かよわさが愛しさをいや増す 

架蔵書も一度オモテ表紙の真ん中から割れてしまった。私はさっそく、最初のイメージを損なわないように表紙の裏面に厚手の和紙を貼って補習した。もちろん皮の割れ目にも木工ボンドを流し込みしっかりと補習して、それと気ずかれないように丁寧に直した。そのせいで、発売当初よりは大分丈夫になったものと思う。補習しながら、なんとかよわく愛しいヤツとの思いがますます強くなった。
 
春琴抄』は、多くの人が批判しているが、この『わびずみの記』の装丁に比べたら決して悪いものとは思えない。それなのに、『わびずみの記』の造本についての批判は管見するかぎりみたことがない。論評するに足らない装丁なのか、発行部数が少なく批評家達の目に留まらなかったのか、これこそは造本としては批判されても仕方がない本であり、悪口いい放題であったとしても、この本を味方して援護するのは私くらいであろう。
 
どうにかして表紙の裏に、芯ボールのような厚紙を貼れば表紙の強度はかなり増すものと思われるが、壊れやすいことを知っていれば丁寧に扱うのではないかと思うと、これはこれでいいのかなと思う。
 
林さん、コメントをありがとうございます。貴重な資料を教えていただきまして、再度ありがとうございます。おっしゃるように確かに、社長の思い込みということもあり、社長の証言は、必ずしも使われている素材が本当にジュラルミンであるという証にはならないかも知れませんね。別に調べる必要がありそうですね。大谷晃一『ある出版人の肖像 矢部良策と創元社』(創元社、一九八八年)はなかなか見つかりませんね。私の交友関係で金属に詳しい人は……?