山梨県立文学館で2003年に開催された〈中里介山「大菩薩峠」の世界〉展の図録を購入。大菩薩峠の関係資料を続けて何点も入手する事が出来た。此の図録はさすがに大菩薩峠のゆかりの地にある文学館の展覧会だけあって、かなり充実した展示だっただろう事が、この図録の充実度からうかがう事が出来る。企画展編集委員も紅野敏郎、健介親子と、元早稲田大学教授・竹盛天雄、櫻沢一郎と豪華メンバーだ。



中里介山大菩薩峠』の世界」(山梨県立文学館、2003年)



挿絵:井川洗崖、「大菩薩峠」第1回(都新聞、1913、大正2年


嬉しい事に、新聞連載の第1回が記載されていた。この挿絵の版木も記載されているのがすごい。あるところにはあるもんですね。第1回目の文章ではまだ、机竜之介は登場していないが、挿絵には机竜之介とおぼしき人物が描かれている。恐らく、第2回の人物描写のシーンが井川洗崖にも知らされていたのだろう。文庫本から第2回目の部分を引用してみよう。


第2回目にやっと机龍之介とおぼしき人物画登場する。「……黒の着流しで、定紋は放れ駒、博多の帯を締めて朱微塵、海老鞘の刀脇差をさし、羽織はつけず、脚半草鞋もつけず、この険しい道を、素足に下駄穿でサッサッと登りつめて、今頂上の見晴らしのよいところへ来て、深い編笠をかたげて、甲州路の方を見廻した。」(『大菩薩峠』角川文庫)というのが、初登場するシーンだ。