川へ洗濯に行ったおばあさんが「どんぶり かっしり つっこんご」(松谷みよ子)と流れてきた桃を拾う。「たべてみたら、とてもうまかったもので、こりゃあ、おじいさんにもあげようおもうて、もう一つながれてこう じいさんにあげよ ……というたところが、おおきなももがまた、どんぶり かっしり つっこんご……とながれてきたそうな。」(松谷みよ子『日本昔話 1』(講談社、昭和42年)とある。つまり、都合2個拾ったことになる。

これは、以外でした。おばあさんは拾ったその場で一つ食べてしまったんですね。右下のほうで、確かに食べている。おいしそうな桃を拾ったら普通ならその場で食べてしまいますよね。「○○昔話」「○○民話」などでは、ももが2つ流れてくるほうがポピュラーなようです。


一つしか流れてこなかったら桃太郎は生まれてこなかったんだ。で、じいさんは結局桃を食べることができたのだろうか。子供が産まれたので、桃などはどうでもよくなってしまったのかもね。



赤羽末吉/絵、松居直/文『ももたろう』(福音館書店、1965年)


もう一冊、箕田源二郎/絵、代田昇『桃太郎』(講談社、1998年)を見て見よう。ここでは「つんぷか かんぷか、つんぷか かんぷかと、ひとりでに ばっさまの あしもとに ながれついたと。」



箕田源二郎/絵、代田昇『桃太郎』(講談社、1998年)



箕田源二郎/絵、代田昇『桃太郎』(講談社、1998年)


ばっさまは もうほくほくして「はよう かえって、じっさまと たべるべぇ。」と、ほいさか ほいさか、いそいで うちへ かえったんだって。


ここでは、じいさんと一緒に食べるのを楽しみに、食べずにもって帰っている。じいさん思いのちょっとでき過ぎのいいばあさんですね。女性はこうでなければね。じいさんは「オラは愛されているんだな」なんて、実感していると思うよ。でも、こんな女性、少ないですよね、今では。