オオバコは「炎天下にかつ干されてゐても平氣らしいのが小憎らしい。

幼い頃、花穂を根もとから引き抜き、二つ折りにして二人で互いに引っかけあって引っ張り、どちらが切れないかを競って遊んだなつかしい思いでのある「おおばこ(車前草)」。なぜかよく踏み固められた場所を好んで根を張る。



加藤新:絵、真船和夫:文『おおばことなかよし』(新日本出版社、1985年)



白根美代子:絵、菅原久夫:著『おおばこ』 (かがくのとも特製版、福音館書店、2004年)


そんなおおばこについて前田夕暮は、「わたしが草になるとしたら」に、「青い円葉の上に日の光のこぼれてゐるのをみると、鳥渡(ちょっと)心がひかれる、この草は唯一株丈でみる草だ。一株丈あればよい草だが、どうも埃っぽい連想があつて矢つ張り氣になる。……どうもその葉が少し重厚すぎ、無感覚すぎる。一日くらい水を吸はずに、炎天下にかつ干されてゐても平氣らしいのが小憎らしい。」(前田夕暮『草木祭』ジープ社、昭和26年)という感想を述べ「まあ、車前草になるのはやめるとしよう」と、この草になるほどには好きではないようだ。ではどんな草になりたいのか?

中川一政:画、前田夕暮『草木祭』(ジープ社、昭和26年)
 よく似た草花が沢山あり、細密に描かれた絵でもない限り花の絵のモチーフを特定するのは難しい。そんななか、装画のモチーフは葉の大きさや葉脈の方向等からシュウカイドウではないかと思われる。