長塚節『土』鳳仙花は 寒村を象徴する花なのか

生命力の強い花なのか道端でもよく見かける鳳仙花(ホウセンカ)は、赤い花が印象的だが、熟して自然に弾ける寸前となった果実は指で触るだけでも容易に弾けるのが楽しくて、パチン、パチンと弾けさせた記憶のほうが強い。まるで小さな動物が逃げ出す瞬間のような植物が動き出すという感触の意外性がもたらすちょっとした恐怖感が笑いをさそった。


 島倉千代子が歌っていた♪鳳仙花 鳳仙花 はじけてとんだ 花だけど 咲かせてほしいの あなたの胸で〜♪(作詞:吉岡治、作曲:市川昭介)もホウセンカのはじける特性を女心に例えたものだが、この歌を知っているとは、お歳がばれる!



 装画の画家が不明なのが残念ですが、長塚節『土』(春陽堂、明治45年)、明治44年「東京朝日」連載小説。明治時代の農民の物語で、鬼怒川のほとりの農村を舞台に、貧しい農民の暮しや四季の自然や村の風俗行事などを綿密に描写したものだが、なぜこの表紙に鳳仙花を選んだのか、鳳仙花は
寒村を象徴する花なのか、画家に問いたい。