前衛美術吸収の痕跡をみることができる装丁

shinju-oonuki2005-10-19

 
アンドレーフ「先駆芸術叢書 黒い仮面」(金星堂、1924年)は、未来派構成主義の影響を受けた装丁で、円弧や直線による形態や英文字をモティーフとした構成による斬新な作品だ。
 
この時期の装丁としては、「表現派戯曲集」「審くもの審かれるもの」「淫売婦」「裸の年」などがあるが、何れも幾何学的な図形や写真のモンタージュなどを用いた実験的、冒険的な作品群である。
 
「抽象的な絵画への試みから印刷されたメディアへの意識的な選択をとげようとする時期まで柳瀬の表現は大胆に変化してきた。絵画における表現の西欧との同時代的な問題意識は、印刷物の表現においてもしめされ、関心をもった作家の影響をまず受け入れて、やがて自分のものとしてきた姿勢がここにはある。」(及部克人「時代に向かう装丁の奇跡」「柳瀬正夢 疾走するグラフィズ厶」武蔵野美術大学美術資料図書館、1995年)