2010-01-01から1年間の記事一覧

七味とうがらし売りの口上でもその名は全国的に知られています。

しかし、残念ながら現在の四谷界隈では栽培されていません。そこで、私たちは四谷地区の小・中学校と連携し、歴史ある「内藤とうがらし」の復活を楽しく目指しています。」と。 花壇に立てられている看板 確かに「山徳」薬研堀七味とうがらしの売り口上を ht…

都心でも街路樹の間に、琵琶の実がたわわに実っていたり、生け垣にアケビが実ったりして楽しませてくれる風景を見かけるのは珍しいことではなくなってきた。が、野菜類が育てられているのはそう沢山みかける風景ではない。

事務所のあるマンションの入り口わきの小さな花壇になっているスペースに、トウガラシが植えられていた。 よく見ると何やらウンチクが書いてある。 「その昔江戸時代の内藤新宿一帯は秋になると内藤藩の栽培するとうがらし(上を向いて実る八房という品種)…

広告だから当然だろうが「現代日本文学全集内容見本」に「装幀と編纂の周到な用意」と題する造本装丁に関する自画自賛が。果たして字面通りに信用できるのだろうか。

第2回予約募集「現代日本文学全集内容見本」昭和2年 「装幀と編纂の周到な用意 本全集の装幀は、これまで最も苦心を費やし世に誇るべき自信を持てます。世間には、ちょつと見て美しく思はれるものもありますが、私達は、高尚な書斎の装飾、日本文学の内容と…

大正15年11月締め切りの「現代日本文学全集予約募集内容見本」には、山本が漱石ファンであることを裏付けるように夏目漱石「坊ちゃん」の組見本が2ページ付されている。この内容見本が配られたのは8月ごろではないかとおもわれる。「坊ちゃん」が収録されている『夏目漱石集』第19編は第7回配本で、昭和2年6月発行なのである。常識的に考えれば、第一回配本の大正15年12月刊行『尾崎紅葉集』の組見本が使われるのが妥当であろう。なのに、大正15年8月に始まった予約購読者募集の内容見本に、なぜ「坊っちゃん」が選ばれたのであろ

紀田順一郎氏は『内容見本にみる出版昭和史』(本の雑誌社、1992年)で「…巻末に『坊ちゃん』の組見本を2ページほど付している。これは当初第一回配本予定が『夏目漱石集』であったことを物語っている。現実には翌昭和二年の第一回配本は『尾崎紅葉集』で漱…

改造社『現代日本文学全集』紙装並製本の普及版と夏目漱石『吾輩ハ猫デアル』(大倉書店、服部書店、明治38年)を並べてみると、どことなく造本が似ている。私の手元にある明治40年5月3日に発行された第5版は、天金がはげ落ち豪華さが失われているので、なおさら円本風に見えてしまう。が、実際は、地券紙本と呼ばれる表紙の芯紙に薄手のボール紙を使い、ページを繰りやすくしたもので、上製本である。

いずれも菊判で、白地を生かし朱色を基調色にし、束は約15ミリ。『吾輩ハ…』は表紙の芯ボールが薄手で、チリがなく突きつけなので、くるみ製本のように見えてしまうなどなど、多少、こうあってほしいと思うほうへと引っ張っているかも知れないが、観察すれば…

安さだけではない美しさも備えた円本全集

の3つのテーマ。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っております。 詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。77講座ある講座案内の最初の見開きページに私の講座が紹介されているのには…

洋画家たちが美しいさし絵を運んできた

装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー

「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」講演が、JR中央線・日野駅前の実践女子学園生涯学習センターで、11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。受講料は3回分で3,150円。

講演内容は

杉浦非水装丁、菊判・紙装並製本、6号総ルビつき三段組、平均500 頁、予約定価一円(上製本は、天金、総クロース金文字、1円40銭)。改造社社主・山本実彦は「我社は出版界の大革命を断行し、特権階級の芸術を全民衆の前に解放」すると宣言し、35万余という空前の予約を獲得した。当初は賭博行為と冷ややかな批判ばかりだったが、この勇気ある決断による大成功を目の当たりにした多くの出版社が、次々と改造社の後を追うように全集を刊行することになり、出版界の不況を打開する先駆けとなった。

杉浦非水装丁、『現代日本文学全集』(改造社、大正15年)函入布クロース上製本特装版と、カバー付き並製本普及版

八、本全集あれば一生涯退屈しない。

予約出版法による予約募集で、申込金一円(最終回配本充当)、その他の細かい規約があった(今日と違って、予約読者以外の一冊売りは原則としてしなかった。だから、奥付に定価の記入はない)。この計画は、不況乗り切り策である。改造社の山本実彦の大胆な…

七、全日本の出版界は其の安価に眼を円くす。

六、瀟洒な新式の装幀で書斎の一美観。

五、菊判6号活字総振仮名付最新式の編輯法。

四、明治大正の不朽の名作悉く集まる。

三、内容充実し、普通版の四萬頁に相当す。

二、総額壱千円のものが毎月たった壱円。

一、本全集あれば、他の文藝書の必要なし。

「善い本を安く読ませる! この標語の下に我社は出版界の大革命を断行し、特権階級の芸術を全民衆の前に解放した。一家に一部を! 芸術なき人生は真に荒野の如くである。我国人は世界に、特筆すべき偉大なる明治文学を有しながら、英国人のセキスピアに於けるが如く全民衆化せざるは何故だ。これ我社が我国に前例なき百万部計画の壮図を断行して全国各家の愛読を俟つ所以だ。日本の第一の誇り! 明治大正の文豪の一人残らずの代表作を集め得た其事が現代第一の驚異だ。そして一冊一千二百枚以上の名作集が唯の一円で読めることが現代日本最大の驚

「円本」とは、「一冊一円の本」のことで、市内一円均一の料金で大都市を走ったタクシー「円タク」とともに、昭和初期における文化の象徴であった。1926(大正15)年11月、改造社は『現代日本文学全集』全37巻別巻一冊の予約募集を発表した。

『現代日本文学全集』内容見本(改造社、大正15年) 『現代日本文学全集』内容見本巻頭ページ(改造社、大正15年)威勢の良い前文をタイプアップしてみよう。

「本の手帳」への寄稿家でもあるかわじもとたかさんから最近上梓された『序文検索』(杉並けやき出版、2010.10、4,200円)を贈られた。かわじさんの4冊目となる著書で、序文執筆者名と執筆した書物一覧とでもいうべき内容。前回出版された『装丁家で探す本』は大変興味深く大いに利用させてもらったので、今回も楽しみにしている。

かわじもとたか『序文検索』(杉並けやき出版、2010.10、4,200円) 丸三年間、毎日毎日パソコンと古書目録に向かい検索し、入力する日々の結晶だという。収録した本は、12000冊以上、序文家は1600人以上にのぼるという。日本近代文学館に1年9ヶ月通い著作者…

安さだけではない美しさも備えた円本全集

の3つのテーマ。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っております。詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。77講座ある講座案内の最初の見開きページに私の講座が紹介されているのには、…

洋画家たちが美しいさし絵を運んできた

装丁のパイオニア杉浦非水とアール・ヌーボー

「美しい本の話─装丁、さし絵、製本─」講演が、JR中央線・日野駅前の実践女子学園生涯学習センターで、11月の毎水曜日、10日、17日、24日(いずれも 15:00~16:00)に開催されることになった。受講料は3回分で3,150円。

講演内容は

杉浦非水の装丁は、関東大震災以後大きく変化し、昭和初期には絶頂期を迎える。『現代日本文学全集』や『愛(かな)しき歌人の群』等は非水装丁本の中でも最高の出来ではないかと思っている。前回紹介した大正11年に創作された『改造の独逸より』を加え、私の「非水装丁三大お気に入り本」としている。『現代日本文学全集』は古書価も安く、古書市では500円くらいで売られていることが多い。私は、函入布装で白い布が真っ白できれいな美本を、五反田の古書市で200円で5冊ほど手に入れた。以前購入した本よりも安く保存状態がいい本に出会う

杉浦非水:装丁、『ああ故郷』(昭和2年) 杉浦非水:装丁、杉浦翠子『愛(かな)しき歌人の群』(昭和2年) この絵は中央の黄色い部分が雉か鳳凰などの鳥の絵だとずっと思っていたが、よくみるとタンポポかあざみの花のようだ。 愛妻・翠子のために創作した…

杉浦非水:装丁、池田林儀『改造の独逸より』(東京堂書店、大正11年)

杉浦非水:装丁、『資本主義のために』(大正11年) 大正12(1923)年1月7日から同年12月2日までヨーロッパに遊学したが、1923年9月1日の関東大震災発生により、旅程は途中で切り上げられ、帰国を余儀なくされた。これ以降の装丁が、外遊の影響を受けたと思…

杉浦非水の大正期、関東大震災前の装丁

非水の装丁は、関東大震災以降に大幅に変化を見せる。が、立証は出来ないが、洋行する前から美術雑誌などからアール・デコに関する情報をつかんでいたのではないかとも、推察できる。特に気になるのは大正11年に刊行された池田林儀『改造の独逸より』(東京…

安さだけではない美しさも備えた円本全集

の3つのテーマ。毎回たくさんの本と映像を使って、マニアックで楽しい講演にしたいと思っております。詳しい内容、お申し込みは http://www.syogai.jissen.ac.jp 0120-511-880へ。 77講座ある講座案内の最初の見開きページに私の講座が紹介されているのには…

洋画家たちが美しいさし絵を運んできた