2006-01-01から1年間の記事一覧

造本探検隊117(有元利夫装画『海岸列車』)

●有元利夫の彫刻をモチーフにした装丁 毎日新聞社から発行された、宮本輝『海岸列車』上・下巻(毎日新聞社、1989年)は有元利夫の彫刻作品を撮影して(撮影」・安齋吉三郎)装丁のモチーフとしている(装丁・菊池信義)。宮本輝の意向が強く働いているのだ…

造本探検隊116(もう1冊『小学童話読本』入手) 編集

●もう一冊『小学童話読本』第五学年上巻(興文社、大正15年3月5版)を入手。 表紙の左上に新聞の切り抜き挿絵が貼込んであったせいか、格安で手に入れることが出来た。しかし、水をつけて少し時間を置き、丁寧にはがしたら、きれいに剥がれた。 この本は定価…

造本探検隊115(円本の前身?『小学童話読本』)

●本を整理していたら、菊池寛編『小学童話読本』(興文社、大正15年3月15版)(写真上)が出てきた。初版は大正14年12月に発行されているから、わずか3ヶ月ほどの間に15刷もするほど売れたようだ。 この本は全8巻で各定価一円。ネットで調べたら、5000〜7000…

造本探検隊114(杉浦康平氏デザインブータンの切手) 編

●杉浦康平氏デザインブータンの切手 大貫伸樹の装丁楽会で紹介した、ミズノ・プリンティング・ミュージアム見学会を企画してくれた、山が好きという平野武利さんが高山病になったことがある話をしてくれた。かつて、私が知っている人で高山病というと、杉浦…

造本探検隊113(有元利夫の装丁本) 編

●造本探検隊113(有元利夫の装丁本) 編 この2冊は、有元らしさが一番感じる装丁で好きな装画だ。特に宮本輝『花の降る午後』(角川書店、昭和63年3版)の装画はお気に入りだ。ロングスカートの女性は、特徴的で、それだけで訴えかけるものがある。背景のイ…

造本探検隊112(蔵書票展で出会ったもう一人の怪人・加藤豊さん) 編

●真っ赤な封筒で 本日、写真のような真っ赤な封筒が届いた。この封筒を見ただけで、怪人からの便りであるだろうことを期待してしまう。マッチレッテルコレクターの第一人者として知られ、珍品、逸品、個人趣味票とラベル約3000点を収録した『マッチラベ…

造本探検隊111(三岸節子『鶴によせる日々』)

●美術館から講演の依頼が!! 「世界の蔵書票展」開催中の日曜日に事務所の立ち寄ったら、一宮市三岸節子記念美術館から、今年10月14日(土)から11月19日(日)まで開催される特別展「三岸節子と装丁展〜文学者たちとの交流〜」での講演の依頼が届いていた。メ…

造本探検隊110(怪し林の由紀子さん)

●これが林ワールド 昨日まで東京古書会館で開催されていた「日本と世界の蔵書票展」に出品していた銅版画家の林由紀子さんが、写真の「ナオール」という薬をくれた。別に頭痛がしたわけではない。この薬は、林さんが10年ほど前に骨董市で購入したものだそう…

2006-05-30 造本探検隊109(ニック・バントック『不思議な文通』)

●造本探検隊109……ニック・バントック『不思議な文通』(河出書房新社、1993年2版、定価2500円)を教えてくれたのは、「わたしつくるひと」だ。内容は、絵はがきと本文中に貼り込まれた実物とおんなじ封筒に入った手紙の間で繰りひろげられる孤独な画家と謎の…

造本探検隊108(恩地考四郎の装丁『女性ノート』)

●恩地考四郎の装丁本を久しぶりに入手 先日、書肆アクセスに納品に行った後、古書モールに立ち寄った。背の●三つの模様が気になり、さりげなく書棚から取り出して見た。表紙を見ると、これ又どこかで見たようなモチーフであり、ますます気になり出す。ぱらぱ…

有元の装画を観たい

ここのところしばらく有元熱が冷めていたが、この絵を見せてもらってから、また急に有元利夫熱があがり、装丁を観たくなった。丁度折よく先週から自宅の書庫の移動をやっていて、有元の装画を使った宮本輝『青が散る』(文藝春秋、1994年28刷)、宮本輝『海…

有元作品との再会

最近仕事で訪れた某出版社の編集長に私が制作した消しゴム版画蔵書票を贈呈したら、数日後に額装して再度もってきて見せてくれた。その時、同じくらいの小さな額に入った油絵を何気なく見せてくれた。なんと、有元利夫(ありもととしお、1946年9月23日 - 1985…

造本探検隊107(有元利夫の装画『青が散る』)

造本探検隊107(有元利夫の装画『青が散る』)

スケッチなどが

たくさんのスケッチが配されており、恩地の版画制作、あるいは抽象版画を思考した形跡を辿ることができるのも魅力的で、貴重な本である。このスケッチが1点1点完成度が高く、本画に負けず魅力的である。

装丁探検106(恩地孝四郎装丁『日本の憂愁』)

恩地孝四郎『日本の憂愁』(龍星社、昭和30年10月30日初版)四六判函入り上製本は、昭和30年6月3日に恩地が無くなった日から約5ヶ月後に刊行された追悼画文集である。表紙(表)手摺木版「幸福への思慕」、表紙(ウラ)手摺木版「形象」、口絵1「形象」、口…

大貫伸樹の造本探検隊105(恩地孝四郎装丁本『かがやく小川』)

●恩地孝四郎装丁、吉田絃二郎『かがやく小川』(実業之日本社、昭和2年) この本は古書市などでよく見かけるが、装丁者名の記載がなく購入を躊躇していた本だ。恩地の装丁だろうとは思っていても断定することが出来なかった。 今回購入したのは、『恩地孝四…

野上彌生子『眞知子』(文藝春秋新社、昭和22年9月初版)のい装本がいっぱい

『恩地孝四郎の業』(三省堂)に記載されている野上彌生子『眞知子』(文藝春秋新社、昭和22年9月初版)をみて、インターネットで購入したのが写真左の波のような模様の装丁だ。しかし、この装丁は『恩地孝四郎の業』で見たかぎりでは、小さな葉をたくさんあ…

『日本児童文庫』でも

著者の西村真治は、円本全集として知られる『日本児童文庫41』でも『発明発見物語』などを著している。もちろんこのときの装丁も恩地孝四郎。約15年前の執筆者たちスタッフが再度招集され、新たに制作された児童向けの百科全書というようなものである。本文…

継ぎ表紙と、銀泥刷に銀箔押し

表紙のデザインは、このシリーズの共通のデザインだと思うが、それにしては、手の込んだ豪華な装丁である。まず、背布、継ぎ表紙というのが、最近では殆ど行われなくなってきている。一般に上製本は芯紙に1枚の紙(または布)を貼って表紙ができるのだが、継…

昭和16年2月発行の恩地装丁本

『恩地孝四郎装幀作品目録」(『装本の使命』阿部出版)のデーター化がやっと終わり、今日は、出がけに架蔵書から1冊を無造作に取り出して持ってきた。西村真治『新日本児童文庫5 原始人から文明人へ』(ARS、昭和16年2月)の「はしがき」の文末に「昭和十五…

あの幾何学的な装丁はどこへ

恩地は版画でも、抽象的な作品を作ったり、具象的な作品をつくったりと、まるで時計の振り子のように行ったり来りを繰り返していた。恩地にとって、そうすることが美意識を醗酵させるのに適した方法だったのだろう。渋沢秀雄『あまから人生』(創元社、昭和2…

色の選択が秀逸

版画家なら、このようなことを日常茶飯事でやっているのだろうが、重ねたり抜いたりして、複雑な色を出しているのは味わいもあり、深みのあるデザインが出来る。ここに使われている3色の選択は、重ね合わせを考えた色の選択というよりは、3色のハーモニーを…

恩地には珍しい構成の表紙といえるだろう

表紙の模様は遠目には、スギナのように見えるが、何をモチーフにしたのかわからない。タンポポの種のように見える部分は鉄紺を、バックの蔭のような部分には利休茶のような色を使っている。背のタイトル部分はさらにもう一色カキ色を使い、鉄紺のベタとカキ…

小山いとこ『高野』(中央公論社、昭和15年2月初版)

小山いとこ『高野』の表紙は、3色刷りで、今では3色刷りとか2色刷りの表紙は殆ど見られなくなった。そのような印刷をする事も少なくなってしまった。2色刷りや3色刷りには、デザーナーの腕の見せ所があって、なかなか面白かった。例えばオレンジ色と緑色で印…

もうひとつのブログ『書物楽会」は「装丁楽会」としてhttp://zousyohyou.exblog.jp/に移転

創設以来約10ヶ月で50000件を越すアクセスをいただきました「書物楽会」は、無料で掲載出来る写真掲載のキャパシティをオーバーし、大きな写真を掲載することが出来なくなり、より大きな容量を用意しているexblogに移転することに致しました。今まで同様に、…

大木惇夫『神々のあけぼの』(時代社、昭和19年4月)

この本が出た昭和19年はどんな戦況だったのだろうか。18年、日本はマリアナ沖海戦で空母3隻と艦載機400機を喪失し、太平洋における制空権を完全に失い、昭和19年3月には、学徒勤労動員の通年実施を閣議決定。さらに19年7月には「難攻不落の要塞」と言…

こんな恩地もいい

私が抱いている恩地の作品のイメージからはやや遠い感じがする表紙だが、有機的な曲線とフリーハンドな感じがどこか癒される柔らかな印象の装画だ。

表紙の方が豪華

最近の装丁はその殆どが、カバー(ジャケット)には力を入れるが、表紙は殆どデザインされていない場合が多い。そんな最近の暗黙のルールからすると、吉田一穂『北原白秋詩集』(鎌倉書房、昭和22年3月再版)は、全く逆だ。 写真左のジャケットは赤と青の2色…

銅版画サークル(定員10名)実習会開催。入会金500円、月会費500円 

●4月16日(日)9:00〜13:00 ●4月29日(土)9:00〜13:00 ●於:西東京市住吉町住吉公民館(西武池袋線-ひばりケ丘駅下車徒歩10分) ●申込みはメールで下記へお知らせください。 md9s-oonk@asahi-net.or.jp 初心者歓迎。銅版画はプレス機さえあれば、誰でも…

蔵書票楽会を立ち上げました。新作蔵書票を連日発表。ぜひご覧下さい。

http://blogs.yahoo.co.jp/higetotyonmage/1491132.html