大貫伸樹の続装丁探索35(書物展望社の本)

shinju-oonuki2005-09-18

書棚を眺めていたら購入したことも忘れていた本、齋藤昌三『阿奈遠可志』(展望社、昭和43年)が出てきた。この本は、序文の日付から昭和35年5月に書かれたものであることがわかる。齋藤昌三は、昭和36年11月に肺気腫でなくなっているので、没後発行されたものである。発行も、書物展望社ではなく、株式会社展望社となっている。発売は、印南水造。
 
齋藤昌三の本にしては、装丁がおとなしいと思っていたが、やはり斉藤自身の装丁ではなかったようだ。
 
斎藤昌三は、筆禍文献の収集研究者として知られているが、「…先生が軟文学研究に踏みこんだのは、生家の雑貨業を捨てて、文筆活動に専念しはじめた大正末、軟派本出版の雄といわれた梅原北明西鶴研究の石川厳などと接近しだした頃からである。しかし梅原北明一党を昭和艶本合戦を招来させた実行主義派とするならば、氏は自身書いているが、反対に斎藤先生は、この道に深入りしたものの、冷静な文献主義を通した非実行派あった。」とあり、非合法出版の世界でも名を成している。性神崇拝の研究者としても知られている。
 
口絵は、刀と袴を脱いで月を眺めている男の後ろ姿を、屏風の影から3人の女がのぞき見している浮世絵風木版画が挟み込まれている。この女達のしぐさもなんだか怪しげで、赤い腰巻きを開いて、股間に紙を当てている。