「審くもの審かれるもの」函

shinju-oonuki2005-10-21

 
大貫伸樹の装丁探索」http://blog.melma.com/00140644/で、函の裏面を大きな画像で見せたので、ぜひそちらものぞいて見てください。この画像も全体に暗くしてコントラストを強くし、オーバープリントされている黄色のイラストが少しでもみえるようにと腐心した。
 
中央に描かれた、羽を付けた天使のような老人のような人物は裁く人であり、また審かれる人なのだろうか。角もある。よだれも垂らしている。序文に「法定で審かれる被告のみが永久に審かれるもので、審くものは絶対に審かれないと思ふて居たら、それこそ、とんでもない刑事裁判官の僭越である。審くものよ!汝もまた審かれるであろう。彼等は最も皮肉に、その刑事裁判振りを現に審きつゝある被告から審かれて居る。見よ、彼等の審きに迷ふ疑獄の有罪か無罪かの真相に最も明らかなるものは、実にその被告である。」と、ある。
 
さらに「身に覚え無き無罪事件の嫌疑を被けて、誤判の有罪を擬する刑事裁判の無智不明をのろふ。彼等の審き振りを審きほど、最も深刻な審きはあるまい。」との序文を視覚化したのだろう。とんがった耳や角を持った老いた天使のような人物は「審くもの」で、背景に黄色で印刷された様々な人物は、「審かれるもの」なのだろう。表紙に描かれたトカゲや鎖など、描かれたモチーフはみんなそれぞれに明確な意味を持つサインなのだ。
 
自然社の文字の右に柳瀬の「夢」というサインがあるが、このサインは他では見かけない。