珍しい同じタイトルでの競作

   
写真右は、村山知義が装丁した同じタイトルの本、藤森成吉『何が彼女をそうさせたか?』(改造社昭和2年初版)である。同じタイトル本を複数の装丁家が担当するのは、比較的珍しいことだ。制作期間も3年しか離れていないので、正に同時期の競作といえる。前衛美術を標榜し、「マヴォ」の同人でもある二人のこの競作は、昭和初期の装丁を蒐集するものとしては、たまらなく嬉しい。
 
同人でありながらも、柳瀬は村山から多大な影響を受ける。後に柳瀬がグロッス風の挿絵を描くようになるが、それも村山からの影響である。そんな村山と同じタイトルの本を装丁できるとなれば、柳瀬はおおいに張りきったのではないだろうか、と推察される。