広川松五郎の装丁

shinju-oonuki2005-09-26

 
今まで、あまり紹介する機会がなかったが、広川松五郎の装丁を3〜4年間集めてきた。私の大好きな装丁家の一人である。
といっても、さほどたくさん所有しているわけではない。架蔵書一覧で確認すると25冊ほどあるので、少しずつ紹介していこうと思う。

最も知られている松五郎の装丁は、宮沢賢治春と修羅』(関根書店、大正13年)だろう。
 
今日紹介するのは、先週、神保町・東京古書会館の古書市で300円で購入した与謝野晶子『優勝者となれ』(天来書房、昭和8年)である。美本なら25,000円〜35,000円で販売されているものだが、布が芯ボールから外れ、製本もぐずっていたので安かった。
 
それにしても300円は掘り出し物である。翌日は休日だったので、じっくり時間をかけて修復してあげた。完全ではないが、原装を崩さない程度の応急処置をしてなんとか元の姿になった。松五郎装丁の代表作とは言い難いが、木版画を原画としたもので、布に印刷したものと思われる。
 
この本は以前、雑誌広告で見た時は、昭和7年刊行となっていたが、購入した本は、奥付や前書きなどの日付はすべて昭和8年に訂正されている。発行に関しても何か複雑な事情があったようだ。なぜ、このようになってしまったのか? この辺も、コレクションが進めば解明するものと思われる。
 
広川松五郎は、東京美術学校(現芸大)の染色科の教授でありながら、見事な装丁をたくさん残している。歌人でもあり、学生の頃、与謝野晶子・鉄幹の師事し新詩社に入る。晶子・鉄幹が主宰する「冬柏」第三号(冬柏発行所、昭和5年)には、「池塘抄」9首が掲載され歌人としても活躍を見せている。表紙には見事な木版画の装画を寄せている。