桃太郎といえば、頭が良くて力持ちで、優しい青年(少年)の立身出世の話がよく知られているが、絵/福田庄助、文/水谷章三「ももたろう」(『日本の民話12中国地方2』、世界文化社)は、そんな期待を裏切った? 怠け者の桃太郎が描かれている。ナマケモノの感じがよくでているいい絵ですね。いや、むしろこちらのほうが正統派の伝承なのではないかと思われる。私が知っている、親たちがあるいは国家が理想するような青年の桃太郎は、教科書などからの知識で、それぞれの時代によってゆがめられてしまった桃太郎話なのかもしれない。



絵/福田庄助、文/水谷章三「ももたろう」(『日本の民話12中国地方2』、世界文化社


「○○太郎」と名がつく話は、私が知っているだけでも両手にあまるほどある。「浦島太郎」「金太郎」「三年寝太郎」「力太郎」「八幡太郎」「物草太郎」「竜の子太郎」「ふなひき太良」などなど。現代でも太郎という名は人気があるらしく、岡本太郎葉加瀬太郎、お化けのQ太郎、ハム太郎、「羞恥心」をしのぐお馬鹿キャラの「麻生太郎」は、もう既に伝説になりつつある。この怠け者の桃太郎は「三年寝太郎」「物草太郎」とよく似ている。こんなぐうたらな生活を送っていたいと思う人は、たくさんいるはず。私にとっても夢でもあるように、昔の人にとっても、何もしないで食べていけるのは、一つの夢の姿だったのかも知れませんね。



村上豊/絵、片岡輝/文『ちからたろう』(チャイルド本社、2004年)



長浜宏/絵、水谷章三/文『おやゆびたろう』(世界文化社、1999年)。これも「○○太郎」ばなしのひとつ。