2011-07-16から1日間の記事一覧

「今のやうに凸版は生まれず、また冩眞版を使ふ樣なこともなく、全部木版だった。讀者の側で専ら密畫(みつぐあ)を喜んだので畫家もそこに意を用いて出来るだけ細かにかいた。彫刻師も亦綾になつてもつれてゐる髪の毛などを手際よく彫るのを自慢にしたが、どうして彫ることが出来たかと不思議に思はれるやうなものが今尚たくさん残されている。

新聞の場合は木版を鉛版にとつて印刷したが、綺麗に上がることを主眼とする雑誌は木版をそのまゝ印刷にしてよい紙を選んで刷りにかけた。つぶしの版などは木目がそのまゝ残ってゐるやうな挿画がいくらもあつた。しかし、當時の巨匠が心血を注いでかいた繪も…