これも斉藤のこだわりか

 
四六判120頁の薄手の書物で、一見普通の詩集のように見受けられるが、前記のようなこだわりが随所に見られ、斎藤昌三の隠れたアイディアを至る所に見つけることが出来る、こだわりの造本である。表紙の芯ボールが面取されているのもそんな斉藤のこだわりであろう。ゲテ本ではないが、版元・斎藤の心のこもった造本である。
 
斎藤は、「君と僕」というあとがきに「……出版を一任させられたからは、組版にも装幀にも拙者一流のいたづらを試みたかったのであるが、何処までも自信にもゆる詩人氣質の君は、内容本位であるからその必要はないとのこと、それでもと装画を君の心の友塚本茂先生を煩はし、他は、作者の希望に任せた次第である。」と、斎藤の思い通りには行かなかったようで、いささか残念、といった感じのあとがきであが、さすがに造本の達人・斉藤の名に恥じないよい出来である。。