村上三千男の絵のオリジナリティを検証する

その辺に興味を持った俵浩三『牧野植物図鑑の謎』(平凡社新書、1999年)では、興味深く追及しているので、一読をお勧めします。



俵浩三『牧野植物図鑑の謎』(平凡社新書、1999年)
キャプションには「図27.ユリノキ中央の村越「続野外植物の研究」(1907)は、左の矢田部「日本植物編」(1900)を左右反対にして簡略化したらしい。実際は右の斎田・佐藤「最新図説内外植物誌」(1917)のような花である。」とあり、俵は村越の絵について「花の特徴をとらえておらず、奇異な印象をうける。ユリノキは明治になってアメリカから導入した外来樹種だから、日本に植えられた木は、当時はまだ若くて花をつけず、村越は実際の花を観察できなかったかもしれない。」と断罪している。



俵浩三『牧野植物図鑑の謎』(平凡社新書、1999年)
キャプション「図28.カナダバルサムノキ、左は村越「大植物図鑑」(1925)、右は斎田・佐藤「内外実用植物図説」(1907)。」とあり、「カナダバルサムノキは、その樹脂が顕微鏡のプレパラートづくりに欠かせない材料だったので、昭和戦前までの中学生は理科実験で名前を知っていた木であるが、村越『大植物図鑑』(1925)のカナダバルサムノキは、斎田・佐藤『内外実用植物図説』(1907)の図とそっくりである。」と、ここでも村越が、他の辞典の絵を参照にしていることを指摘している。


私もカナダバルサムノキを村上三千男『図説植物辞典』と斎田・佐藤「最新図説内外植物誌」の中に見つけた。

村上三千男『図説植物辞典』(中文館書店、昭和13年



斎田功太郎・佐藤礼助「最新図説内外植物誌」(大日本図書、1917年)