小穴隆一:画、芥川龍之介『侏儒の言葉』の表紙は相互尊敬の象徴!

散歩はいつも午後3時頃に出かける事にしていたが、午後では花に元気がないので、今日は「あまちゃん」を見てすぐに近所の住宅街へ出かけた。ムラサキツユクサヒルガオ等がみずみずしい花を咲かせていたので、2時間で200枚も撮影した。塀に咲き乱れるルリマツリ等を撮影していたら玄関から奥様が出て来てきて声をかけられた。「やばい!」怪しまれたかな? と思ったら、手入の行き届いた自慢の庭を案内してくれた。

ムラサキツユクサ


 小穴隆一:画、芥川龍之介侏儒の言葉』(文藝春秋社、昭和2年12月)の表紙には大胆な赤い地色にムラサキツユクサが描かれている。初出は「文芸春秋」創刊号の大正12年から3年間連載され、自殺(昭和2年7月)する2年前に打ち切られた。単行本は没後12月に遺稿として刊行された。ムラサキツユクサ花言葉は「尊敬しています」。小穴は「夜来の花」以降、龍之介の作品のほとんどの装幀を手がけ、龍之介の終生の友として行動を共にするほどに尊敬しあっており、その象徴ともいえる強烈な装幀だ。



 芥川は、小穴が『夜來の花』を装幀した時に、装幀料について新潮社支配人宛て「さて夜來の花の裝幀につき小澤小穴先生へなる可く早く御禮上げてくれませんか津田青楓には二十五圓とか云ふ事ですがなる可く御奮發下さい印税は菊池なぞ一割二分の由小生春陽堂では一割二分ですが『夜來の花』は一割でよろしいその代り兩先生の方へ御禮を少し餘計出して頂きたいと思ひます右とりあへず御願ひまで」
との手紙を送り、小穴に少しでも多くの御礼をするように、芥川自身の印税の「一分」減じてそれを小穴の支払にくわえるうようにという優しい心配りを見せている。

小穴隆一:画、芥川龍之介『夜來の花』(新潮社、大正10年)