造本探検隊110(怪し林の由紀子さん)

shinju-oonuki2006-06-07

●これが林ワールド
昨日まで東京古書会館で開催されていた「日本と世界の蔵書票展」に出品していた銅版画家の林由紀子さんが、写真の「ナオール」という薬をくれた。別に頭痛がしたわけではない。この薬は、林さんが10年ほど前に骨董市で購入したものだそうで、その後これを額装して家に飾ってあったのだそうだ。
 
展示会2日目にわざわざ三島の自宅から持ってきてくれた。「大貫さんなら、この面白さをわかってくれるだろうから」というのが、いただいた理由だ。「挿絵の女性が東郷青児が描く女性像のようで、いいでしょう。偽物っぽいところがね。」という。そういえば東郷青児の絵にしては、ちょっと品がないかな。それでも指先の感じなど結構よく描けていて、贋作?といっても和田氏ほどではないが、ただものではないようだ。
 
●その夜、この女性像に似た東郷の絵を探した。
3日目の夕方から、田中シオリさん司会による林さんと関美穂子さんのトークショーがあった。終わりに近づいた頃に、この薬の袋を林さんに渡し、袋に関する話をしてもらい、林家の怪しコレクションで、大切な蒐集物だったことがわかった。

さらに薬を頂いた夜に、元絵が見つからないものかと架蔵書を探したが、全く同じものは見つからず、『婦人公論』(中央公論社、昭和25年)の表紙に東郷青児が描いた女性で、この薬袋の絵によく似た女性が描かれているのを見つけた。講演の席上で、この雑誌を渡し、二つ並べて「和田&スギ」の盗作問題とからめタイムリーな話題にし、話を提供した。何とも魅惑的で怪しげで、なかなかつかめない林ワールドを理解する一つの大切なツールでもある。怪し林ワールドは、今回の展覧会でも話題を攫っていた。