む前田夕暮『草木祭』

実家の山小屋の建屋から30mほど離れたところに竹やぶがあり、ちょっと油断をしているとこの竹やぶがドンドン建屋に迫ってくるので、毎年タケノコとの領地侵犯をめぐっての攻防が大変だと母が嘆く。 前田夕暮は「私は竹である」で、母の宿敵である竹の根にな…

花咲くことを封じられてゐる羊歯が好き、前田夕暮『草木祭』

昨年入院していた病院の窓から、借景の森に私の腰くらいの丈の羊歯(しだ)の群生が見え、太古にタイムスリップしたような気分になれて、この窓辺で眺めるのが楽しみだった。羊歯は花も種子もなく繁殖するため、欧米では古くから魔法の草とされ、繁栄と長寿…

オオバコは「炎天下にかつ干されてゐても平氣らしいのが小憎らしい。

幼い頃、花穂を根もとから引き抜き、二つ折りにして二人で互いに引っかけあって引っ張り、どちらが切れないかを競って遊んだなつかしい思いでのある「おおばこ(車前草)」。なぜかよく踏み固められた場所を好んで根を張る。 加藤新:絵、真船和夫:文『おお…

芭蕉は「象潟や雨に西施がねぶの花」(西施は絶世の美女)と、雨に濡れたねむの花を絶世の美女にたとえその美しさを讃えた。先端を紅色に染めた長く繊細な雄しべは優雅で美しく女性的な魅力を秘めている。ねむの木のもう一つの魅力は、寝たり醒めたりお辞儀…

麦の穂を描いた木村荘八:画、水原秋桜子『朧夜』

こののどかな風景は新宿から電車でわずか26分の田無にある東京ドーム約5個分という東大付属農場の麦秋。麦秋という言葉は、絵を描いている母から中学生の頃に初めて教えてもらった。秋みたいな絵だねというと、「初夏の頃に、麦の穂が実り畑が黄金色に輝く刈…

津田清風:画、夏目漱石『道草』袖珍本の絵はボタンなのか芍薬なのか

「牡丹餅」(ぼたもち)と「おはぎ」は同じものだが、牡丹の咲く彼岸(春の彼岸)に食するのをぼたもち、萩の咲く秋の彼岸に食するのをおはぎとよぶ。では牡丹と芍薬(しゃくやく)はどうやって違いを見分けるのか? どちらも同科同属で美人に例えられるし………

清水良雄:画「赤い鳥」表紙のトチノキの木陰が涼しそう

トチノキとホウノキは、どちらの葉も時には40〜50cmくらいになり、枝の先端部分に5〜7枚の葉を手を広げたように付ける。その葉は共に山一番に大きく目立ち良く似ていて間違いやすい。生活との関連では栃餅(とちもち)しか思いだせないが、マロニエと呼ばれ…

小穴隆一:画、芥川龍之介『侏儒の言葉』の表紙は相互尊敬の象徴!

散歩はいつも午後3時頃に出かける事にしていたが、午後では花に元気がないので、今日は「あまちゃん」を見てすぐに近所の住宅街へ出かけた。ムラサキツユクサ、ヒルガオ等がみずみずしい花を咲かせていたので、2時間で200枚も撮影した。塀に咲き乱れるルリマ…

本日最大の掘り出し物『八十日間世界一周』

3ヶ月に一度の歯科定期検診に銀座まで行き、帰路途中で古書市・古書店をはしごした。神保町では堀田滿『植物の生活誌』(平凡社、昭和55年、写真右)、居初庫太『花の歳時記』(淡交新社、昭和43年、写真左)、『四季の草花図鑑500』(主婦の友社、平成8年)…

加藤まさを:画/著『遠い薔薇』は装幀に薔薇の花を配した数少ない本

日本はバラの自生地として世界的に有名で、品種改良に使用された原種のうち3種類(ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナシ)は日本原産なのだそうで、江戸末期には、西洋バラも盛んに栽培されるようになったという。 「バラが咲いた」や「百万本のバラ」など大…

中川一政:画『美しい季節』のすかんぽの絵は誰でも描けそうだが

スカンポ(酸模)はスイバ(酸葉)ともいう。いずれも漢字を見ただけでちょっと酸味のある植物であることがわかる。子どもの頃に繊維質の茎の部分をしゃぶって酸っぱさを楽しんだ。そんな時はきまって、北原白秋作詞・山田耕筰作曲「酸模(すかんぽ)の咲く頃…

宮沢賢治『春と修羅』表紙に描かれているはタンポポ?

広川松五郎:画、宮沢賢治『春と修羅』(関根書店、大正13年4月)に描かれている植物はずっとタンポポだと思っていたが、文献資料によるとどうもアザミのようだ。 『春と修羅』の出版にあたって、賢治とは義理の兄弟にあたる関登久也(本名、岩田徳弥)が奔…