『月刊絵本 特集・桃太郎絵本』(すばる書房盛光社、昭和49年)は、まさに私が追い求めようとしているテーマの特集を組んでくれていた。



『月刊絵本 特集・桃太郎絵本』(すばる書房盛光社、昭和49年)。
表紙絵は「英文日本昔話・桃太郎」(弘文社、明治18年)表紙より


目次を見ると
小池藤五郎「桃太郎の変化」
アン・へリング「どんぶらこ挿絵史」
鳥越信/小松崎進「対談・桃太郎絵本の移り変わり」
今江祥智「ああモモタラウ、または講談社の絵本」
カラー口絵「桃太郎絵本今昔」
モノクロ口絵「私の桃太郎 田島征三瀬川康男滝平二郎宇野亜喜良長新太井上洋介
と、どれも興味深い内容だ。
35年も前に発行された本で、ちょうど私がデザイン業界に就職した年でもあり、当時あこがれだった懐かしい挿絵家たちの名前でもある。


中でも、「桃太郎の変化」は読みごたえがあった。
「鬼島征伐の筋ではなく、貿易成功談で、平和的な話である」というのが、興味をひいた。
話の最後は桃太郎が打ち出の小づちを使って金持ちになるのが一般的に知られている話だが、小池は「そこで、市が栄えた、メデタシメデタシ。」で括られており、『太郎話』には「故ニ市ガ栄エタト云ゾ」とあるのは、その最も古い形である、という。

それが天明7年に出版された『狂歌才蔵集』の「……たはれたる名や、いちごさかへん」とあり、「そこで一期栄えた」(「一期」は「一生涯」の意味)になっているという。



つまり、桃太郎が貿易で大成功して、市が栄えたほどだったと云うのが、もともとの話だったのが、桃太郎が鬼ヶ島征伐(他国を侵略)で財宝を手に入れ、生涯豊かに暮らした、という話に変わってしまった、というのだ。