2010-01-01から1年間の記事一覧

装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー

非水は1923年1月7日から同年12月2日までヨーロッパに遊学した。パリを中心として約40日間ずつの4冊の旅日記が残されており、46歳にして初めて迎えた外遊体験をつぶさに知ることが出来る。

非水の創作活動で、アール・ヌーボーからアール・デコへの転換期としてしばしば取り上げられるのが、このヨーロッパ滞在だが、この旅行で持ち帰ったといわれる300種ともいわれるポスターの全貌はすでに知ることは難しくなっており、この旅行と創作活動を関連…

杉浦非水の関東大震災前までの装丁

杉浦非水:装丁、『かたおもひ』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『次の一戦』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『古今孝子録』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『最新大日本地図』(大正3年) 杉浦非水:装丁、『小ゆき』(大正4年) 杉浦非水:装丁、『うき世』(大…

「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」講演が、11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は

饗庭篁村『単林子撰註(近松研究)』 (東京専門学校出版部、明治34年)に始まった杉浦非水の装丁は、大正期に大きく変化する。沢山の装丁作品を並べてみることで、特に関東大震災を境に新たなスタイルを採り入れているのを見つけることが出来る。

明治期にみられたようなアール・ヌーボーの影響はあまり強くは感じられないように思える。 杉浦非水:装丁、「少年世界」(大正元年) 杉浦非水:装丁、「少年世界」(大正元年) 杉浦非水:装丁、「演藝画報」(大正元年) 杉浦非水:装丁、「百合子」(大…

1912〈明治45〉年、日比谷図書館において杉浦非水の装幀本による「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」が開催された。この時に目録などが刊行されたのかどうかは、現時点ではわかっていない。が、明治45年以前に非水によって装丁された作品が出展されたのは確かなので、明治期の装丁作品を調べてみよう。これまでも取り上げてきた「三十六年」や「ホーム」「報知日報」「三越」「三越タイムス」「大阪之三越」などの冊子類はもちろんのこと、単行本も数こそ少ないが、手掛けている。

1912〈明治45〉年、日比谷図書館において開催された杉浦非水の装幀本による「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」 不鮮明な写真だが、よく見ると描かれているモチーフなどの特徴から「三十六年」「ホーム」「三越」等を判読できる。 杉浦非水;装丁、杉浦非水:装…

杉浦非水の絵に感化されたわけではないが、数日前から水彩画を描きはじめた。

大貫伸樹:画、「ハロウィン」 大貫伸樹:画、「おでん屋の提灯と瓢箪」 私淑しているのは、佐々木吾郎さんと永山裕子さんだ。二人の書いた水彩画の本を沢山購入して、絵を描く時はいつも傍らに置いて眺めながら描いている。こうして、佐々木吾郎さんの蔭の…

杉浦非水には、『非水百科譜』という植物画集があり、植物にはことのほか興味を持っていた。「非水は三越のポスターで、アール・ヌーボー様式のデザインを全面に駆使して新しい効果を挙げたが、その翌年の『三越』の表紙デザインには、アール・ヌーボー様式よりも、より自然なそして単純化した非水独自の日本画風のスタイルで、人物・風景・花鳥などを描いており、これが非水独自のスタイルで基本となっている。しかもそのモデルとなったものは、山名(*文夫)氏が云うとおりすべて直接自然の風物を、自ら写生により得たものであるから創作である。

杉浦非水「やへざくら」(『非水百花譜』第1輯) 杉浦非水「ぼたん」(『非水百花譜』第1輯) 非水は「植物本来の生育状態や其習性の観察が本当でなかったら、自然の命は捕まえられたものではない。一局部の写実の綜合は自然への冒瀆であるかれである。」(…

鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年)には、非水が描いた4点の多色摺木版画が挿入されている。

杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年) 杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年) 杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年) 杉浦非水:画、鳥野幸次『四季の趣味』(文友社、大正15年)劇場版 Fate/…

杉浦非水の大正期の装丁本

杉浦非水:装画「秋草」(「少年世界」博文館、大正元年9月) この本を購入した時は、この少年は草薮の中に隠れて何をやっているんだろう?といういかがわしい期待を込めて購入した。が、よく見ると、腕に喪章を付けている。本文中には「明治天皇御大喪儀」…

「(非水)は明治30(1897)年5月、誕生祝いを終えて上京、麹町区平河町の岩井禎三(愛媛県出身。日本赤十字副院長を務め、伏見宮家の侍医となる)に身を寄せていたころ、「三棹」と号している。川端玉章先生には、岩井さんの知人で西洋木版画の大家合田清先…

4月に実践女子学園生涯学習センターで90分3回講演をした「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」が、また11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は前回とは違う内容でお願いします、といわれ、

・装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー ・洋画家たちが美しいさし絵を運んできた ・安さだけではない美しさも備えた円本全集 の3つのテーマで講演することになった。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っておりま…

1912〈明治45〉年、日比谷図書館において杉浦非水の装幀本による「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」が開催された。個人の作家による装丁展は、おそらくわが国では最初のものとおもわれる。「当時装幀の仕事は、画家の副業というイメージでとらえられ、一段低く見られがちであった。制作への真摯な取り組みやこのような展覧会の開催によって、非水は図案の仕事をファインアートと比肩しうる新たな芸術の一ジャンルとして確立しようとしたのだ。」(「“図案”への目覚め」『杉浦非水の目と手』宇都宮美術館2009年)装幀にかける意気込みのほど

展示の下の部分には、一点ごとに額装した印刷物が見られるが、この辺にも非水の印刷複製物を油絵などの1品制作の芸術品と同じように扱うというような意図が感じられる。 写真1 写真2 「書籍装幀雑誌表紙図案展覧会」於:日比谷図書館階下、1912〈明治45〉年…

関東大震災を境に、非水の画風は大きく変化するのがよくわかる。

杉浦非水:デザイン、「大阪之三越」(大正15年) 杉浦非水:デザイン、「大阪之三越」(大正15年) 杉浦非水:デザイン、「大阪之三越」(昭和2年) 杉浦非水:デザイン、「大阪之三越」(昭和4年)

「三越」「三越タイムス」「大阪之三越」を一堂に並べてみると、非水の画風の変遷が一目瞭然にわかる。

杉浦非水:デザイン、「三越タイムス」(大正元年) 太い線で輪郭をとる「うどん」様式をみてとることができる。 杉浦非水:デザイン、「三越タイムス」(大正3年) アール・ヌーボーの影響をほとんど見ることは出来ない。 杉浦非水:デザイン、「大阪之三越…

非水とアール・ヌーボーについて、山名文夫は「……氏の仕事として忘れられないのは三越のハウスオーガンの表紙デザインやカットである。

氏のデザインを語る人は、ただちに、欧州装飾美術の新傾向であったアール・ヌーボー様式を引き合いに出すのであるが、そしてまたその様式の洗礼を受けたことはたしかとしても、必ずしもその追従者でなかった。氏のデコラチーブ・トリートメント(単化手法)…

2010.9.28 15:00新宿の空は思った通りに、DoCoMoビルの上のほうを雲で隠していた。

2010.9.28 15:00新宿の空 2010.9.28 15:00新宿の空 私はときどきこの場所にこの風景を眺めるためにだけ行って癒されています。うわ〜、こんな風景が東京にあるなんて……とおもいませんか? 四畳半神話大系 第2巻(初回限定生産版)[Blu-ray]出版社/メーカー: …

杉浦非水は、1908(明治41)年東京中央新聞に在籍したまま、三越呉服店に嘱託として入社する。日本初の百貨店(デパートメントストア)であり、三井財閥の礎を築いた企業である。非水はこの三越呉服店(現三越百貨店)を舞台として、明治末期から大正、昭和にわたって活躍をし、時代を代表するデザイナーへと成長していく。

杉浦非水:デザイン、「中央新聞週報 ホーム」(1907(明治40)年4月) 杉浦非水:デザイン、「中央新聞週報 ホーム」(1907(明治40)年5月) 杉浦非水:デザイン、「中央新聞週報 ホーム」(1907(明治40)年5月) 杉浦非水:デザイン、「中央新聞週報 ホ…

4月に実践女子学園生涯学習センターで90分3回講演をした「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」が、また11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は前回とは違う内容でお願いします、といわれ、 13:45CommentsAdd Star

・装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー ・洋画家たちが美しいさし絵を運んできた ・安さだけではない美しさも備えた円本全集 の3つのテーマで講演することになった。 毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っておりま…

事務所にある本を毎週100冊ずつリサイクルに出そうと決め、今週で3回目になる。ほぼ私の身長3人分が処分されることになる。そのせいか、玄関口まで押し寄せていた書物の圧迫感はなくなり、どことなく部屋全体が広くなってきたようにも感じるようになってきた。ここに引っ越してきてからそろそろ35年にもなる。溜まりに溜まった資料は、未練を捨てるにも時間がかかる。

資料の処分は、苦痛も伴うが、たまには楽しみもある。今日は、いつ購入したのかさえも覚えていない、写真左:「ユリイカ」(書肆ユリイカ、1958〈昭和33〉年4月号)、写真右:「ユリイカ」(書肆ユリイカ、1959〈昭和34〉年4月号)が出て来た。 表紙のデザイ…

1902年に(明治35)年大阪に三和印刷所が設立され、杉浦非水は黒田清輝の推薦で図案部主任に採用される。翌1903年大阪で開催されることになった大阪第5回内国勧業博覧会に向けて雑誌「三十六」が刊行され、非水は表紙デザインを担当することになる。

杉浦非水;装丁、「三十六年」1号(明治35年) アール・ヌーボー風にアレンジしたカキツバタの連続模様と、欧風建造物の博覧会会場正門を赤のシルエットを組み合わせてあしらった図案は、斬新で欧風主義の時代の気風にも相まって評判が高かった。 杉浦非水;…

非水は中央新聞社に6年間在籍し、「中央新聞週報ホーム」や連載記事をまとめて出版した「富士山スケッチ」、雑誌の表紙や口絵、装丁デザイン等を広く手がけていた。その他、写真報道のない時代であったので、事件や相撲などの報道用スケッチを沢山描いている。

杉浦非水:画、『富士山スケッチ』(金尾文淵堂、明治41年) 杉浦非水:画、『富士山スケッチ』(金尾文淵堂、明治41年) 杉浦非水:画、『富士山スケッチ』(金尾文淵堂、明治41年) 杉浦非水:画、『富士山スケッチ』(金尾文淵堂、明治41年) 富士山の八…

1897(明治30)年、杉浦非水が入学した東京美術学校日本画選科には、土佐派、狩野派、円山派があり、非水は純日本式の写生を基本とする川端玉章が指導する円山派だった。

当時の日本画はヨーロッパ近代美術の影響を受け、岡倉天心を中心として新日本画運動がおきており、特に1898年に東京美術学校長を辞任して日本美術院を創設した天心のもとには、横山大観、下村観山、菱田春草など有力な新進作家たちが集っていた。彼らの積極…

4月に実践女子学園生涯学習センターで90分3回講演をした「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」が、また11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は前回とは違う内容でお願いします、といわれ、

・装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー ・洋画家たちが美しいさし絵を運んできた ・安さだけではない美しさも備えた円本全集 の3つのテーマで講演することになった。 詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。 77…

「ホタルノヒカリ」のホタル・綾瀬はるかの巨大な風船(発砲スチロール)?が

新宿・アルタスタジオ前に突如現れた巨大なホタル・綾瀬はるか像。通勤途中におもわず「アッ、ホタルだ!」とばかりに撮影してしまった。あの天然ぶりが何とも愛おしく可愛かったです。

毎週、自宅と事務所にある本を100冊処分

事務所が狭くなってきてしまったので、本棚に入る分だけを残し、はみ出している本は毎週100冊づつ処分することにした。本棚からはみ出している本の方が圧倒的に多いのが問題になっている。100冊を積み重ねるとほぼ身長くらいになる。 リサイクル品収集の日が…

非水が手がけた最初の装丁は?

非水は夏目漱石「坊ちゃん」で知られる松山中学を卒業後、1897年に上京し、父の友人である医師・岩井禎三野家に寄宿し、岩井の患者であった西洋木版画家・合田清の紹介で川端玉章の天真画塾に入門した。同年の9月、東京美術学校日本画家選科を受験し役7倍の…

杉浦非水(1876‐1965)、翠子(1885〜1960)夫妻といえば、今日でも知る人ぞしるオシドリ夫婦。非水は当代きってのデザイナー、翠子は女派歌人として活躍。二人ともにモダンボーイ(モボ)、モダンガール(モガ)ともてはやされ大正・昭和初期に活躍した。

●杉浦翠子は明治37年(1904)4月に19歳で結婚。夫・非水の友人である北原鉄雄を介して北原白秋に、さらに斉藤茂吉に師事。大正5年(1916)、当時、写実主義を掲げ、斉藤茂吉、島木赤彦、中村憲吉、古泉千樫らを擁して歌壇の主流になりつつあったアララギに入…

偶然だが、11月10日(水)15;00〜16:00に開講される実践女子学園生涯学習センターでの講演テーマが、「装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー」を準備しているが、話の内容は、アール・ヌーボー様式をいち早く採り入れた「みだれ髪かるた」や、アールデコ様式を採り入れた『現代日本文学全集』そしてモボ・モガといわれたオシドリ夫婦の妻・「翠子の作品を飾った装丁」の話をしようと思っている。

杉浦非水:画、「みだれ髪かるた」(「明星」の口絵として1904(明治37)年に掲載) 杉浦非水:装丁、小酒井不木『三面座談』(京文社、大正14年) ヨーロッパ旅行から帰国して間もなく制作された装丁で、関東大震災前の作品にはないシャープで繊細で洗練さ…

4月に実践女子学園生涯学習センターで90分3回講演をした「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」が、また11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも15:00~16:00)に開催されることになった。講演内容は前回とは違う内容でお願いします、といわれ、

・装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー ・洋画家たちが美しいさし絵を運んできた ・安さだけではない美しさも備えた円本全集 の3つのテーマで講演することになった。 詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。77講…