加藤まさを:画/著『遠い薔薇』は装幀に薔薇の花を配した数少ない本

 日本はバラの自生地として世界的に有名で、品種改良に使用された原種のうち3種類(ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナシ)は日本原産なのだそうで、江戸末期には、西洋バラも盛んに栽培されるようになったという。


「バラが咲いた」や「百万本のバラ」など大ヒットした薔薇の花の歌があるくらいだから、日本人はみんなバラが好きなはずだ。が、架蔵書で見る限りバラの花の表紙の本は以外と少ない。そんな中、加藤まさを:画/著『遠い薔薇』(春陽堂、大正15年)は装幀に薔薇の花を大胆に配した数少ない本だ。

加藤まさを:画/著『遠い薔薇』(春陽堂、底本大正15年、国書刊行会昭和58年復刻版)


 加藤まさを(1897-1977年)は、少女に圧倒的な人気を得た大正時代の代表的な抒情画家だが、童謡「月の沙漠」の作詞者としても知られている。「遠い薔薇」「薔薇色の手紙」「萎れた薔薇」「薔薇と真珠」「時間表の白薔薇」など、薔薇のつく小説や詩を多数発表しており、薔薇をこよなく愛していたことが伺える。