池田満寿夫と勝井三雄

『楼閣に向かって』(角川書店、昭和53年)、『窓からローマが見える』(角川書店、昭和54年)は、『エーゲ海に捧ぐ』(角川書店、昭和52年)との池田満寿夫シリーズのようにして後を追って発行された。手元にあるのは『エーゲ海…』以外は初版であり、果たしてたくさん売れたのかどうか? どれをとっても見事な装丁といえるのだが、装丁は回を追うごとに、構図も露出度も見事になっている。これら3点の装画はもちろん池田だが、装丁は勝井三雄が担当している。





勝井とはこれらの本だけではなく、「みずゑ」でも絶妙なコンビぶりをみせている。池田が単独で装丁を担当した場合でも、さすがというような装丁を残しているが、前記の3点や「みずゑ」のシリーズではなんといっても勝井のアートディレクションと知的で端正なデザインが光っている。




勝井三雄さんは、実は私の大学時代の恩師であり、オプティカル・パターンの錯覚を利用したデザインの実習などでお世話になった。当時はほかにも杉浦康平さんや木村恒久さんなど超有名な先生がたくさんいて、授業を受けるのが楽しくてたまらなかった。デッサンは彫刻家の佐藤忠良さんで写真はあの『シカゴ、シカゴ』の石元泰博さんだった。今思うとなんとぜいたくな授業だったことか。