ナルシスト齋藤昌三は顔も自慢?

  
さらに「なほ金版を掛けた繪紙の一片や切手の類は、單調の表裝に多少の色彩を添えたものに過ぎない。」とあるが、いかにもとってつけてようにカラフルな千代紙のような切れっ端が貼ってあるのが、唐突で気になった。決して成功しているとは思えない。色を使うと途端にダメになってしまうのは、専門家と素人の差だろう。いかに沢山齋藤が装丁を手がけていたといっても、専門の美術教育を受けた人とは違う。

「尚ほ扉に又貧乏神の如きスケッチを使用したので、前々回の刊本の折り讀者からお叱りを蒙った例もあるが、自ら好んで自像を宣傳用にするのではなく、餘程漫画やスケッチに適した顔と見へ、いつも知らぬ間に寫されてゐるもので、これも先年内田畫伯が自分の執務中をスケッチして寄?されたものであり、篋底の銀魚の糧にするには勿體ないので敢へて利用したが、この他漫畫だけでも十餘種ある。よほどストン狂のツラと自笑してゐる。」
「貧乏?の如き」と謙遜しているが、『書淫行状記』のときといい、今回の似顔絵といい、結構ナルちゃんのようだ。齋藤の晩年の顔はきっと本人も気に入っていたに違いない。