頬擦りすれば心底癒される 

杉皮の選択は、本文中に「益荒男の雄ごころもちてわれゆきぬ杉そそり立つ大土佐の山」「大土佐の杉の輪見るほどにおのずからなる力湧き來ぬ」など杉を題材にした句があるが、これ等の句に因んでの選択ではないだろう。杉皮は、世俗を離れてひっそりと暮している閑寂な風趣の庵などを表現しようとしたのではないだろうか。背の布は、斎藤昌三が『續紙魚繁昌記』で使った酒嚢の布によく似ている。全体にどことなく感じる泥臭さたぼったさになぜか魅せられ癒される。
 
アイディアが奇抜であることがこの装本の評価を高めているが、表紙に使った杉皮(桧の皮かも知れない)が縦に割れやすいのが評価を落としている。そのデリケートさは、古書市などで見るこの本の多くは表紙が割れている事が証明している。