2000羽もの蝶が描かれているという藤島武二のスケッチ「蝶供養」

ツマグロヒョウモンは、有毒の蝶・カバマダラに擬態しているとされ、優雅にひらひらと舞う姿も似ているという。ただしカバマダラは日本では非常に珍しく、擬態として機能していないのではないかといわれている。
 雄の翅の表側はヒョウモンチョウ類に典型的な豹柄で後翅の外縁が黒く縁取られるのが特徴なので、写真の蝶は雄のヒョウモンチョウではないかと思われる。


今まで昆虫にはあまり興味がなく、撮影中に偶然にファインダーに飛び込んできてくれたので撮影できた蝶をパソコンで拡大し、その美しさにただただ感激している。


 蝶は、アールヌーボー調のモチーフとして多くの美術家たちが、絵画・挿絵や金属・ガラスの装飾品として残している。日本美術から刺激を受けて誕生したアール・ヌーヴォーだが、逆輸入の形で日本にも影響を与え、橋口五葉による夏目漱石の『吾輩は猫である』など一連の本の装幀、藤島武二による与謝野晶子の歌集『みだれ髪』・雑誌『明星』の表紙などに影響が見られる。

藤島武二「蝶」(1904年)



島崎藤村若菜集』(春陽堂明治30年)、装幀者不明



中村不折:画、島崎藤村若菜集』(春陽堂明治30年


 写真は、2000羽もの蝶が描かれているという藤島武二のスケッチ「蝶供養」(1900年〜1906年頃)。「つまべにてふ」としてツマグロヒョウモンチョウの雌によく似た蝶も描かれている。