こぬか雨のなかでみる馬鈴薯の花がたまらなく好き

馬鈴薯の うす紫の花に降る 雨を思へり 都の雨に
 石川啄木(1886-1912年)(『一握の砂』〔1910年〕所収)
小学生の時に、叔父にこの歌を聞かされ「馬鈴薯」という言葉を知った。それ以来、こぬか雨のなかでみる馬鈴薯の花がたまらなく好きになった。


啄木にとって、幼いころに見たうす紫の花に降る思いでの雨は、東京で見る悲しそうな雨よりはまだましでいい思い出だったのだろうか。死の2年前、生活が苦しい24才の時にうたった望郷の歌であり、切なさを感じる失意の歌だ。



谷本 雄治 (著), 鈴木 幸枝 (イラスト) 『バケツ畑で野菜づくり ジャガイモ』(フレーベル館、2003年)



牧野富太郎『植物一日一題』(博品社1998年)より。