社員の証言

 
『銀魚部隊』の製作にかかわった女子社員の高野ひろこ氏の証言が『日本古書通信』第27巻(古書通信社、昭和37年)に掲載されていたので、引用させてもらおう。
 
「私が入社して間もなく出版された先生の著書に『銀魚部隊』があった。凝った装幀にかけては日本一と言われただけに、実に見事なものである。この出版の時、外裝に使用する友染の型紙を捜しに先生のお供をして、日暮里あたりの或る古物屋に行ったことがある。古物屋と言うよりバタ屋とでも言った方がよいくらい最高に汚い所で、そこで廃物になった友染の型紙を買い求めたのだった。一枚一枚画柄の違ったその型紙は一冊一冊異った装幀の本を生み出した。見返しに表紙の画柄を摺り出したものを使用したのだから、製本所の苦心も並大抵ではなかった。」
と、齋藤の強引さが目に見えるようだ。
 
書影は『銀魚部隊』(書物展望社昭和13年)表紙。