2005-01-01から1年間の記事一覧

お気に入り広川松五郎装丁本

最近入手した広川松五郎の装丁本で最も気に入っているのが、大久保周八編集『巨人新人 普選代議士名演説集』(大日本雄辯會講談社、昭和3年5月)。巻頭の序には「……言論の力は、つひに勝てり矣。曾つては、おぞくも、黄白の前に光をうしなってゐた辯舌が、和…

大貫伸樹の造本探検隊39(書物展望社「扇」)

呉文炳『随筆 扇』(書物展望社、昭和15年)の本文用紙は、ちりめん紙が使われているのでははないかと思われる。雰囲気としては、レストランでフォークなどをくるんでいるあの皺(しわ)がある紙は、檀紙(だんし)というのだが、これによく似ている。 ちり…

広川松五郎の装丁

今まで、あまり紹介する機会がなかったが、広川松五郎の装丁を3〜4年間集めてきた。私の大好きな装丁家の一人である。 といっても、さほどたくさん所有しているわけではない。架蔵書一覧で確認すると25冊ほどあるので、少しずつ紹介していこうと思う。最も知…

大貫伸樹の造本探検隊37(「きょろろ鶯」)

ゲテ本とは打って変わって品のある装丁だが、これも書物展望社の出版物である。白山春邦装丁、北原白秋『きょろろ鶯』(書物展望社、昭和10年)と、木下杢太郎自著自装『雪櫚集』(書物展望社、昭和9年)は書物展望社の本の中でも格別に見事な装丁といえるだ…

大貫伸樹の造本探検隊36(「書物展望社本」)

仕事で水道橋に出かけたついでに、久しぶりに古書「玉晴」によってみた。何点か購入した中に、今村秀太郎『書物展望社本』(日本古書通信社、昭和46年)があった。今村の著というよりは編著である。 巻頭に斎藤昌三の「展望社の思ひ出、其他」と題する文が10…

大貫伸樹の続装丁探索35(書物展望社の本)

書棚を眺めていたら購入したことも忘れていた本、齋藤昌三『阿奈遠可志』(展望社、昭和43年)が出てきた。この本は、序文の日付から昭和35年5月に書かれたものであることがわかる。齋藤昌三は、昭和36年11月に肺気腫でなくなっているので、没後発行されたも…

大貫伸樹の続装丁探索34(書物展望社の本)

齋藤昌三が主宰する書物展望社は、「破れ番傘などを活用するゲテ装幀本などに凝って、廃物利用による奇抜な百二、三十種の本の装幀もやった。」(城一郎「齋藤昌三先生の業績」『限定本』3)とあるように、私が知らないゲテ本がまだまだあるらしい。 「書物…

これを読めばコラージュがわかる!

こんな作品に興味のある方は、チャールズ・シミック『コーネルの箱』(文芸春秋、2003年、定価2800縁+税)の一読をお進めします。

これでも本といえるのか?

絵本は絵をたくさん印刷して綴じたものだが、印刷した絵でなく、本物のコラージュ(貼り合わせ絵画)を綴じたものでも本であることには変わりないのではないか? という、「本とは何か?」との、本の定義そのものに根源的な疑問を突きつけた、実験的な意欲作…

コラージュの詰め込み

コラージュとは貼り合わせという意味です。今回の作品は、お歳暮に贈られた素麺の箱を利用して、貝殻や切手、豆、燐寸棒などを貼りこんだ外箱に,7枚のコラージュを詰め込んだもの。いわゆる廃品利用の典型的ゲテ本だ。厚手の和紙を使ったコラージュは屏風の…

ステンレスのケース

『MASTY SANTA]』(FORTYWINKS STUDIO、1986年)はステンレスのケースに入った本である。写真の右半分がその金属製の函だ。かつて、「書籍と金属は似あわない」といった書誌学者がいたが、書物も年々技術革新の波に洗われ金属の函くらいでは驚かなくなってし…

大貫伸樹の続装丁探索32(ステンレスの函 『NASTY SANTA』)

佐野繁次郎装丁、横光利一『時計』の表紙がアルミなのかジュラルミンなのかについては、まだ、はっきりと答えがでたわけではないが、そんな話はどうでもよくなるほどの本を見つけた。

金ぴか本で棺桶送り

かつて、泉鏡花だったか? 金ぴかの箔押しで飾られた自分の全集をみて、「まるで棺桶に入ったような気分だ」というようなことをいったらしいが、これは豪華限定本であるが、ゲテ本でろう。 棺桶に入ったような気分だけならまだしも、金ぴかの記念史を作った…

豪華本は長谷川巳之吉の造語

第一書房は、限定本書肆として知られており、「豪華本」ということばは社長・長谷川巳之吉の造語である。ゲテ本と豪華本と限定本は、明らかに違うものを意味しているように思われているが、実はかなり近い存在で、お互い境界線は曖昧かつ重なっているのでは…

背革は強くない

神保町をぶらぶらしていたら、普段立ち寄ることのない古書店の店頭にある均一台に、上田敏『上田敏詩集』改訂増補版(第一書房、大正14年)をみつけ、格安で購入してきた。この本は、すでに所有しているが、革が破損して、金箔押しの文字も剥がれ始めていた…

社員の証言

『銀魚部隊』の製作にかかわった女子社員の高野ひろこ氏の証言が『日本古書通信』第27巻(古書通信社、昭和37年)に掲載されていたので、引用させてもらおう。 「私が入社して間もなく出版された先生の著書に『銀魚部隊』があった。凝った装幀にかけては日本…

ナルシスト齋藤昌三は顔も自慢?

さらに「なほ金版を掛けた繪紙の一片や切手の類は、單調の表裝に多少の色彩を添えたものに過ぎない。」とあるが、いかにもとってつけてようにカラフルな千代紙のような切れっ端が貼ってあるのが、唐突で気になった。決して成功しているとは思えない。色を使…

友仙の型紙を使った装丁

齋藤昌三の第5随筆集となる『銀魚部隊』(書物展望社、昭和13年)も前作と同様に廃品を利用したゲテ本である。 巻頭の「序」には、「外裝は又かと思はるゝ如きものにした。友仙その他の型紙で、從って一冊毎に異なってゐるは勿論だが、見返しは一冊々々表紙…

ここにも漆塗りの本が! 

話をゲテ本に戻そう。漆塗りの表紙『春琴抄』は、さんざん酷評されたが、今回紹介する齋藤昌三『書淫行状記』(書物展望社、昭和10年)印刷500部、も漆塗りだが、あまり批判を耳にしていない。 「後記」には「今回も型は前二者に似せて、又新菊判にしたのは…

大貫伸樹の続装丁探索29(齋藤昌三『書淫行状記』)

8月の初めにインターネットで落穂舎に注文した『書淫行状記』が、20日ほど経った今日、何の音沙汰もなく届いた。もうあきらめていた本だったので、嬉しいのは嬉しいのだが、書店からは、前金制ですが、「日にちもたちましたので、本日発送いたします。お振込…

大貫伸樹の続装丁探索29(齋藤昌三『書痴の散歩』再登場)

先日、別のブログ「大貫伸樹の装丁探索、装丁探索其の四十二」で書いた大屋幸世『追悼雑誌あれこれ』のなかに、「古書通信」第214号(昭和37年2月)で齋藤昌三翁追悼特集号があると記されていたので、さっそく古書通信社の樽見さんに連絡を取ってバックナン…

白樺の樹皮を使った装丁

横光利一の本が、「続装丁探索」に登場するのは、『時計』に続いて二度目である。横光はゲテ本が好きなのだろうか? 『時計』の装丁の時に、横光はどの程度かかわったのか、気になる所だが、詳しいことはわかっていない。 今回紹介するのは、横光利一『雅歌…

かよわさが愛しさをいや増す 

架蔵書も一度オモテ表紙の真ん中から割れてしまった。私はさっそく、最初のイメージを損なわないように表紙の裏面に厚手の和紙を貼って補習した。もちろん皮の割れ目にも木工ボンドを流し込みしっかりと補習して、それと気ずかれないように丁寧に直した。そ…

頬擦りすれば心底癒される 

杉皮の選択は、本文中に「益荒男の雄ごころもちてわれゆきぬ杉そそり立つ大土佐の山」「大土佐の杉の輪見るほどにおのずからなる力湧き來ぬ」など杉を題材にした句があるが、これ等の句に因んでの選択ではないだろう。杉皮は、世俗を離れてひっそりと暮して…

杉皮装

知人の境田稔信さんが、古書市で「日本書房に杉皮の本があるの知ってる?」と教えてくれた。私は、直ぐに古書市を後にして、日本書房に向かいこの本を入手した。 おそらくこのような装丁は2度と出てこないだろうと思われるのが、吉井勇『わびずみの記』(政…

捨てるにはもったいない

斎藤昌三のいう、資材の再利用をしており、ゲテ本を地でいっている奇抜さとオリジナリティがある。それでいて、内容との深い関連性や、書物としての堅牢さなど、全く非の打ち所がない見事なまでに完成度の高い書物である。どの紙型にもその日の新聞の内容が…

資材の「紙型」とはどんな紙?

『印刷事典』(日本印刷学会、昭和34年)には、「紙型 鉛版を鋳造するために、紙型用紙を使い、組版その他を原型とし圧搾乾燥してつくった紙製の鋳型。」とある。この紙型に使う紙は、「紙型用紙 はり合わせ、あるいはすき合わせて紙型に適するようにした紙…

完ぺきなゲテ本

ゲテ本としては、余り注目されていないが、これぞゲテ本中のゲテ本を紹介します。『朝日新聞七十年小史」がその本。この本の函は、材料として新聞印刷用の紙型を使っている。「紙型」とは耳慣れない言葉だと思うが、活版印刷で新聞を印刷する時には必需品で…

朝イチで古書市へ

午前中、BIG BOXの古書市に行ってきました。 尾竹俊亮『尾竹国観伝』(まろうど社、1995年) 装丁:木下杢太郎/小宮豊隆『黄金虫』(小山書店、昭和17年第8刷) 装丁:河野鷹思/西條八十『西條八十詩謡全集』(千代田書院、昭和10年) 装丁:Tani/川本不…

ご質問について

コメントをありがとうございます。 林哲夫 『ところで、あの金属がアルミニウムだというのは間違いないんでしょうか?』 退屈男 『何も知らん者が脇から失礼します。『われらが古本大学』(天牛新一郎)の一〇〇ページの、矢部良策創元社社長との対談のなか…