池田満寿夫のコラージュ(collage)を使った装丁

コラージュ(collage)とか「パピエ・コレ」を言葉で説明するとほんの数行で説明できてしまうもので、説明同様、技法としても簡単単純なものだ。


コラージュ(collage)とは現代絵画の技法の一つで、フランス語の「糊付け」を意味する言葉である。主に新聞、布きれなどや針金、ビーズなど、絵の具以外の物を色々と組み合わせて画面に貼り付ける事により特殊効果を生み出す事が出来る技法。(フリー百科事典『ウィキペディア[Wikipedia]』)「パピエ・コレ」とは、ピカソなどが発案した美術上の技法として知られる。そもそもpapierはフランス語で紙のことであり、colleは糊で貼るという意味だ。この技法を英語にしたのがコラージュなのだ。


「パピエ・コレ」は平面上に紙や物を貼ったり、あるいは、その上にまたペインティングする技法で、美術としての最初のものは、パブロ・ピカソの「籐編み椅子のある静物」(1912)といわれているが、ジョルジュ・ブラックもいっしょにこの技法を始めている。この技法は、キャンバス上に絵の具以外の異質なものをもちこんだところに美術史的な価値があり、現代美術がキャンバスをうち破っていくためには、このキャンバス上の異物を通過する必要があった。



池田満寿夫装丁、アンドレ・ブルトン『超現実主義とは何か』(思潮社、1969年)は、池田が『コラージュ論』を著す18年も前に装丁した書物で、池田が35歳の時の装丁作品だ。


池田は、高校卒業後の1952年に上京し版画家としてデビュー。1960年, 1962年,1964年の東京国際版画ビエンナーレ展連続受賞につづき,1966年の第33回ヴェネツィアビエンナーレ展では版画部門の国際大賞を受賞。この受賞で一躍世界のスターへの道が開かれたのであり、1969[昭和44]年に発行されたこの本の装丁は、池田が世界的に羽ばたいてからの作品で、年齢的にも最も充実していた次期に制作されている。

そんな勢いのようなものが、この装丁には感じられ、版画家池田にとっては、印刷術を使う装丁も今では版画作品の一つとされており、池田にとっても版画作品として創作に向かっていたのではないかと思わせるほどに完成度が高い見事な作品だ。本の内容が内容だけに、池田も精魂込めて創作に当たったのではないかと思われ、私は、池田の装丁本の最高傑作ではないかと思っている。



池田の装丁には、版画作品との差を感じない。常にタブロー感覚で装丁に向かい合っていた。ジェイムズ・ケイン『アドレナリンの匂う女』(新潮社、1967[昭和42]年)はそんな池田が、まさに第33回ヴェネツィアビエンナーレ展で国際大賞を受賞した翌年の装丁だけに、気分の高揚さえ感じる作品で60年代に創作された行けだの装丁群は最も充実している。