造本探検隊114(杉浦康平氏デザインブータンの切手) 編

杉浦康平氏デザインブータンの切手
大貫伸樹の装丁楽会で紹介した、ミズノ・プリンティング・ミュージアム見学会を企画してくれた、山が好きという平野武利さんが高山病になったことがある話をしてくれた。かつて、私が知っている人で高山病というと、杉浦康平さんがブータンに切手を作りに行ったとき、同行した杉浦さんの奥さんが高山病になったのを思い出しその話をすると、驚いたことに平野さんもその切手の話で、杉浦さんとブータンに同行していた、というではないか。

さらに、山好きの平野さんは『山頂にて』(山と渓谷社、1993年)という写真集を出版しており、後日その写真集を送ってくれた。この写真は赤外線フィルムで撮影しているというので、遠景の細部までがくっきりと写っている。それだけではなく、製版者として杉浦さんにブータンまで同行したという平野さんだから、写真はモノクロだが2色刷で、おまけにレタッチは自らが行ったといういわく付きの本でもある。

山のことなど素人の私に、この本を送ってくれたのには、私が学生だったときに石元泰博さんが『シカゴ、シカゴ』という写真集をやはりモノクロだが2色刷りで印刷したのを知っていて、印刷にも詳しいと思ってくれたからなのだろう。たまたま、石元さんの写真の授業を受けていたときに『シカゴ、シカゴ』は出版され、校正刷りなどを見せてくれながら、2色刷りで印刷する効果の説明を受けていたことで、多少の知識があったからというだけのことなのだが。

●久しぶりにあの切手と対面
平野さんとミズノ・プリンティング・ミュージアムで会った日に、帰り際に喫茶店でお話しをしていたら、平野さんがブータンにまで行って製版してきた切手のシートをいただいてしまった。何たる感激!!写真がその切手である。
杉浦康平さんも、石本泰博さんも共に恩師であることから、話がどんどん広がって思い掛けない、すごいプレゼントをいただいてしまった。