「中里介山『大菩薩峠』の世界」(山梨県立文学館、2003年)
挿絵:井川洗崖、「大菩薩峠」第1回(都新聞、1913、大正2年)
嬉しい事に、新聞連載の第1回が記載されていた。この挿絵の版木も記載されているのがすごい。あるところにはあるもんですね。第1回目の文章ではまだ、机竜之介は登場していないが、挿絵には机竜之介とおぼしき人物が描かれている。恐らく、第2回の人物描写のシーンが井川洗崖にも知らされていたのだろう。文庫本から第2回目の部分を引用してみよう。
第2回目にやっと机龍之介とおぼしき人物画登場する。「……黒の着流しで、定紋は放れ駒、博多の帯を締めて朱微塵、海老鞘の刀脇差をさし、羽織はつけず、脚半草鞋もつけず、この険しい道を、素足に下駄穿でサッサッと登りつめて、今頂上の見晴らしのよいところへ来て、深い編笠をかたげて、甲州路の方を見廻した。」(『大菩薩峠』角川文庫)というのが、初登場するシーンだ。