2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

イチジクをモチーフにした杉浦非水:装幀、「日曜画報」

エデンの園で禁断の果実を食べたあのアダムとイブが、自分たちは裸であることに気づいて、裸を隠すのに使ったのがいちぢくの葉で作った腰ミノです。 いちじくは花を咲かせずに実をつけるように見えるので「無花果」と書くが、花がないわけではない。果実を半…

花と蝶をアールデコ調で表現した杉浦非水装幀『明治大正の国文学』

花と蝶というとバラの花にクロアゲハなど陰湿なイメージがあるでしょうが、今回はオカトラノオという花を接写で撮影していたらドンピシャリのシャッターチャンスに「私をみてね」とばかりにシジミチョウが飛び込んできてくれた。この2ヶ月間、リハビリ散歩を…

内藤八房トウガラシを装幀に取り入れた椿貞夫装幀『生命に役立つ為に

事務所があるマンション入り口の花壇にトウガラシが植えられ、看板にはウンチクが。 「その昔江戸時代の内藤新宿一帯は秋になると内藤藩の栽培するとうがらし(上を向いて実る八房という品種)で赤いじゅうたんが敷かれたような光景が見られたそうです。 七…

万葉集の朝顔は今日の朝顔とは違う

朝顔を題材にした歌は昔から沢山あり、お爺さんが風流な人だったのか、 朝顔に つるべ取られて もらひ水(加賀千代女) を小学生の時に母の実家に行って本当に体験し、一晩で朝顔の蔦が延びる早さと、それを見つめるお爺さんの姿に感激した思い出がある。 朝…

♪う〜のはなの♪の卯の花が、うつぎだったとは。不覚!

♪卯(う)の花の、匂う垣根に時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて〜 しのび音もらす 夏は来ぬ♪(佐々木信綱作詞・小山作之助作曲「夏は来ぬ」)の「うのはな」とは、おからを使った料理で、垣根の向こうから美味しそうな香りがして、ホトトギスが「♪東京・特許・許…

こぬか雨のなかでみる馬鈴薯の花がたまらなく好き

馬鈴薯の うす紫の花に降る 雨を思へり 都の雨に 石川啄木(1886-1912年)(『一握の砂』〔1910年〕所収) 小学生の時に、叔父にこの歌を聞かされ「馬鈴薯」という言葉を知った。それ以来、こぬか雨のなかでみる馬鈴薯の花がたまらなく好きになった。 啄木に…

華岡青州が乳がんの全身麻酔の手術に用いた曼陀羅華

華岡青州(1760〜1835)は、世界で始めて全身麻酔薬を創製して乳がん手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた江戸後期紀州の外科医として知られる。乳がんの全身麻酔の手術に用いたという曼陀羅華(まんだらげ)は、チョウセンアサガオの葉…

今が食べごろのトウモロコシをモチーフにした芹澤?介:画、吉田十四

トウモロコシといえば「それを作れば彼が来る」とささやく声が聞こえて、トウモロコシ畑を切り開き、小さな野球場を作り上げる『フィールド・オブ・ドリームス』を思い浮かべる。アメリカ映画の中では深く記憶に残る映画だ。な〜んて気取ってみたが、この季…

水玉

久しぶりの雨の中を散歩して、嬉しい水たまりを見つけた。

初夏を代表する凉げな和菓子にアジサイの葉に載せた水ようかんがある。わが家のベランダにも鉢植えのアジサイが満開で、葉っぱだけはいつでも用意してあるのだが…。このアジサイの葉、実は古くから青酸配糖体が含まれ毒性があるとされている。八丈小島に生息…

太田文平『寺田寅彦』表紙絵のモチーフはなぜビワなのか?

数年前に食べた枇杷(ビワ)の種を鉢に蒔いたのが40〜50cmに育ってきた。枇杷は成長が遅く、「桃栗三年 柿八年 枇杷は早くて十三年」といわれる。が、私は「柚子の大馬鹿18年」と教わった。購入すると高価な枇杷の実だが、最近は公園の片隅などにたわわに実…

挿絵雑誌「えくらん」創刊号〜5号が届く

挿絵雑誌「えくらん」創刊号〜5号(えくらん社、昭和34年〜35年)が届いた。 創刊号は当時の人気挿絵を並べて掲載しているだけだったが、号を追うごとに企画も充実し、管見する限り5号以降をみたことがないので、5号で休刊になってしまったのではないかと思…

竹の根になって屋敷に入り込む前田夕暮『草木祭』

実家の山小屋の建屋から30mほど離れたところに竹やぶがあり、ちょっと油断をしているとこの竹やぶがドンドン建屋に迫ってくるので、毎年タケノコとの領地侵犯をめぐっての攻防が大変だと母が嘆く。 前田夕暮は「私は竹である」で、母の宿敵である竹の根にな…

花咲くことを封じられてゐる羊歯が好き、前田夕暮『草木祭』

昨年入院していた病院の窓から、借景の森に私の腰くらいの丈の羊歯(しだ)の群生が見え、太古にタイムスリップしたような気分になれて、この窓辺で眺めるのが楽しみだった。羊歯は花も種子もなく繁殖するため、欧米では古くから魔法の草とされ、繁栄と長寿…

オオバコは「炎天下にかつ干されてゐても平氣らしいのが小憎らしい。

幼い頃、花穂を根もとから引き抜き、二つ折りにして二人で互いに引っかけあって引っ張り、どちらが切れないかを競って遊んだなつかしい思いでのある「おおばこ(車前草)」。なぜかよく踏み固められた場所を好んで根を張る。 加藤新:絵、真船和夫:文『おお…

芭蕉は「象潟や雨に西施がねぶの花」(西施は絶世の美女)と、雨に濡れたねむの花を絶世の美女にたとえその美しさを讃えた。先端を紅色に染めた長く繊細な雄しべは優雅で美しく女性的な魅力を秘めている。ねむの木のもう一つの魅力は、寝たり醒めたりお辞儀…

麦の穂を描いた木村荘八:画、水原秋桜子『朧夜』

こののどかな風景は新宿から電車でわずか26分の田無にある東京ドーム約5個分という東大付属農場の麦秋。麦秋という言葉は、絵を描いている母から中学生の頃に初めて教えてもらった。秋みたいな絵だねというと、「初夏の頃に、麦の穂が実り畑が黄金色に輝く刈…