「図書設計」72号の企画編集で、3本の編集記事、A4サイズ10ページ分を担当した。今回の「うわさの情報突撃取材」が最後の1本なので、これで無事に発刊を迎えることが出来そうです。


編集記事、最後の1本は、先月、春の台風の中、長野の善光寺近くにある「渋谷文泉閣」まで取材に行った時の話。内容は、「クータ・バインディング」という製本。



あじろ綴や断裁無線綴などのケーシングと呼ばれる簡易製本の場合は、本文紙を束ねた本体の背と表紙に用いる薄手のボール紙などの裏面とを、大量の糊で固めて接着するために、本の開きが悪くなってしまう。


そこで、本体の背と表紙の間に、何とか空洞を作れば開きがよくなるのではないか、というのがこの製本を開発するポイントになる。写真はクータの模型です。写真下はクータバインディングを採用した楽譜です。本体の背が浮き上がっているところが、技術革新のみそです。


さらに製本が崩れないためには、強力で柔軟性のあるな糊も必要になる。渋谷文泉閣ではPUR(Poly Uretane Reactive)という温度差にも強い接着剤との組み合わせで、強固で開きのよいクータ・バインディング製本を完成させることが出来たという。


PURはこれまでのホットメルトの三分の一程の量でもより強力な接着力があり、背に着ける接着剤が少ないことは従来の糊をたっぷり使う製本に比べて、かなり開きをよくする一因となる。そして、量が少なくて済むということは価格面でも安くできるということであり、正に一石二鳥の接着剤と言える。


渋谷文泉閣には最新の第2号機が到着したばかりで、1台で1日3万冊つくることが出来るそうだが、この新しい機械の追加で、倍の6万冊をつくることができるようになったという。




クータ・バインディングは、開きが良いので、本を手で抑える必要がなく、ユニバーサルデザインとしての評価も高く、料理本や楽譜、コンピュータのマニュアル本など、作業しながら読まなければならない本に採用されると、その機能を十分に発揮してくれるという。


また、地図や写真集などノド(見開きの真ん中)まで印刷が出来ることやコピーする時にも真ん中まできれいにコピーできるなど、いいことづくめの製本で、渋谷文泉閣ではクータ・バインディングを使った製本の受注がここ3年間は毎年倍増で伸びているそうです。



渋谷文泉閣・最高技術顧問でありクータバインディングの開発者である渋谷一男氏は、上記のようなマークを作ったので、帯などに印刷してもらい、見えないところでの技術革新をアピールし販売力の向上に結びつけて欲しい、と、いっていた。


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